特許審査ハイウエー5 | 知財業界で仕事スル

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知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

 なるほど、TKMAXさんがおっしゃっているのは、早期審査をダブルで使おうというプランですか(一方はHighwayという名称ですが)。ようやく、言っておられる内容を理解しました。ダブル早期審査プランは、なかなか面白そうですね。

 私は、審査量の削減効果ばかりに注目してしまい、出願人の立場に立った「うまい使い道はないか」という視点を喪失してしまっていました。

 ちなみに、米国の早期審査(Accelerated Patent Examination)
http://www.uspto.gov/web/offices/com/strat21/action/aep10.htm
は、2年半ほどの試行期間が今年の3月に終わったようです。それからどうなったのか、よく私には分かりません。
 隣の米国人パテントアトーニーにも聞いてみましたが、分からんということでした。彼は、この米国の早期審査の利用についてはI strongly recommend against it. と言っております。主たる理由は、侵害裁判で、被告側から攻撃される要素を増やすから、ということのようです。
 試行期間終了から3ヶ月ほど過ぎて音沙汰なしですので、米国の早期審査プランはこれにて終了ということなのではないかと思います。おそらく、ほとんど誰も使わなかったのでは(私の推測に過ぎませんけど)。



 今回のHighwayプランの米国側の資料
http://www.uspto.gov/web/offices/pac/dapp/opla/preognotice/pph_pp.pdf
には、結構詳しく適用要件が書かれています。
 Highwayに乗ると、確かに優先的に審査されることになるようです。

 ただ、私なら怖いのは、日本での審査結果がどのように権利行使時に影響するかが分からない点です。Highwayに乗るために行った追加の手続きが、被告側からの攻撃目標になりえます。言うまでもなく、強い権利を得るためには、審査ヒストリーは短ければ短いほどよい。

 特許権さえ得られれば、権利行使できるかどうかは重要ではない、と考えるクライアントであればよいのかもしれませんね。
 権利行使を真剣に考える時代と言ってよい状態ですので、国際的にビジネスを展開している日本の大企業は利用を躊躇するように思えます。日本語文献続出の日本の審査を米国より先にやって欲しくないというのが、「普通」の考え方になると思います。Highwayに乗るために、日本での審査過程で日本語ででてくる文献や書類をことごとく英語に翻訳しなければならないのも結構大変な手間になってくると思えます。



 私の感覚では、米国で使える権利を早く欲しかったら、日本のことはキレイサッパリと忘れて、米国の審査官が理解しやすいクレームを作り、米国人アトーニーに徹底的にエディットしてもらって米国基準で「普通」の明細書を作り上げ、早期に審査官と面接を行うのが有効な手段になります。

 もちろん、まだ始まってもいないものを最初からダメと決め付けるのはいけませんので、まあ「やってみなはれ」(サントリーの佐治敬三)というところでしょうか(笑)。
 せっかく始まるのですから、是非、TKMAXさんの方で利用してみてください。そして、どんなHighwayだったかを教えていただければ大変嬉しいです。