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富士急ハイランドに2012年7月28日(土)にオープンしたアトラクション「絶望要塞」について、内容をまとめました。このアトラクションは常設の脱出ミッションクリア型アトラクションで、成功率は1/100,000未満(0.001%)と公表されており、その名の通り"絶望的"な難易度設定。運営する富士急行の堀口社長(当時)もインタビューにて「しばらくは成功者を出したくない」と発言しており、富士急ハイランドからお客様への挑戦とも言えるアトラクションでした。
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アトラクション製作はかつて同園あったミッションクリア型アトラクション「武田信玄埋蔵金伝説」や「戦慄迷宮」を手掛けたPLANS

 

2012年7月のオープンより2度のリニューアルを経て、2015年5月まで初代「絶望要塞」が運営。その後2015年7月~2018年5月まで内容を一新した「絶望要塞2」にリニューアル。そして2018年7月より再度「絶望要塞3」にリニューアルし、2023年1月まで営業しました。

 

○「絶望要塞(2012年7月~2015年5月)」

初代の絶望要塞は、5つあるステージでそれぞれ制限時間内にミッションをこなし、クリアできなければそこでリタイアという形式。そして下記のよう明確なバックストーリーやアトラクション中も物語性の演出がありました。
舞台は通称「絶望要塞」と呼ばれる監獄(刑務所?)。その名の通り厳重なセキュリティによる脱獄の難しさ、そして囚人に対し非人道的な扱いをしている場所。不幸にもここに囚われの身となった(理由は不明)参加者は、先輩囚人の助けを借りながら要塞から脱出を目指します。

上の写真のように建物は金網に囲まれた監獄。スタッフの衣装も迷彩服を基調とした看守風の格好であり、中にはサングラスを掛けていたり銃(マシンガン)を持っているスタッフもいます(スタッフは看守であるものの、脱出の手助けをしてくれる内通者という設定らしい)。

 

下の画像の建物内へ入る所までは、外にジグザグと列を作って待つことに。建物内から受付まで大体30分くらいなのでそれ以上の待ち時間の場合は大部分を屋外で待つことになります。建物の中に入るとこれまたジグザグと、金網で仕切られた通路を進みます。イメージ 3

 

通路の先にたどり着くと、写真の赤枠の先にて写真撮影を行います。ここでお客さんは囚人として、ネームプレートを持ち身長計の前で写真を撮ります。
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写真撮影の後に写真引換券となる「囚人カード」※(画像上)、それと画像下のプレートが渡されます。ゲームがスタートしたらこのプレートに書かれた牢屋に行くことになります。
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※囚人カードの裏には「入浴は週1回」、「所長には絶対服従」、「食事は残さず食べること(つまり残したくなるほど、相当不味い食事と推測される)」と書かれていて、非人道的な運営を感じられるものになっています。

 

写真はアトラクション終了後、出口に併設されている売店で購入することができます。
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その先は所長室であり、そこに案内された時からアトラクションがスタートします。

「ゲームのルール及び所長の挨拶」(プレショー)

所長室内にて、モニターにてルール説明及びプレショーが始まります。映像には監獄内にて囚人が収監されている様子や取り調べの風景が映し出され、
 
その後「監視室」にいる看守より全体的な注意事項の説明があり、続いて「所長」が登場し、挨拶があります。この「所長」、下記の様子からも分かるように典型的な悪役キャラです。
「皆さん、ようこそ絶望要塞へ。恐ろしい噂を聞いているようだが、大丈夫。ここはそんなに悪いところじゃないよ。ルールさえ、守っていればね。ここにはいろいろとルールがある。が、"脱走"だけは、止めた方がいい。絶対にね!」
 
ここで脱走に失敗し、捕まった囚人が所長の前に引き出される。
「失敗すれば・・・」
所長、懐から拳銃を出し、囚人を躊躇うことなく射殺!
「こうなるのです。分かったかな?安心したまえ、私に従ってさえいれば、命だけは保障しよう。」
要塞内には、所長の笑い声が響き渡ります。

 

