《記者コラム》デルタン氏衝撃の下議罷免=人生の変わり目はいつ? ブラジル日報WEB版より | 私たちの50年!!

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《記者コラム》デルタン氏衝撃の下議罷免=人生の変わり目はいつ? ブラジル日報WEB版より

 

デルタン氏(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

 

 デルタン・ダラグノル氏が16日、選挙高裁から下議を罷免され、大ニュースとなった。同氏は主任連邦検察官として2010年代半ばに行われた汚職捜査「ラヴァ・ジャット(LJ)作戦」を率い、「ブラジル政界の浄化役」としてヒーローのように扱われた人物だ。かつての輝きこそ失ってはいたものの、それでも選挙法違反で判事満場一致で罷免判断を受けることになるとは誰にも想像出来なかっただろう。
 デルタン氏といえば、半ば伝説となっている2016年9月の記者会見が有名だ。会見上で同氏は「ペトロブラス・スキャンダルのすべての主犯」としてルーラ氏を告発。その後、ルーラ氏は刑務所で実刑を受けることになる。翌年に法相になったLJ担当判事のセルジオ・モロ氏と共にこの頃デルタン氏は人生の絶頂期にあった。
 そんなデルタン氏の人生がどうして逆転してしまったのか。その転機は間違いなく2019年にある。同年6月に発生した「ヴァザ・ジャット報道」だ。
 ヴァザ・ジャット報道とは、デルタン氏やモロ氏の携帯電話の記録が盗聴され、その内容をサイト「インターセプト」が報道した件を指す。その結果、モロ氏とパラナ州連邦検察局が癒着状態にあり、モロ氏がリーダーであるかのように振舞っていたことや、デルタン氏がルーラ氏の容疑を新聞報道の推論を読んで固めた疑惑などが明るみになった。
 報道を受け、検察はデルタン氏に倫理問責を行い、デルタン氏は裁きを逃れるかのように検察を辞職し、下議選に出馬して当選を果たした。今回の罷免はこの選挙結果を無効にするようにとの訴えを受けての結果だ。
 デルタン氏への風向きの変化はヴァザ・ジャット報道が行われる少し前から起こっていたとコラム子は捉えている。
 デルタン氏は2019年3月、総額20億レアルにも及ぶ汚職捜査基金「LJファンド」の創設を求めた。LJが国家規模の捜査になったことで、捜査予算も拡充する必要があると訴えたのだ。
 だが、世論は公の機関が民間企業のような主張をしたことに対して強い反感を示した。また、ヴァザ・ジャット報道で報じられたLJを大きくしようと講演会などに奔走するデルタン氏の姿が、皮肉にも、捜査そのものよりも自身の名声を追い求めているように世間の目に映ってしまったのも反感を買う原因の一つとなった。
 デルタン氏は下議として、フェイクニュース防止法案に対し「神への信仰までも検閲されてしまう」と、福音派としてややファナティックとも言える主張を展開し、反対活動をしている最中だった。
 コラム子は「検事の時に隠そうとしていたものを、ついに隠さなくなったのか」と思い、彼の動向に注目していたが、結末は、わずか3カ月半で議員罷免という思いもよらないものだった。(陽)