向田邦子「思い出トランプ」 | 残日録

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 入院の暇を持て余してすることはRADIKOで聴くラジオか、本を読むことぐらいです。最近読んだ向田邦子さん「思い出トランプ」は面白かった。

 巻頭の「かわうそ」に出てくる定年間近な亭主を持つ女は「 西瓜(すいか)の種子みたいに小さいが黒光りのする目が・・・」「指でつまんだような小さな鼻は、笑うと上を向いた。それでなくても離れている目は、ますます離れて、おどけてみえた。」と愛嬌はあるが美人とは言い難い。そんな女が、「ここ一番というときになると厚子は上に持ち上げて、昔の夏蜜柑に」して出かけた先は?
 女の企みは深い。

 「だらだら坂」では、社長にまで上り詰めた男が囲っている従順な女は「馴染(なじ)んでかれこれ一年になるが、何度見ても細い目だなと思う。目というよりあかぎれである。笑うとあかぎれが口をあいたようになった。」そして大木が倒れるように黙って汗ばんだ体をもたせかけてくる。」「色が白いだけが取り柄のずどんとした大柄な体である。」
 従順だった女が企てた謀叛とは綺麗になることだった。
 そんな女に対して男は「惜しいという気持半分、ほっとしたという気持半分が正直なところだった。」
 あゝどうして男はこういう女を好きになり、女が女として目覚めると白むのだろう。

 他に「はめ殺し窓」「三枚肉」「マンハッタン」など所載。