上記プレショーの後、上記のプレートに書かれた牢屋に収監されます。牢屋の目の前のモニターに、再び所長が登場。

「さぁ、ここが君たちの新しい家だよ。トラブルが起きないよう、我々が24時間いつでも監視してあげるからね。」

ここで先輩囚人が、モニターの映像をジャック。

「騙されちゃだめだ!そいつ(所長)は気まぐれで、何人も囚人を殺している。俺はこれから脱出する、お前達も来るんだ。」

所長は「ふざけるな!誰も脱出なんかさせるものか。」と叫び、監視室に囚人の捕獲を命じる。

 
 
・第1ステージ

第1ステージの最初のミッションは、牢屋内にある"道具"を使ってカギを入手し、牢屋から脱出すること。具体的には「棒」を使って鍵束を手繰り寄せ、牢屋の鍵を開けます。簡単にクリアでき練習的な意味の強いミッションですが、映画のようなシチュエーションに自然とテンションが上がります。

 

牢屋から出ると、シャワールームや面会室、ロッカールームなど監獄らしいの施設が広がり、また隠し扉や屈まないと進めない所、狭い通路などがあるエリアに出て、ゲームとしてはここからが本番。制限時間は全部で10分間です。

①掲示板を探し、文章に赤くマークされた「3つの物」を探す

②その物にはそれぞれ「指示」があり、それを解くと「3つの数字」が分かる

③「棚で隠された扉」(要塞内にある地図を見れば大体の見当がつく)から「秘密の倉庫」へ行き、入口のロックキーに見つけてきた3つの数字を"大きい順に"入力(例:2と5と10を見つけたなら、「1052」となる)し、開錠して中に入れれば第1ステージクリア。

問題のパターンは3種類程あり、日によって異なるほか同じ日でも午前と午後で問題が切り替わることもありました。具体的な問題は以下の通り。

 

○問題1 正解「2895」
・「4月の第3月曜日」→要塞内のカレンダーを見れば4月第3月曜日が何日か分かる(※ただし、要塞内に4月のカレンダーはないので前月3月の端にある翌月分を見る必要がある。これに挑戦者自身が気付かなくてはならない)→28(日)
・「○時45分」→45分を指している時計を探せば、何時か分かる(※時計がたくさんある部屋があるがそこに正解のはない。面会室にぽつんと1つあるのが正解)→9(時)
・「% ぇ / ○ え」→これはパソコンのキーボードのキーの1つを表している→5

 

○問題2 正解「1282」
・「ダーツ青の矢」→要塞の上の方にダーツの的があり、それに青い矢が刺さっているところの得点→12
・「5枚のトランプの図柄で、真中が?」→要塞内の机の引き出しを開けると5枚のトランプがあり、真中のカードの数字→8
・「ゲーム盤」→要塞内シャワールームにオセロ盤があり、黒石が「2」の形に並んでいる→2

 

あとはちょっと覚えていませんがもう1パターンあって、「キムの面会回数」→どこかにある面会予定表を探すとかもありました。只でさえ数字を見つける(推理する)のが分かりにくく難しいのに、上記のようなひっかけがあって一筋縄では見つけられなかったのがこのアトラクションの憎いところです。

 

当時のホームページによるとオープンから約3週間で挑戦者は延2万人以上、 第1ステージ成功者は28組(0.4%)と、さすがに難しすぎたからか、8月中旬より問題の横に具体的に何を探すか指示が書いてあり、難易度が下がりました(それでも難しかったですが)。

 

※2012年12月に「第1ステージ」のみリニューアルが行われ、磁気カードを使って隠されたカードリーダーを探すミッションに変更されました。

 

・第2ステージ

第2ステージは「迷路」です。制限時間以内にゴールまでたどり着ければ成功ですが、ただ進むだけでなく様々な「トリック」を解く必要がありました。制限時間は前半・後半合わせて8分(ただし前半を6分以内に抜けられないと失格)でしたが2013年1月頃から6分(前半は4分以内)に短縮。

 

スタート後すぐ2階に上がり、たくさんの扉がある通路を進む純粋な迷路が「前半」。扉は鍵がかかって開かないもの、開けてもその先が壁であるものなど、そして2ヶ所「特殊な扉」があり、それを見つける(開け方を解く)のが必須でした。また、行き止まりに行くと鍵がかかって閉じ込められ、実質ゲームオーバーになってしまうトラップ、通称"鼠取りもあります。

