緑の中を行く | よしだよしこ here now

緑の中を行く

 

 

 

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6月2日大森風に吹かれてにて。

四国から戻り、梅雨の走りの空。この季節、いろいろな場所で新茶の頂き物。上の写真のは御殿場から届いた。急須はシバさん作をひさしぶりに。数年前のシバさんの個展で、この急須を手に取った時「お茶はちょっといいやつ使ってね」と言われた。いいやつ同士。

 

風に吹かれて では。小山トシヒロくんのCD完成記念ライブ。

「今日のうた」というタイトルどおり、小山くんの日々の暮らしを一日にまとめてしまったような選曲。彼は産業廃棄物を取り扱う会社をやっている。アルバムジャケットには実際の現場、つまり人間の暮らしから放棄されてしまったモノたちの山の中でギターを持って空を見上げている写真。

サウンドプロデュースの井上ともやす君の力もおおいに生かされていると思う。

私もコーラス、ダルシマー、そしてライナーノーツに参加。

今日の記念ライブでは若手ミュージシャンの活きの良い音と、ゲストの生田敬太郎さんの円熟のハープと北帰行も聴けました。そして私も「ヨイシラセ」をバンドで唄うことができてありがたいこと。このアルバムの総合プロデューサーは金谷あつし、腕の怪我も少し回復しているらしい。

 

6月3日豊島市民センター多目的ホールにて。

宍戸大裕さん監督の新しい映画が出来上がり、完成上映会に駆けつけました。

題名は「杳かなる」~はるかなる~と読みます。

映画はALSと生きる人たちの日々のドキュメンタリーです。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病を発症した女性、佐藤裕美さん。

そしてもう一人は岡部宏生さん。40代の働き盛りにALSを発症し49歳で気管切開、人工呼吸器との人生が始まって20年近く、瞬きでしか意思の疎通ができない岡部さんは、透明アクリル板の文字盤を、介助者との「まなざし」と自分の「まばたき」のやりとりで文章にする。そのやり取りは今までに聴いたことのない新しく美しい音楽のようにも聴こえました。

 

ALSは発症後、平均3~5年で筋肉が衰え自力での呼吸ができなくなるという。患者の7割が人工呼吸器をつける選択をせずに亡くなっていくという。佐藤さんはまだ人工呼吸器は装着をしていませんが、ゆくゆくはその選択をする日がやってきます。

 

人工呼吸器とともに24時間介護で自立生活をしている人のことを知ったのも、宍戸さんの映画「風は生きよという」でした。主人公の海老原宏美さんの明るい生き方にビックリしました。風は生きよという~の風とは、人工呼吸器の音にもつながると、その映画の解説にはありました。その音はいのちそのものでもあった。

海老原さんは21年の冬に亡くなりましたが、その最中にもこの新しい映画「杳かなる」は撮影されていたことになります。

とても長い時間をかけて制作されたのには、監督とカメラマンのまなざし、小さな息遣いも逃さない繊細さ、どこまでもゆっくりと一緒に歩こうとする豊潤な心が一生懸命働いていたからだと、想像します。

 

これは3年前にNHKハートネットに掲載されていた、今回の主人公の一人佐藤裕美さんの言葉です。

「あなたが生きるとすごく負担がかかる人がいますよとか、家族は大変ですよとか、医療の資源、社会保障の資源とか、いろんなものをこういう人はすごく使うんだということを言いたがったりする人だとか。私たちが生きることに対しては希望的な議論がない。尊厳ある死を語るんだったら、尊厳ある生を語るべきであって、同じように語らなければ違う」(佐藤さん)NHKハートネットより。

佐藤さんは、岡部さんと出会い、自分の生きる意味を揺れ動く心のままに悩み考えていく。それが、「難病当事者交流会IKEBUKURO難病カフェ」の立ち上げという形にもなりました。

 

この映画は、書ききれないたくさんの想いを、私の心の中に呼び覚ましてくれました。

上映が終わって、劇場挨拶の席上、岡部宏生さんは「この映画は少なくとも3回は観てください。」と言いました。

人工呼吸器と、家族や介助者と共に全身全霊で生きる人たちから教えてもらうのは、突き詰めていけば自分自身のことです。生きることです。上映会が始まったら私も何回も見たいと思います。

2011年から私が唄い続けている曲の一つに「足もと照らせば」という曲があります。誰かに運んだつもりの灯りは気づけば自分の足元を照らしてくれています。

「あなたを照らす小さな灯り、私の小さな道しるべになる」

                          足もと照らせば

 

 

 

 

6月8日warpにて。

ナベちゃんこと渡辺義行さんと出会ったのは、16~7年前になるでしょうか。各地の憲法フォークジャンボリーで。

筋ジストロフィーという病気のために車椅子の生活ですが、実に行動的で、ヘルパーさんとともに遠くまで旅をして、時には「歌」も唄います。冬の北陸で一緒にカニを食べた忘れられない想い出

