面接ガイドラインの不思議 ――パンドラの箱が開いた(?)―― | 知財業界で仕事スル

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知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

 通行人さん、コメントをありがとうございました。



 私は、本人を代理している人が代理人資格をもっていない状態で代理していることを違法だといっております。本人ではない人が委任状を持って特許庁にやってきて面接審査を受ける状態は、その本人が代理人資格を持っていなければ違法状態でしょう。「面接」のように人間が直接かかわる業務領域では白黒がハッキリします。ただし、代理する方は弁理士法違反になりえますが、代理させる方を禁止する規定はありません。

 一方、「面接」のように人間が直接かかわる領域ではなく、明細書を書くとか意見書を書くとかといった業務領域になってくると、「舞台裏」での活動になってくるのでハッキリしないですね。
 しかし、通行人さんが言われるように、法人には頭も手も足もありませんのですから、いくら本人出願でも、法人が本当に自ら手続きをできるはずがないことになります。その理屈でいくと、法人による「本人」出願に携わり実際に代理行為をした無資格知財部員は法律違反をしていることになると思います。
 それはまずいので、まともな企業は昔からそして今でも社内代理人(あるいは社外代理人)を使っていますね。

 私の手元にパテントテック社の「弁理士(特許事務所)分析調査報告書2007」という資料があります。そこに「弁理士を利用していない出願人の公開件数ランキング」という項目があります。
 その中で06年にもっとも公開件数が多かった企業は、名前を伏しますけれども、公開件数が147件でした。10番目で29件となります。100番目なら6件。聞いたことも無いような小さな会社を存分に含む「公開5件以上」というくくりででも、上がってくる会社数は全部で143社にすぎません。
 いわゆる優良一流企業を含めてマジョリティは、少なくとも形式上は弁理士を使ってきているのです。




 仕事量に比較して資格保持者が少なすぎる問題が、日本の高度経済成長とともにもたらされました。

 「品質維持」(本当にそうなのかどうかは横において)を理由に弁理士合格者数はなかなか増やされませんでした。一方、特許出願数はうなぎのぼりに増えました。結果として生まれたのは、特許事務所での無資格者による実質的な代理行為でした。そして平行して出現したのが、社内弁理士を代理人とした優良大企業による大量出願です。後者では、一人の社内弁理士が自社の年間数千件の代理を一手に引き受けているようなことになっています。
 どちらも、代理人資格保持者数が仕事量にマッチしていない状態を前提にした現実的解決策であったわけです。

 しかし、数年前から弁理士合格者数が一挙に増やされ、特許事務所業界では、07年11月にはとうとう無資格者による面接審査をできなくしてもやっていけるところまで来ました。特許行政の完全合法化に向けての大きな進歩だと思います。




 「特許事務所の無資格者による面接はダメ」という新ルールは、特許行政におけるパンドラの箱が開いたことになっているのではないかと私は期待しています。特許事務所側・企業側双方で「違法状態黙認」があたりまえだったところに、「無資格代理人による面接は違法です」という風穴が開きました。この次はどこを「違法」とするのか?特許事務所側・企業側双方にまだまだ問題箇所はありますね。

 無資格者による実質的な代理という違法状態が完全に解消されるまでにどのくらいかかるのかわかりませんけれども、少なくともそちらへと時代は動いていることは間違いないと思います。

 なお、この時代の動きをじっと待つのではなく早めたい人(たとえば最近合格した弁理士)には、裁判所に訴えるのが有効な手段となりえると思います。その結果として社会が動き、違法状態が早期に解消されることになればすばらしいですね。