 

「特殊な扉」の1つは「ドアノブがなく壁に隠れている(押すと開く)小さな扉」。これは見つけやすかったですが、問題は2つ目。一見ドアノブを回しても開かなくてダミーの扉、かと思いきや「ドアノブの反対側を押すと開く扉」があり、これがなかなか解きにくかった。しかも、この扉は開かないからと近くの別の扉へ進んでしまうと、上記の「鼠取り」に行ってしまうという鬼設計。

 

途中の階段から1階に下りると「後半」。後半では迷路の壁一面にたくさんの「ドアノブ」があります。そのドアノブをいくつかは外れて持って行けるようになっていて、ゴールにて持ってきたドアノブが「正解だったら」クリアです。正解のドアノブの見分け方は難しく、多くの挑戦者を苦しめました。

 

ドアノブ云々よりもまずゴールまで辿りつかなければなりませんが、後半もゴールに辿りつくまでに2つのトリックを解く必要があります。1つは「FIRE ESCAPE」と書かれたボックスを開けて先に進む(2つありますが開いて進めるのは1つだけ)、2つ目は「鏡の部屋にて、鏡の1つを押して開ける」、その先がすぐゴールでした。
 
多くの方が最後の最後まで分からなかった「ドアノブの見分け方」ですが、これは正攻法では単純にドアノブの形(傷や凹み)を覚えて判別するしかなかったようです。ただ、ちょっとグレーな裏技として実は「正解のドアノブにはマグネットが仕込まれていて、それに反応してゴールの扉が開く」仕組みだったため、「磁石」もしくは「磁石にくっつく物」(持ち込みやすいからか金属製クリップが人気だったみたい)を持っていれば簡単に見分けられました。

 

 

・第3ステージ

第3ステージは「物探し」、1階と2階に分かれる広いステージ内にはたくさんの「物」(コップや書類も含め、とにかく要塞内に置いてあるの全て)にはバーコードが付いていて、それを最初に渡される「ブラックライト」を当てると反応する蛍光塗料が塗られている「当たり」を探し、2階のどこかにある「ゴール」に行きます(目立つためすぐ見つかります)。制限時間は8分。

 

ステージ開始前に映像を見ますが、そこには「脱走者はまだ見つからないのか!」と苛立つ所長の指示により、要塞内の各所をシャッターで閉鎖しますが、1人の女性看守が乱入しロックを解除。「所長のやり方にはもうついていけない、だから脱走の手助けをする」と言い、脱走者(プレイヤー)に「最後まで諦めないで」とエールを。所長は「この裏切り者!!」とさらに苛立って髪を掻き毟ります。

 

この第3ステージはまさしく「難関」で、スタッフからも「見つけ出す事が非常に困難なミッションになっています」と説明がある他、

・その日8回挑戦した方も見つけられなかった。
・16人の大グループによる大捜索でも駄目だった(備品の破壊行為もあったようで、後に問題視された)。
・何百回やっている熟練者も、成功率は3割以下。

など、非情とも言える難易度でした。

 

「当たり」の配置としてはある程度法則があり、

・当たりは3つ、1階と2階それぞれ1つは必ず配置されている。
・子供(身長120cm程度?)の目線よりは下にある
・3つある当たりうち1つ目は「見つけることがほぼ不可能な位置」(通称「ツチノコ」と呼ばれた)、2つ目は「1つ目程ではないけど、難しい位置」、そして3つ目は「挑戦者人数等、マニュアルに沿って配置される位置」(前述の映像を見せるのは、3つ目の位置を変えるためだと思われます)。

当たりの位置の例としては「マグネットに付けられていて、机やロッカーの下や裏側にくっついている」、「ネジを回して取り除くとバーコードが丸まって入れられている」、「パソコンを分解すると内部の部品にある」など。このようかなり難解というか常人では手に追えない隠し方でした。絶望要塞全体的に言えることですが、このステージも当初は「普通に」隠されていた物を見つければ良かった内容が、挑戦者(成功者)が増えていくに連れてどんどん難しくなり、上記のような鬼畜な内容になったとのことです。

 