「銀色のランナー」という代表曲は、メロディーは坂庭省吾さん、歌詞はナベちゃんと笠木透さん。

ナベちゃんがコロナ禍で出歩けなくなり、そのうえ腰の骨を折る大けがをして、遠出は無理になってしまったことを気にしていた石川県の川崎さん親子やその仲間たち、どこかナベちゃんの近くでライブやれたらなあ。

八王子のwarpに相談して実現することができました。この場所で私が唄うときにはナベちゃんは必ず聴きに来てくれた。

車いすで上がれるように、簡易スロープまで用意してくれた

warapの小林さんが今回も奮闘してくれました。

川崎さん夫妻と草汰くん、かんちゃん、たけちゃん、恭子さん、そして石川、長野、岐阜、茨城、遠くからたくさん応援があり、warpは超満員。

最後はみんなで銀色のランナーを唄いました。

 

「ぼくは君と一緒に走る 
  銀色のランナー 
  キンジスという名のトロフィーを 
  背負って走るのさ どこまでも 
  どこまで行けるのか 分らないけれど 
  ぼくは君と 一緒に走る 
  銀色のランナー」

 

私は車いすには乗っていないけれど、歌詞にあるように

どこまで行けるのかわからないけれど、、、という条件はおんなじです。

一五一会の名プレーヤーであり、素敵なシンガソングライターの川崎草汰くんも生まれながらに困難を持っている青年です。私がナベちゃんや草汰くんと仲良くなれたのは、歌という道具とそれを使って繋がろうとしてきた人たちのおかげです。

またね、ナベちゃん!またね草汰くん!

warpの皆さん、ありがとうございました。

 

 

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     ヤドリギノニカイの1階にあったミシン。我が家のも同じだった。

 

6月15日愛媛伊予市 町屋にて。

雨降り予報でしたが、空は奇跡的に曇天で止まっています。

朝4時に起きて、というよりもあまり眠らないで飛行機に乗って松山に。空港には昨年同様に迎えに来てくれた友だち。ありがとう。

ふるさと交流市場町家は20年。町家ライブも20年目、

屋外の無料ライブだが、ここでしか会えない人もある。そして新しい出会いも必ずある。

「夜は松山で唄います。」と言って終わったら、「どこでやるの?」と見知らぬ女性。

夜唄う場所の地図を書いてもらい渡したけれど、地図を受け取り、手ぶらでサンダル履きのその人は何も言わずに消えていったのです。

夜は、松山道後にある「ヤドリギノニカイ」という素敵な場所。以前病院だった建物をリノベーションして、小さな部屋は生音のコンサートだけを少人数相手に行っている。

一年ぶりに会う流水龍也さんとアコーディオンのリサさん。

私たちは、この部屋の響きに嬉しくなって、気持ちの良すぎるライブが始まりました。

すると、ビックリ!昼の町家でのあの手ぶらサンダル履きの女性が、息せき切って部屋の階段を駆け上がってきました。手には地図を握りしめて。ふと、この人は妖精ではないだろうか?時々こういう風にすれちがう人がある。その時にふぅっと漂う空気を、今日、そのひと感じたから。二度と会えないかもしれない妖精さん。

夜の道後から、大洲まで、国見さんの車で。1時間半、山道を行くと、初夏の愛媛に来たなあと、今年も感じ入るのです。

 

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6月16日大洲家族旅行村キャンプ場にて。

見事に晴れた日曜日です。朝から音楽と、食べ物と、みどりを楽しみます。

近隣の農家のビワがビニール袋いっぱいで100円で売られていました。カメムシの被害で売り物にならないという。

無農薬のとても美味しいビワ。。。

農業や養鶏などやっている若い人たちにも出会いました。

今年やっと言葉を交わすようになったのは、はるちんという女性で、農業をしながら歌も唄っています。暮らしの歌が素敵でした。

佐田岬の人たちにも久々に会えました、ヤマウチコウタくんの歌を聴きながら野外出張の整体を受けました。

内輪の打ち上げは国見さんのパワフルな料理です。

いちにち陽に当たって過ごす贅沢をありがとうございます。

また来年!

 

翌朝は、再び松山から友達が迎えに来てくれて海沿いをドライブしながら空港まで。幼いときから足が不自由の彼女は外出する時は車いすですが、車の運転が上手く、私はいつもお世話になるばかりです。

昨年悲しい出来事のあったけれど、これから近い将来にやりたいことなど、道々はなしながら。ありがとう、また近い日に。

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6月21日赤羽青猫書房にて。

夏至の夕べに宮尾節子さんの詩の会があるといって、山梨の詩人の髙部久理子さんが誘ってくれました。

カレンダーで「ああ、今日は夏至なんだ」ということはよくあるけれど、

「こんどの夏至の日に、なになにしよう」っていう機会はそんなにないでしょう?誘ってもらって二つ返事でした。

久理子ちゃんと二人で待ち合わせなんて初めてだし、青猫書房も初めて、でも行く前からそこが良い場所であることは感じていて。。そしてその本屋は想像以上に素敵でした。

始まる前に絵本の物色。いろいろ欲しくなるけれど、私は一冊だけ、7月生まれの孫の一人に。でも、送る前に私が読むんだ。

宮尾のせっちゃんは、小さいころの言葉との出会いから話をしてくれました。木登りが得意な子だったせっちゃん、詩作は木登りに似ているという。次の枝を掴みに行く、そうすればまた新しい景色を見ることができる。言葉も、掴んで!

