きよの漫画考察日記863 美味しんぼ第32巻 | きよの漫画考察日記

きよの漫画考察日記

我が家の本棚のマンガを1冊づつ考察中。
ちなみに3,000冊近くあります...

photo:01

表紙は牛舌の味噌煮込み。ダイコンしか見えませんが(笑)

お月様

第1話。コンペイトウ。まぁ高度成長期以降に産まれた俺が言うのもなんやけども、今の子供にコンペイトウなんて与えたら鼻で笑われそうで怖いよな…

さてさて山岡さんとの結婚披露宴になんとか海原雄山を呼びたい栗田さん。思いついた策は「近城・二木夫妻との合同結婚式にしてその場を究極vs至高の対決にする」とゆーもの。
…合同結婚式?お前は統一教会員か(笑)新郎新婦がたくさんおるって、そんなバカなことはないよ…

そんな訳で海原雄山を出席させるため、山岡さんのお母さんの命日にお墓参りへ訪れた栗田さん。
栗田さん「山岡さんは今日がお母様の御命日だってこと忘れてます。それに霊魂なんて信じないし、逆にもしあるなら霊魂はお墓の中なんかにいるわけがないからお墓参りなんて無意味だ、と…」
海原雄山
「聞いたふうなことを…墓参にはそんなこと以外の意味もある。」
photo:02

さらに命日なんてくだらないという山岡さんに対しても栗田さんは…
photo:10

お墓参りは死者のためではなく自分のためか…これはね、言われてみるとたしかにその通りです。俺も霊魂なんてものは無いと思っとるが、それでも墓参りに行くとお墓の前にぺったり座り込んで1時間くらいじーちゃんばーちゃんとくっちゃべっとる。別に霊魂と会話しとるわけではなく、はたから見ればひとり言を呟いとる危ない男に見えるやろうが、お墓の前でじーちゃんばーちゃんと会話したつもりになることで自分の中に残されとるじーちゃんばーちゃんへの愛情を再確認しておるのかもな…

さて結婚披露宴に参加してもらいたいと頼む栗田さんに対して雄山は二度と顔を見せるなと一蹴。しかしここから栗田ゆう子はネバります。
栗田さん「今のおことば、奥様がお聞きになったらどうお思いになるでしょう?」
雄山「なに?」
栗田さん「自分の息子の結婚式に立ち会おうとしない父親に、なんとか立ち会ってもらえるように努力している女を愚劣の一言で切りすてるのですか?本当の理由は誰にもわからないけれど、海原さんと山岡さんが反目しあっているのは事実です。その反目ゆえに山岡さんの結婚を無視する、とあなたは奥様の墓前に今日報告なさったのですか?それに対して奥様は何とお答えになりましたか?」

小娘にこんな事言われちゃ当然雄山は吠えます!
雄山
「そのために今日ここで私を待ち伏せしたのか!私の妻の名を自分の都合のいいように使うために!」
photo:03

雄山にここまで言い返せる女は存在しません。いるとすれば…ヒラリー・クリントンくらいか(笑)

そして雄山からの課題を見事クリアーした栗田さん。その課題の裏にあった雄山の妻への想いをも理解した栗田さんに対し…
photo:07

海原雄山、その名の通り山のごとく険しい人物やけども、その名の通り海のごとく懐も深い。初登場時の横柄な雄山はどっかいっちゃいました。

さてさて結婚前夜の栗田家。最後に栗田さんのお母さんが娘へ贈ったのは…ぬかみそ!
お母さん
「私が結婚したときに実家から持ってきたぬか床を、絶やさずに育ててきたぬかみそよ。あなたの家でも元気に育って欲しいわ。」
photo:08

嫁ぐ娘にぬか床を贈る母、そのありがたみを理解できる娘…素晴らしいね、栗田家は!

