吉川市におけるデジタルトランスフォーメーション(以下「DX」)は、国施策の推進やシステム標準化といった基礎を固めていく点から堅実に進められてきていると捉えている。若手職員を中心に構成されるワーキングチームによる着眼点や提案を含め、市独自の視点や取り組みの内容を伺う。

DXの推進は、2040年頃にかけて生じる人口縮減時代に備え、半分の職員数でも担うべき機能が発揮できる自治体となり、デジタル化の恩恵により市民の方々の生活が様々な場面で便利になることを目指すものである。また、自治体DXの推進とは、単にシステムを導入することではなく、業務プロセス全体の見直しに取り組み、効率化を図るものであると認識している。若手職員によるワーキングチームについては、市全体のDX推進の方向性を定めていくための基礎として、市におけるデジタル技術を活用した取り組みのアイデアについて、自由に意見出しを行ったもの。アイデアしては、既に先進自治体の事例ではあるが災害時の現場確認においてドローンの活用や、来庁者を案内するロボットなど、最新のデジタル技術に関わる発想もあり、DX推進に関わる事業展開の参考としている。
令和6年度の取り組みとしてはLINEによるプッシュ型の情報発信や、マルチコピー機を活用した「かかない窓口」の推進、混雑情報をウェブで配信する「またない窓口」の推進などを計画している。
デジタル社会が急速に発展していく中において、高齢者をはじめとするデジタル機器の活用に不安な方々が 地域から孤立し、社会から取り残されてしまわないようサポートしていくことが重要であることから、 令和4年3月に策定した吉川市DX推進計画において「人に優しいDXの推進」「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化社会」を目指してとビジョンを定めた。このビジョンに基づき、自治会のご協力をいただき、自治会館等の身近な場所で高齢者の方々が地域の中で誘い合い、気軽に参加できるスマホ教室を計画している。目指す将来像としては、高齢者がスマートフォンの便利な機能を理解することで、市が発信する情報の迅速な取得や行政手続のデジタル化への純能力を向上のほか、家族や友人との連絡手段が多様化されることで、 地域で支え合うコミュニケーション力の向上や、デジタルツールによる地域活動の効率化などにより、みんなで支え合うデジタル社会の実現につながっていくことを期待している。

市民の来庁負担軽減はもちろん 行政事務の効率化を図っていくことが重要と考えているが、その観点をしっかり持っていることがわかった。システム標準化や基幹システムの話は国の話になってくるが、今 目の前のこの仕事をもう少し効率化できないか、業務プロセスの見直しをできないかと気付けるのは各現場の職員のみなさま。その視点を持って各事務にあたる職員を応援する、育成していくことをどのように進めていくのか。

おっしゃる通り、業務の中で何か見直せることがないか、もっと効率化できることはないかと職員自らが気づかないと進んでいかない。得てして組織的には情報担当部門が全部やってくれるんじゃないかという空気感もあるが、そういうことではない。情報担当部門からアプローチをかけていき、各部署で取り組んでいただきたいと考えている。

その考えはDX計画や市人材育成計画、その他計画に示してあるのか。

デジタル社会が急速に発展しており、複雑対応化する行政課題に対応する上でAI等の新たなデジタル技術を活用するとことが求められている。すべての職員において基本的なデジタルスキルが必要不可欠な能力であると考えている。令和5年8月に職員アンケートを実施し、吉川市におけるデジタル人材育成の方針策定を進めていた。が、令和5年12月に国「人材育成基本方針」の大幅な見直しがされた。この中には社会環境の変化を踏まえた人材育成に加え、人材の確保、職場環境の整備、デジタル人材の育成確保の視点が盛り込まれいる。人材の育成部門とDX推進部門が連携し、吉川市人材育成基本方針の見直しを進めていく。

国方針の見直しに先駆けて市が動いていたことを評価し、経緯を注視する。
ここ数年、10年ぐらいは社会の変化が著しかった。長い行政経験をお持ちな中でも 価値観の多様化、ICTからDX、感染症、世界情勢とスピード感の加速度的な速まりは重い数年だったのではないか。さらに加速度的に進むであろう社会、避けられない労働人口減や行政に求められる役割増加が予想される中で、DXの取り組み含めて今後の市政運営に必要と考えられることは。

まず「情報化」に携わったのは平成元年から4年。この時はOA化、オフィスオートメーションという言葉で定型業務を自動化して業務を効率化する観点だった。当時3種の神器と呼ばれた「オフコン」「ワープロ」「ファクシミリ」。今となっては当然のものも、当時はほとんど入っていなかった。各公共施設にFAXを設置し、情報の連絡手段が少し電子化された。ワープロについては各課一台の設置もできていなかったというような時代。
2回目に携わったのは 平成の11年から14年。この頃になるとパソコンが使われていたが、職員個人が用意して使っていたという状況。当時の旧庁舎にネットワークを結び、グループウェアを導入する計画を作った。大変楽しかった。
今現在デジタル化に携わっていることも大変面白くてしょうがない。来年度導入する情報発信の取り組みは、東日本大震災で仙台へ被災地支援に行った時から温めていた。仙台でたまたま隣りに座った方が「あなた行政マンなんでしょ。うちの仙台はゴミの日の前の日にメールが来て、明日はゴミの日だからゴミ出すの忘れないでくださいねって教えてくれて便利なの」と。ずっと温めてたが、関わる部署にならずなかなかできなかった。そして今回DX部署になったので進めていきたいという話を課内でずいぶんしてきた。議会の後押しもあり、情報発信ツールがLINE上で出来上がるところ。ただこれも運用が難しい。行政はとにかく情報を出してしまおう、とみんな発信をしてしまう。その運用だとブロックされてしまう。さじ加減をしっかりやっていってもらいたい。
情報政策はこれから。ただ、AIにとって代わって全てを任せるということは好ましくない。人間の考えをしっかりと出して…議会のこの質疑や答弁をAIでやり合うようなことにならないといいなと思っている。私の役割は終わるが、この想いを引き継いでくれる職員がたくさんいる。今後の情報政策を見守っていただきたく思う。

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情報政策やICT化については
SIerが (システム構築について過不足の判断が難しい)顧客のニーズを
どう調整して進言してくれて
それを顧客が受け入れるか
そんな難しさを情報担当とやりとりしてきました。

検討材料抽出や優先順位の提言はAIができるようになるとしても
幼少期からSFディストピアものを嗜んだ身としては
最終的な決定は何らかの手法で選ばれた「ひと」であってほしい、
「ひと」は批判的思考を持ち 柔軟かつ矛盾しながらもがき考えて動く力を失ってほしくない、
そう思います。

それを手放したら 人はなんのために生きるのでしょうね。

技術はあくまで手段、
手段が増える技術の進化にワクワクしながら
手段に振り回されないよう
理念とリテラシーを持てるよう
そうありたく思いながら

答弁を受け止めました。