
さて野球愛好会を野球部にしたい比呂。だけどもこれを頑なに認めない千川高校の校長。
校長の母校はね、甲子園に出たんやけども0-30でノーヒットノーランをくらって敗退したのよ。これで母校の印象が最悪になってしもて高校野球嫌いになってしもてん…
俺の母校「三田学園」も甲子園出たことあるねんで。ちょうど20年前かなぁ、俺が入学したての時にセンバツに出場して、全校生徒で甲子園に応援しに行った。初戦の相手は広島の広陵高校。言わずとしれた名門校ですよ。その広陵相手に雨の中8回まで3-1でリードしとってん。ここでコールドにしてくれれば勝ちやったんやけども8回裏に追いつかれて結局9回雨天コールド引き分け再試合。俺たち応援団もビッショビショのまま帰宅したなぁ…
ほんで次の日また応援に。残念ながら2-8で敗れ去ったが、その広陵高校はそのままセンバツ優勝!俺達の溜飲を下げてくれた訳です…
あの激闘、俺は生涯忘れねえだろうな…
そして校長と春華ちゃんの叔父さんの交渉の結果、愛好会から部への昇格の条件は…「夏の高校野球東京都予選、その準優勝校と試合して勝つこと」そして東京都予選決勝、負けたのは英雄のいる明和一…
明和一に勝つためにはこの男の力が必要。柳の親父こそが千川高校の校長やねん。親父と高校生になれば野球は辞めると約束してた柳に対し…
比呂「一度くらい親には反抗しとくもんだぜ。親子の絆ってのは一方的に引っ張られるためにあるもんじゃねえだろ。このままじゃおまえの本当の気持ちは親父さんに伝わらねえし、親父さんの高校野球嫌いも本当のところがわからねえ。」
柳「本当のところ?」
比呂「そ、大人は面子にこだわるからな。自他共に認めちまった高校野球嫌いの看板を、取り外すきっかけをなくしちまってるだけかも知れねえってことだよ。だいたい野球にしろなんにしろ、必死で頑張ってる奴を嫌うってのはおかしな話だろ。とにかくハッキリしてるのは、親父さんにいい試合を見せるためにはおまえのセカンドがどうしても必要だということだ。じゃあな。」
柳「国見くん!」俺とうちの両親はお互いに引っ張らんかったからねぇ、そりゃ親子の絆もほどけますわ(笑)
さて頭を悩ませる比呂。
春華「決まった?スターティングメンバー。」
比呂「スターティングメンバーも何もギリギリしかいねえよ。それも…」
春華「それも?」比呂「わかってるよ。だれ一人手は抜いちゃいねえもんな。」
大切なことやね。そりゃ野球をやる以上野球が上手い奴が多ければ多いほどええのは言うまでもない。だけども下手な奴ばっかでもそこに野球への愛情がある限り、闘う意味はあるんだよな…
だけどもせめてセンターに一人、足が速くて肩が強くて野球をよく知ってる奴が欲しい。ってな訳で木根の元へ。木根がだした条件は…春華「一コマくらい考えた方がよかったかしら…」
比呂「ムダゴマはいらねえよ。」
まぁあだち充は基本的にムダゴマ結構多いけども。
結局英雄の助力で木根も参加。千川高校のメンバーは…なんだこのレフトは。個性のカケラもありゃしない(笑)
さてさて応援に駆け付けたひかり。
ひかり「なんだなんだ、二軍が相手か。久しぶりに比呂のバカみたいな全力投球が見られると思ったのに。ちょっぴりガッカリだな。」
英雄「見られるさ。明和野球部はそれほど甘くないぜ。二軍も含めてな。」
ひかり「とにかく今日の試合は比呂の応援にまわるからね。いい?」
3回を終わって被安打6、エラー3。それでも失点0に抑える比呂。
しかし5回、打たせて取るピッチングがそれそろヤバくなってきた比呂はちょっぴり本気を出して三振を奪う!