「当たり」を見つけた先は、「レーザートラップ」の部屋で、30秒以内に突破できれば成功。レーザーはそんなに難しい配置ではなかったみたいですが、「ここで失敗したらこれまでの苦労が水の泡」というプレッシャーと戦わなければならなかった模様。

 

※2013年12月、第2ステージと第3ステージがリニューアルされ別のミッションになりました。

 

 

・第4ステージ

・まずは2階部分にて、鉄格子で通路が作られ、薄暗く四隅が鏡になっている迷路を抜け1階へ降りる階段を目指します。フラッシュの明滅まである特殊な空間で進み辛いですが、規模は小さくて迷路は単純、仕掛けを解いたりトラップがあるわけではない(と思う)ので、抜けるのは簡単です。

 

・階段から1階に降りたら、これまた迷路のように部屋がいくつも組み合わさっている要塞内から「3つの爆弾」を見つけます。爆弾は「分電盤の中」(下記の画像)、「机の引き出し」、「壁の隠し扉を開けて進める通路の奥」に隠されていました。爆弾には4つコードがついており、その内1つが当たりです。

 

それを3つ解除すると出口の扉が開き成功となります。1/4の確率が3回=1/64(約1.5%)という極めて低い確率となります。

※画像は2013年12月~リニューアルで登場した説明用モニターより

 

当初は「その日のうちでは各爆弾の正解コードは固定(変わらない)」ので、何回も第4ステージに行くことが成功への道でしたが、ある時から毎回変化するようになったため、格段に難しくなったとのこと。

 

 

・第5ステージ

ここまで到達できたのは20組程度ではないかと言われるほど、まさしく未知なるステージで、ネット上とかにもあまり情報はありません(自分も到達できませんでした)。2013年12月~リニューアルで登場した説明用モニターの映像には、最終ステージの舞台とされる旧・ミニ富士山(かつてのアトラクション「武田信玄埋蔵金伝説」や「戦国BASARA」)の入口らしき場所がぼやけて映っています。
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2018年頃には、この「絶望要塞」を製作した(株)ザ・プランズのホームページに第5ステージの写真が掲載されていました。

 

聞いた話では、ミッションは全部で5つもあったようでその内1つは上記のリンク先にあるよう「サーチライト」を避けて進む(2回当たると失格)、あとはステージ内に箱と鍵が散らばっているので鍵を見つけて箱を開けていく、その中の1つが出口の扉の鍵で、出口の扉を探して開けて外に出れればゴール、だったらしいです。

 

 

○初代「絶望要塞」を振り返る

2012年7月のオープン以来、私もですが多くの方がどっぷりつかったこのアトラクション。mixiのコミュニティや某ホームページの掲示板、現地の挑戦者同士のやり取りなどで情報交換を行い、みんな熱心に成功を目指していました。まさに「謎が謎を呼び、挑戦意欲を引き立たせる」アトラクションであったと思います。

 

・こんな激ムズアトラクションですが、意外にもオープンから2ヶ月も経っていない9月14日に完全脱出成功者が出ています。後に成功者はグラビアアイドルの「西崎莉麻」(姉と従姉妹の3人)だった事が明らかに。

 

・西崎氏が後に「このアトラクションの宣伝大師」に任命されリニューアルイベントやCM等にも出演する、挑戦回数が「14回」と少ない(この時点で何十回、何百回と挑戦してもクリアできない方がたくさんいた)ことから、「宣伝目的のやらせでは」と言われたが、実際は「予想外にクリアされてしまった」ということらしい。こちらのサイトにある西崎氏のコメントによると「(クリアされて)その日富士急ハイランドの事務所はパニックだったと後で聞いた」とあります。実際、この完全脱出成功者が出てからは各ステージの制限時間減少や内容をもっと複雑にするなど、極端に難しくなっていった。

 

・2013年3月14日に2組目の脱出成功者が出ました。こちらの方(グループ)は上記のコミュニティサイト等にもいらっしゃた方で、週2回300回以上もの挑戦を重ねてきたそうです。

ご本人曰く、成功するまで絶望要塞に(富士急ハイランドに)通った結果、普通自動車が買える程の費用はかかったとのこと。

・2013年12月にリニューアルされた後のバージョンでは2年間ついに成功者は現れず、2015年5月「絶望要塞2」へのリニューアルのため初代絶望要塞は終了しました。