質問
運営形態を限定せず、必要性があると認められ、税金拠出がされている市の福祉サービス事業を広く対象として質問する。
①課題に対する市の対応について
議員活動の中で届く市民の皆様の声や、事案となってしまい報道される一般的に報道されるケースから、福祉サービスにおいて、下記3点を課題と感じている。
・年齢や障害や認知症などの特性により、福祉サービス利用者本人の意思表示が難しく、不適切事案が発生していても発覚しづらい
・福祉サービス利用者本人の保護者や看護者が事業所にお世話になっているという意識から、不適切事案の発生を感じていても声を上げづらい
・福祉サービス事業所でサービス提供に務める被雇用者が、事業の運営に疑義を感じ、抱いていても声を上げづらい
これらの課題に対し、福祉サービスの質の向上のため、市としてどのような対応をしているか伺う。


答 健康福祉部長 (福祉サービス施設としては高齢者関係)
各種福祉サービスの利用者がサービスに対する苦情や不適切案件について訴える際は、当該事業者以外の相談窓口をご案内している。相談に当たって匿名を希望される場合は、原則として、ご本人の意思を尊重するとともに、虐待など、匿名性が確保できない場合においても、代替事業所をご案内するなど、訴えによって不利益が発生しないよう配慮するとともに、サービスの継続にも努めている。また、被雇用者が虐待を目撃した場合などは、所管する行政機関や警察への通報義務があるとともに、その他の不適切事案についても、適時ご連絡をいただいている。


質問
今ご答弁いただいた内容は、健康長寿部所管分(高齢者福祉)だけでなく、こども福祉部所管…障がいや保育も含めた対応という認識で良いか?

健康長寿部長
おっしゃる通り、福祉サービス全般のこととして答弁した。

質問
こども福祉部長へ再質問する。昨年、静岡県裾野市の保育園で園児への暴行事件があった。それをきっかけに、厚労省から「保育所等における虐待等の不適切な保育への対応の実態調査」が行われた。その実態調査の中で吉川市として調査された結果のご紹介を。

こども福祉部長 (福祉サービス施設としては保育、幼稚園、障がい関連)
昨年静岡県裾野市で起こった事件を契機として国の方で初めて調査が実施された。調査対象期間は昨年の4月から12月。保育所、地域型保育、認可外、認定こども園における不適切な保育が疑われる確認が行われ、全国市町村計2313件という数字が出ている。当市はこのうち2件を報告した。この2件につきましては、必要な実地調査は既に済んでいる。

質問
固有名詞までは結構なので、どのようなことがあり、どのような対応をされたかお聞かせを。

こども福祉部長
2件とも、施設関係者からによるご連絡で通報があり発覚したケースだった。調査を行った結果、1件については不適切ではないという判断をした。もう1件については、保育士の言動が少し不適切だったと判断をし、関係施設に伝えた。

質問
調査の結果、1件は不適切ではなく、1件は不適切であったとのこと。日頃から線引きが難しいことも多いのではないかと思う。絶対やってはよくないし、もちろん望むわけではないが、虐待まで行くと明らかに処罰や指導を入れられるけれど、不適切なのかこどものために行ったのか難しいケースが多くある。最初の質問の「・被雇用者、保育士が運営に疑義を持っても…」というところで具体例を申し上げると、市内保育所で働かれていた保育士さんが、自園の運営がこどものためになっているのか、疑問を感じているというご相談をいただいた。聞き取りをしたところ、基準を満たしていない、不適切と言い切れる、指導対象になるものではなかった。担当課の方にはこういったご相談があったということは伝えさせていただいたが、ご相談くださった方に「こういうふうに対応したよ」「こう変わるよ」と言えなかった。
なので、以下の質問項目②第三者評価制度であったり、質問項目③スケール評価であったり、何らか一定の基準や外からの目を入れることが質の底上げにつながるのではないかと思い、質問を続けさせていただく。

②第三者評価制度について
社会福祉法の規定を背景に、社会福祉法人等の事業者が提供するサービスの質を、当事者以外の公正中立な第三者機関が専門的かつ客観的な立場から評価するのが「福祉サービス第三者評価制度」で、利用者のサービス選択および事業の透明性の確保のための情報提供と福祉サービスの質の向上支援の効果が期待され、実施されている。
市内福祉事業所の福祉サービス第三者評価制度の実施状況は。

健康長寿部長
介護保険サービスのうち、認知症対応型共同生活介護事業所、いわゆるグループホームにつきましては、外部の者の評価を受けることとなっている。市内3事業所においては、外部の者による第三者評価の対象となっている。なお、当該制度は介護保険制度開始時から運用されている。それ以外の事業者につきましては、外部の者による評価は必須になっていないが、事業所自らが自己評価を行い、運営推進会議等の場において、第三者の観点からサービスの評価を行うこととなっている。

質問
グループホーム3事業所が対象であるのならば、当然のように全て第三者評価、外部評価が行われているといった認識でよいか。

健康長寿部長
3事業者うち2事業者は、令和4年度に実施しているが、1事業者については、令和5年3月開設のためまだ実施はされていない。

こども福祉部長
児童福祉施設の設備および運営に関する基準により、「保育士等による自己評価の実施」は義務付けられているが、「第三者評価の受審と結果の公表」は努力義務となっている。市内保育施設の状況としては、第三者評価を行っている施設は少数だが、保護者や地域の方などの施設関係者による評価を行っている施設もあり、幼児教育保育の更なる充実と、保育の質の向上を図っている。
また、障がい福祉施設については「第三者評価の受審と結果の公表は努力義務」となっていることもあり、現在、第三者評価を実施している事業所はないが、障がい児通所事業所では、保育施設と同様に、保護者や施設関係者による評価が実施され、障がい児の療育支援の質の向上を図っている。

質問
保育施設に自己評価が義務付けられているとのことならば、当然のように全園実施されているといった認識でよいか?