残った時間で、まあるく輪になって座っている参加者全員で、詩を繋いでいった。音楽ならアドリブのセッションだ。

私は楽器のアドリブは得意でないけれど、なんだか詩は専門ではないという気軽さもあって、、そしてあの木登りの話の後だったから、そうか、言葉は無理にキリキリと絞り出すものでないのだなあ。。。と。。。「これっ!って掴むのね」

「一篇の詩は。。。」というフレーズから始まる輪作は夏至の夜にぴったりな解放感がありました。

この日、久理ちゃんと赤羽駅で待ち合わせして店に向かう途中、私がドラッグストアでハンドクリームを買いたいと呟くと、久理ちゃんがお土産に用意してくれていたのが手製の良い香りのハンドクリームだった!という!

夏至の夕のシンクロニシティではじまった時間、ありがとう!

 

 

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6月22日萩、「スナックどんまい」にて。

ナマリノゾミさんに出会ったのは、2012年12月、岩手県大槌町。カリタスボランティアベースでナマリちゃんはボランティアとして仮設住宅などをまわっていました。それから大槌の変化とともに10年間働いて、実家のある山口萩市に戻り、昨年秋に「スナックどんまい」を始めたのです。私も行きたかったし、ナマリちゃんも来てほしいと思っていたというタイミング、嬉しい再会と、スナックどんまいライブ実現でした。

ひっそりと人影まばらな商店街のはずれ、しかし、スナックどんまいには老若男女がたくさん集まりました。カウンターの中のナマリちゃんの動きや応対を観ながら、ここは大槌の仮設のスナック?ではないかと、錯覚しそうでした。あの頃もそうだった、皆、誰かと話したくって、過ごしたくって、夜な夜な集まって、遅くまで語り合っていた。

これをふるさとでもやりたかったんだね。。。

古い町だけれど、ちらほらと移住してくる若者もいるという。今夜の宿も、そんなやる気のある世代のつくったゲストハウスです。

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6月23日萩 廻69 にて。

古い町並み、昔の家屋を素敵にリノベーションして使っている一軒で贅沢なライブです。

ここは、元金物問屋の店兼住居だったという。

さて、ここでもビックリ!

音響さんが来ているのではやくいきましょう、と、ナマリちゃんに連れられて現場に行ってみると、車の中からにこにこ笑っている人。どこかで見たことがあるようだけれど、誰?

30秒くらいたって「あ!岡本くん!え~っ?」

いやあ、わからなかった、日に焼けて精悍な顔つきになって別人だよ!

そう、大阪のチャクラで音響をやってくれて、私のCDの録音も何度もやってくれた岡本修道くんだったのです。

 

 

 

大阪時代は青白い顔でひょろっとしていて、笑顔もあまり見せなかったのに、、実家のある山口に帰り、岩国の工場で昼夜働いて、山や畑にでたり、川下りしたり、そしてつい数日前に音響設備一式を手に入れたばかりだったというのです。

「3/4あたり」という私のCDが彼の初仕事でしたが、今回も山口での音響の初仕事は私のライブです。これから大きく広がっていけたらよいです。

すっかり安心をして、良い音で唄えるシアワセをかみしめながら、萩という町で歌を聴いてもらえる機会をつくってくれたナマリちゃんに感謝です。

今日のライブでも客席は老若男女、

そしてWe Shall Overecome を3番まで唄える人が沢山いました。

 

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         梅雨空の萩にて指月山 日本海

 

6月27日東中野じみへん にて。

およそ3か月に一度くらいのペースで唄うのだけれど、その間にいろいろな場所に出かけて、この店にはいつも、ただいまと帰ってきてうたう感覚。

今夜はゲストに、うたたねPlumさん。彼女の大切な活動である映画「カンタ!ティモール」の上映会。

少しでも多くの人に映画のことを通して、平和について、生き方について考える機会が作れたら。。。

今夜も語りで綴る「うたえ!カンタ!ティモール」から。

真っすぐな思いが、彼女の姿に溢れていて輝いていました。だから聴いている人たちにも届いていると感じました。

6月なので「夕張めろん」を。作者の皆川さんの三回忌に先日参加した同じく夕張出身ジャッキーさんに唄ってもらい、らんぶりんまっくさんにはワイゼンボーン。最後はジュランのハープもありがとう。

私は初めての歌もいくつかあって、それだけでも新鮮。それなのに、Plumさんが沢山声をかけてくださり、びっくりするほど満員のじみへん、皆さんありがとうございます。

 

    

     《夏至の夕べにつないだ詩》

 

一篇の詩は。。。と、ノートに書き始めると

  次の言葉が私を待っていてくれるような気がする

 

一篇の詩は。。。次の言葉に気づかずに

           私が通りすぎていかないように

 

一篇の詩は。。。私に気づくために 

           あなたに話しかけるために

 

一篇の詩は。。。海よりも空よりも大きくて広い

          私とあなたくらい 深くて豊か

 

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