そしてついに結婚式当日、山岡さんと栗田さんは役所へ。
photo:09

婚姻届の保証人、よく使われてる言葉ですが、正確には保証人ではなく「証人」ですな。俺もこれまでに二組の夫婦の婚姻届に証人として名前を記入させていただきましたが、これほど意味のない物もなかなか無い。婚姻届が偽造だった場合に有印公文書偽造の幇助として疑われるくらいの意味しかないでしょ。何の法的意味も無いくせに記入する時にはめっちゃ緊張すんねんぞ、あれは…

そしてついに始まった山岡・栗田の結婚披露宴、海原雄山が出す至高の料理1品目は!
photo:04

鯨の尾の身の刺身!
鯨は子供の頃よく食べてたけども、生で食べた記憶はないねぇ。海原雄山が「刺身の中で最も美味い」と断言するこの刺身、もう食べることはできねえのかなぁ…


そしてついに至高の中の至高、至高のメニューの真髄が登場!
photo:06


ご飯、味噌汁、豆腐、漬物、鰯、そして大根の煮物という超お惣菜!


さぁ雄山の見事な解説が始まります。

photo:01

雄山はその昔貧乏でした。芸術家としても認められず、打ちひしがれてた時に奥さんが作ってくれたのがこの料理。高価な材料は一切ありませんが、団社長がズバリ核心をつきます。
photo:02

「最も平凡なものの中に非凡の極みが存在する」これは心に響く言葉やねぇ…

雄山「私は妻のその料理を食べて目からウロコが落ちる思いがした。私もおおかたの食通と呼ばれる人間と同様、それまでフカヒレやらツバメの巣やらフォアグラ、キャビア、松坂牛の霜降り牛肉など、そんな高価で貴重な味をあさるのが美味の追求だと思っていた…」
photo:03

雄山「貧乏であっても知恵の使いようでこのような至高の口福が味わえる。それなら貧乏を怖がる必要がどこにあるか?一切の妥協をせずに貧乏をむしろ楽しみ自らの道を追求するだけではないか?そう悟ったのだ!」
雄山「幸運にも私の作品は世に受け入れられ経済的にも自由がきくようになり、美食倶楽部を設立することもできた。しかしその間にもその後も、時に仕事の面で妥協をしたり、気に入らぬ仕事を引き受けなければならないハメに陥ったことが何度もあった。そのたびごとに、苦しむ私に妻は言った。」
photo:04

うーん、いい奥さんですしょぼんしょぼんこんな女性、平成の今の世には存在するんでしょーか…

雄山「この料理はみすぼらしい。しかし私には高価な山海の珍味を集めたどんな大ご馳走よりもはるかに価値がある。私のすべてはここから始まった。まさに「至高の料理」だった。私はこのみすぼらしさを若いふたりに贈りたいのだ。その中に真の豊かさを包みこんだこのみすぼらしさ、を。」
海原雄山、お見事です。結婚式のスピーチなんて退屈なだけやけども、ここまで見事なスピーチを聞かされたら列席者としても満足するよ。「新郎は会社でも人気者で…」「新婦は昔から優しい子で…」なんていうスピーチには一片の価値すら無く感じてしまうわな…


さてお次は究極のメニュー。だけどもその前にお色直し
photo:05

これ、必要?
だってさ、新郎新婦を祝いに集まっとるのにその主役二人が場を中座するっておかしくねーか?百歩譲って新婦が着替えるのはええとしても、新郎は場に残って酒でも注ぎに回るのが本筋ではないのかね?着替えるんやったら披露宴の前に着替えて来いっちゅうねん。

そしてついに披露されます、究極中の究極のメニューが!
photo:06

京都「瓢亭」の懐石料理
俺は懐石料理というものは好かん。理由?そんなん言うまでもなく「量が足りねえ」どんなに美味い料理であっても、腹が満腹にならへん料理に対して満足感は得られへんねん。懐石を食べるくらいならカレーを食うよ(笑)貧乏育ちの人間の発想かもしれんけどね…

がしかし、懐石料理というものは400年もの歳月を費やして料理だけでなく食器や箸までもギリギリのところまで洗練されてきたわけですよ。
山岡さん「われわれが数多い究極のメニューの中から懐石を選んだ理由はもうお分かりいただけたと思います。究極のメニューとして料理を取り入れる際に、懐石をその料理の価値を測る基準とすることにしたのです。」
photo:07

究極であり、そして出発点でもある…野球のストレートみたいなもんか(笑)