こども福祉部長
自己評価は義務づけであると申し上げたが、認可保育所等市内全22施設に監査等を行った結果、このうち2施設が自己評価を行っていなかったという事実が確認でき、指導をした。

質問
「保育施設は、第三者評価受審は努力義務だけども、自主的に少数園が実施している。施設関係者評価を行われているところもある」詳しくご説明を。

こども福祉部長
施設関係者評価は保護者へのアンケートなどの評価をベースにするもので、市内22園中、実施していたのは7園。その評価実施の頻度は、1年に1回行っているところから、5年に1回行っているところもある。第三者評価の実施状況は、全22園中、民間園で1園実施していて、5年に1回行っている。

質問
障がい児通所施設についても評価内容を詳しくお聞かせを。

こども福祉部長
障がい福祉サービスの評価の状況は、自己評価を行っている事業所が全20事業所のうち13事業所で、主に児童障がい関係のサービスを提供している事業者となっている。第三者評価を実施している事業所はない。

質問
「障がい福祉サービスのうち、児童関係のサービスを行っている施設が主に自己評価を実施されている」ことについて、義務等課されているかご説明を。

こども福祉部長
障がい児福祉サービス、いわゆる児童発達支援事業や、放課後等デイサービス事業、並びに就労継続支援の A型の事業所に関しては、自己評価を実施をしないと給付費が減額になるという制度があり、各施設自己評価を実施しているものと認識している。

質問
過去、市福祉サービスで、第三者評価制度を実施したケースは。

こども福祉部長
平成18年度から5年間、市立第3保育所を指定管理者による運営としていた。その指定管理期間の中間年に当たる平成20年度に第三者評価を実施しており、その後民営化への検討資料としても活用した。

質問
現在、福祉サービスに限らず、市の事業で第三者評価制度を実施しているケースは。

健康長寿部長
老人福祉センターの指定管理者が市との委託契約に基づき、第三者評価を実施している。なお、市民交流センターおあしすの指定管理者についても、老人福祉センター同様、市との委託契約に基づき、第三者評価を実施している。


質問
第三者評価制度は現在「老人福祉センター」「市民交流センターおあしす」で行われており、過去「第3保育所」で行われていた。第3保育所で実施されたのは、保育の質向上のためといった理由ではなく、指定管理者制度の枠組みの中で第三者評価制度を行う実施する必要があったという認識で良いか。

こども福祉部長
「市全体として指定管理者制度の導入のためのガイドライン」を規定している。その中でモニタリングという項目を設けており、指定管理者制度を導入した施設に関しては、管理者自らが実施する各種点検確認などのセルフモニタリング、いわゆる自己評価と言われているものや、地方自治法に基づき市が実施する業務の履行確認、そしてさらには第三者評価機関を活用した第三者評価性第三者評価などの各種モニタリングを、関係部署と協議の上で実施することというルールがある。そのルールに沿って、第三者評価を実施することが適しているという判断を行い、第3保育所運営者募集要項の中にその旨を記載をして、第三者制度を実施をしてきたという背景がある。


質問
外部評価の実施状況について承知した。
外部評価は施設の負担も大きく、義務(であっても実施されていない施設もあったが)であったり、給付費に関わらないと実施が難しいのかなと思う。

③保育環境、幼児環境の質の向上について
福祉サービス第三者評価制度に期待する効果がありながら、努力義務であることや、受審の費用負担が大きいこと等から受診率の低さが見られる。
また、結果公表のあり方として、保育施設の共通評価項目の達成度がほぼ満点であったり、質の向上について検証しづらい、施設間の差異を見出し難い等の課題もあると言われている。
専門家による保育の質評価スケールとして、ECERSやITERS、日本版SICSやCLASSがある。
保育環境の質の向上のため、また、今回の一般質問項目「1―①課題に対する市の対応について」に挙げた課題への対応として、専門家による保育の質評価スケールの実施やそれに類する調査の実施が必要と考えるが、見解は。

こども福祉部長
福祉サービス第三者評価制度は、公平中立な第三者評価機関が専門的かつ客観的な立場から評価することで、質の高いサービスを維持するためのものだが、議員ご指摘の通り、受審率の低さや結果公表のあり方等、様々な課題があることは認識している。現在、市では、保育の質を向上するために、私立認可保育園協議会と連携をしながら情報交換会や研修などを実施しているので、その取り組みの中で、提案のあった評価スケールなどについて紹介をしてまいりたいと考えている。

