菅原文太他「ほとんど人力」 | 残日録

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 菅原文太さんの対談集「ほとんど人力」を読んでみた。文太さんの出ている映画もあまり見ていない。晩年になって社会的な発言をされるようになってさすがと思うことが多くなった人だ。
 昨年11月の沖縄知事選での翁長候補の応援では、国のやるべきことを二つ、「国民を餓えささないこと、そして一番大事なことは戦争をしないこと」と語っていた。
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 さて対談集ですが右や左の人もあわせて17人との対談です。小学館の「本の窓」誌に連載されていたものだそうです。
 順不同で気になった方の気になった発言を拾っていきます。

◆野口勲さん(野口のタネ・野口種苗研究所代表)
 虫プロで編集者の後、家業の種苗店の三代目として、野菜の種を取って蒔けばまた野菜ができる「在来種」「固定種」を扱う。
 「野菜でも米でも、種を蒔くとそれが芽を出して、大根なら大根ができますね。その大根を全部収穫しないで何本か置いておくと、やがて花が咲いてタネが実る。そうして取れたタネを蒔くとまた同じ大根ができる・・・・というのが本来のタネです。
 ところが、昭和三十年代後半からF1(エフワン)種ーーー正式名は一代雑種という、一代かぎりの雑種のタネばかりになっちゃったんですね。それを使うと生育が速くて、きれいに揃った、見た目も立派な大根ができる。でも、そこから採れた種を蒔いてみると、姿も形も全然違ったものができてしまうんです。」
 そして、このF1種はミトコンドリアの異常でできているだと。こんなものばかり食べていると取り返しのつかないことが起こる可能性大であると警鐘を鳴らされています。前に聞いたときは、アメリカの大手種苗会社の陰謀かと思っていたのですが根は深い。

◆金子兜太さん(俳人)
 こんな句が。
 <水脈の果て炎天の墓碑を置きて去る>兜太
 軍国少年だった金子さんは先の戦争で南洋のトラック島につかれたそうです。
 兵隊の死を眼の前で見て「こんなひどいことをする戦争なんて、やるもんじゃない」と思われたそうです。
 前掲の句は「おれは墓碑を置いてこの島を去っていく、この墓碑のために帰ったら何かをやりたい」との意味だそうです。

◆樋口陽一さん(憲法学者)
 「まず、ポツダム宣言が出されたのが七月二十六日。その時点で受諾しておけば、広島と長崎の悲劇や残留孤児だけでなく、拉致被害者の問題も生まれなかった。朝鮮半島が南北に分断されること自体なかったわけですから。敗戦状態だったにもかかわらず、どうして受諾をズルズル引き延ばしたかと言うと、国体すなわち主権が誰にあるかによって分ける、国家の根本的特質の問題があったからです」
 この問題は何度読んでも腹がおさまらない。昭和天皇にはいろいろ責任を取らさなければならないが、この20日間の罪は重い。

◆相場英雄さん(作家)
 元時事通信の記者。
 「記者時代に、中央官庁の局長に聞いたのですが、ある提案を日本側がしようとしたら、交渉相手のアメリカ人から『おまえら、いつから独立国家になったんだ』と言われたというんです」
 そうまで堂々と「属国が」と言うのですね。日本はアメリカにとって51番目の州以下なのでしょう。
 確か共産党は昔から「日本は独立していない」と言っていたような。
 相場さんの著作に食品偽装や大手スーパーの問題を描いた「震える牛」がある。是非読みたい一冊。

◆大石又七さん(第五福竜丸元乗組員)
 54年3月、ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験で被爆。乗組員23人中14人が亡くなっている。
 「なかでもいちばん腹が立つのは、原発を導入した人たち。原発を導入できたのは、日本政府がアメリカに対してこう言ったからですよ。『ビキニの件は補償しなくていい、核兵器も核実験も容認します、そのかわり、原子力の技術と原子炉を早急に送ってくれ』と。
 そういう経緯で福島にも原発ができたのに、中曽根(康弘)さんをはじめ原発を導入した人たちは、あれだけの事故が起こっても頰っ被りして、顔を出さないじゃないですか。『いちばん責任があるのは誰なんだ』ってことを私は言いたい。私から見れば、彼らは裏切り者ですよ。責任を取ってほしいーーー本当にそう思います」
 事故が起こってもだらも責任を取らない。直接の加害者である東京電力に捜査の手が入ったとも聞かない。国民の命と健康を引き換えにした奴らも。


 まだまだ紹介したい免許皆伝の達人たちの話ばかりです。別の機会に改めて。