これで本気になった明和の二軍ですが…野田「よ、有名人。」
比呂「せめてあと1回待ってほしかったな。」
野田「あと4イニング、パーフェクトに抑えない限り、英雄に二度打席が回るな。」
比呂「プレッシャーだな。」
野田「ああ。」
チームスポーツの中では比較的野球はプレッシャーがかかりやすい。それを楽しめればええけどもそんな簡単にゃあいかん。やっぱり流れを掴みかけてる時の打席とかだと、それを自分で切るわけにゃいかねえってプレッシャーは重いもんな…
そして7回表、先頭打者は英雄!
ひかり「がんばってね。」
比呂「いいのか?先頭バッターは英雄だぜ。」甘酸っぱいねえ

そして英雄との対戦!
比呂「頼むぜ…親友!」
だけども英雄は鬼のフルスイング!
野田「あいかわらず融通のきかない奴だなァ。」
英雄「おれはこの日のために野球をやってきたような気がするよ。」
なんとか追い込んだ比呂、そしてここでダメ元の140キロフォーク!
これを打ち損じた英雄、打球はセンター前へ。これに飛び込むのは木根!
比呂「ムリだ木根!つっ込むな!」
木根「うるせ!あんニャロの球は死んでも捕る!」
明和の監督「このグラウンドで外野の頭を越えたら、大抵の場合…」難しいとこなんよ、外野ってのは。後ろに逸らすと長打になってまうし、かといって突っ込まねえのも消極的やし…
その頃ベンチじゃ…
春華「ステキな人ですね、橘くん。」
ひかり「ちょっと融通きかないけどね。」
春華「いつから付き合ってるんですか?」
ひかり「えーと、中一の時に比呂に紹介してもらって…ま、休みの日に映画を観たりお茶を飲んだり。」
春華「中一からかァ。」
ひかり「人気あったのよ、その頃からヒデちゃんは。背が高くてスポーツ万能でカッコよかったから。」
春華「付き合ってみたら外見だけじゃなかったんですね。」
ひかり「うん。」
春華「クジ運いいんですね。わたしなんてちょっといいなって想った人はみんな見かけだけの外れクジ。一度も当たったことないんです。」試合中に何を話しとるねんこの子らは…恋バナは喫茶店でやりなさい!
そして最終回、明和の攻撃。ノーアウト一、二塁でバッターは英雄。ツーナッシングに追い込んだけども、一球外したそのボールを狙ってた英雄!打球は右中間真っ二つ!野球ではね、ツーナッシングになると一球外すねん。この理由はまぁ色々あるねん。外した球に手を出してくれたら儲けもんやし、ツーナッシングになると審判のストライクゾーンが狭くなるからそんな状況で勝負するのは投手不利なんであえて2-1にするとか。でもこれといった明確な理由はないねん…
これでワンナウト一、二塁。次の打者の打球は比呂の足元を強襲!なんとかセカンドが処理してツーアウト。
さぁその後も元気に投げ続ける比呂。
春華「あー、よかった。一瞬国見くんの足に当たったのかと思っちゃった。」
ひかり「当たったわよ。」
春華「え?でもなんともないみたい。」
ひかり「比呂は…」明治や昭和の男はそーなんよな。だけども最近の奴らはつまんねえことでよく騒ぐわ…
タイムリーを打たれたもののなんとか後続は抑えた比呂。セカンドの風邪ひき男に…
比呂「よく来てくれたな。おかげでなんとか試合になったよ。」
風邪ひき男「あきらめたんですか?」野球をやってた男達にね、諦めるって言葉はないねん。どんだけ点差が離れていようが、絶望的状況だろうが「野球は2アウトから」その事を知っているから。
そしてね、2アウトからチャンスを作って奪い取った点というものが、どれほど味方を鼓舞しどれほど相手にダメージを与えるのかを知っているから。
だから野球小僧には諦めの悪い奴がそろっとるねん!