質問
第三者評価を自主的に行ってくださっている事業者もいらっしゃることがわかった中で、制度の課題を述べてしまったことは申し訳なく思う。しかしながら、その課題は市としても一定の共通認識があった。

ECERS等は海外で生まれた評価スケールだが、国内での研究も進んでいる。民間に保育を委託するということはそれぞれの事業所さんの強みだったり、特徴を活かすことでもあるが、この保育の質評価スケールは「保育」の普遍的なものが指標。独創的で強みといったものをより高く評価するというのではなく、質の底上げをする、こどもの発達に寄与するであろうものがサブスケールや項目として提示されている。
様々なスケール等の中で、多く研究と現場での活用がされ、日本語訳も進められているのが「ECERS」。内閣府の研究資料にも出てくる。「内閣府経済社会総合研究所の研究者および外部研究者によって行われた研究成果を取りまとめたものであり、内閣府経済社会総合研究所の見解を示すものではない」という注釈をお伝えした上でご紹介する。
「認可保育所における幼児教育保育の質に関する評価の実施と課題」といった表題のもので、藤沢恵子氏が連名のトップにいらして、222年5月に出されたもの。エビデンスをもって政策決定をしていくことを教育の場に持ってきている中室牧子先生もこの研究に名前を連ねていらっしゃった。「同じ自治体の中で同じ設置許可を受けている保育施設、認可保育所であってもばらつきがある」「同じ施設内であっても、クラスによって質のばらつきがある」という課題があげられ、同感。評価スケールを複数の園で実施したところ、「フィードバックをしたのみで、協力施設に対して特段の介入や支援を行わなかったけれど、評価をした3年の期間の中で、スコアが向上された」とのことだった。単に「ダメだから低い点数だよ」というスケールではない。3年をかけて評価スケール実施をしたことがスコア向上、質の向上につながったのではないか、いうようなことがこのペーパーの中に書かれている。
「市立認可連絡協議会で紹介する」という答弁に感謝する。が、その紹介をしてくださるならば、評価スケールを用いることが施設にとってどんなプラスがあるのか、何よりこどもたちにとってどんなプラスになるのかをしっかりお伝えできるかが肝になってくる。保育の評価スケールについてどのような調査をされたか、どのような事例をご存知かご紹介を。

こども福祉部長
今回、評価スケールの質問をいただいてから様々な評価スケールについて実際取り組んでるところ、自治体を中心に当たらせていただいた。その中で、東京都の多摩市保育協議会が保育環境評価スケールを全園実施していると公表していた。多摩市の保育担当課に連絡させていただき、概要を伺った。多摩市は市内の認可保育所、また認定こども園の保育士が中心となって構成されていて、公立私立ともに各園が集まって定期的に研修会を行っている組織で、認可園24と小規模園4で構成されている。3-4年前の発案から「この評価をやっていこう」となり、昨年度小規模を除く市内全ての認可保育所で年2回スケールを用いた評価を実施したとのこと。また、このスケールを行うにあたり、このスケールの翻訳者である方を講師の方に招いて研修を重ねるなど、いろいろと事前に勉強を行ったということを確認させていただいている。

質問
では保育の質スケールを用いた多摩市さんが、どのような良い効果が得られたと実感しているか、ご紹介を。

こども福祉部長
昨年度実施したばかりということもあり、民間園・公立園とも評価を行うことに負担となる部分も当然出てくるし、メリットデメリットともにあると思う。ただ、各園が心構えとして、今後の保育の質の向上に繋げていこう、評価の結果を改善に繋げていこうという気持ちを大切にして、取り組んでいるんだというお話を伺った。市としても保育の質を高めるための評価は有効性が高いと認識をしている。多摩市も同じような考えで活動されているんだなと考えたところ。

質問
吉川市は公立保育園を持っている。運営者としての役割も持っている。スケール調査の紹介にあたって、実施者として公立保育園の中で活用できないか、これがどのような質の向上に繋がるのかと取り組んでいただくことも可能かと思うが、検討いただけないか。

こども福祉部長
市としては市内の保育の質が全ての園で高まっていくことをまず第一に考えており、期待もしている。公立園、民間園どちらの施設もある中で議員おっしゃることもよく理解できるので、まず公立園のスタッフを中心に多摩市の事例等研究させていただいて、その後に民間含めた保育園協議会の方に情報提供をしていくような形を取っていければと思う。

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吉川市の公立保育所が存続した意義として、他では受け入れが難しい園児さん達の受け皿という役割が大きかったと認識しています。公立保育園の役割として、吉川市の保育がどういうところを目指すのか、質をどう上げていくのかというところを実践し、どう広げていくという役割も持てるのではと期待しています。
市は正規保育士採用を再開しました。市職員正規保育士は、質を高めるための研究をしてくださる方であったり、ゆくゆくは保育政策の意思決定の場にいてくださることも私は可能なんじゃないかなと思います。
期待を述べたが、今回の一般質問では評価スケールの調査をしてくださる、具体的な進め方に進んでいただけるご答弁がいただき、大きな一歩でした。ありがとうございました。