ブラジル日報、新体制始動=レンジ新理事長、ナカムラ副理事長就任=ITと革新で挑む新経営陣
2026年4月30日
本紙・ブラジル日報協会(林隆春名誉会長)は組織の抜本的な刷新を図り、新たなリーダーのもとで次代への歩みを踏み出した。前経営陣に起因する必要な調整により、印刷版は4月3日付から一時中断を余儀なくされていたが、新体制の迅速な決断により復活することになった。3週間の休止期間を経て、30日付より週1回の増ページ形式(16ページ立て)として、伝統ある紙面が再び読者の手元に届けられることとなった。ここに新しく就任した理事長と副理事長を紹介する。
理事長 レジス・レンジ=技術的変革と社会的信頼を統合する知の設計者
新理事長に就任したレジス・レンジ氏は、30年以上にわたりIT技術の最前線で実績を築いてきた実業家であり、同時に深い社会奉仕精神を体現する人物だ。当協会理事長に加え、AUTHENT Japanの子会社『AUTHENT Holding』社長も兼任している。
【専門教育と技術的パラダイムの構築】
現在65歳、敬虔なキリスト教徒であるレンジ氏は、建築学、産業オートメーション、およびシステム分析という多角的な専門教育を修めている。1989年からIT分野での活動を開始し、1992年にはブラジル最大級の自動車売買プラットフォーム「WebMotors」の基盤技術を開発。
その後、CRMプラットフォームや地理情報処理(GeoProcessado)を駆使した初の大規模データ(Big Data)プロジェクトを指揮した。このプロジェクトは、州知事や市長、さらには大統領選挙における戦略立案の要として活用され、国家規模の意思決定に寄与した実績を持つ。
【知的財産と国際的信条】
五つの技術特許を保持する同氏は、現在、暗号資産と統合されたデジタルバンク等のフィンテック分野において業界の参照指標となる成果を上げている。この卓越した技術的背景は、伝統的な新聞社が直面するデジタル変革(DX)という課題に対し、インフラの近代化と新たな収益モデルの構築という明確な解をもたらすものだ。
また、その活動はビジネスの域を超え、1995年に創設したロータリークラブ・スザノ・スールの初代会長としてポール・ハリス賞を受賞。世界平和大使としての顔も持ち、国連平和維持軍・ブルーベレー(Boina Azul)を擁するABFIP(ブラジル国際軍事軍協会)の技術ディレクターや、ブラジル栄誉・功労アカデミーの評議会員を務めるなど、その社会的信頼は盤石だ。
就任にあたり、レンジ氏は日系コミュニティに対し、誠実さと不退転の決意を込めて、次のようなメッセージを発信した。
「私は、ブラジル日報協会の歴史と文化、そして何よりこの地で日本語を守り続けておられる読者の皆様に対し、深い尊敬の念を持って理事長就任をお引き受けいたしました。多くの皆様にとって、印刷された新聞は単なる情報源ではなく、自らのルーツや記憶を繋ぐ大切な絆(elo)であると確信しています。だからこそ、私はここに宣言します。紙面の発行を、献身、品質、そして継続性を持って再開し、皆様が長年寄せてくださった信頼に必ずや応えることを。妻ローラ・レンジと共に、私たちは読者の皆様により寄り添い、責任を持ってこの新たな時代を切り拓いてまいります。私が大変大切にしている日系コミュニティのために、有意義な活動ができる機会をいただいたことに、林家に対して感謝申し上げます」
レンジ氏が語る「印刷された新聞」への拘りは、デジタル化を推進する技術者としての知性と、読者の情緒的価値を尊ぶ温かな人間性が融合した、極めて多層的なリーダーシップの表れと言える。
副理事長 デニス・ナカムラ=破壊的イノベーションと社会的インパクトの先導者
理事長の技術的・社会的リーダーシップを補完するのが、ブラジルのスタートアップ界で爆発的な成長を牽引してきたデニス・ナカムラ副理事長だ。
【エリートエンジニアとしての軌跡と教育への献身】
40歳の若きリーダーであるナカムラ氏は、サンパウロ大学(USP)工学部を卒業後、新時代の起業家精神をテーマにMBAを取得。サンパウロ州コメンダドール(受勲者)の称号を持ち、TEDxの登壇者としても知られている。彼の特筆すべき足跡は2008年、9都市以上にわたる数千人の学生のキャリア形成を支援するNGOを共同創設したことに遡る。この社会貢献への原点は、現在も国内外の大学でのMBA教授活動や、ボリビアでの大学院設立、さらにはブラジルの「ゲノム・バレー(Vale do Genoma)」の組織運営へと引き継がれている。
【スケールアップの専門性と多角経営】
ナカムラ氏のビジネス・キャリアは「成長の加速」という言葉に集約される。WESTWINGの経営陣として年商2億レアル規模への成長とIPOを支え、iFoodにおいては立ち上げ期から年商20億レアルを超える巨大プラットフォームへと飛躍させる管理職としての手腕を発揮した。
さらに、NASAでのロボットシミュレーション・スタートアップへの関与や、2019年の中南米初となるドローン配送の実現など、フロンティア技術の実装においても先駆的な役割を果たしている。医療、教育、物流、フィンテックなど35以上の企業に関与し、日系社会とも親和性の高い飲食分野(約30店舗のレストラン経営)にも精通している点は、実体経済に即した柔軟な経営判断を可能にする。
ナカムラ氏がもたらす「破壊的イノベーション」と「運営の効率化」は、伝統ある組織にスピード感溢れる変革の風を吹き込み、ブラジル日報を単なるニュースメディアから、テクノロジーによって強化された「コミュニティのプラットフォーム」へと進化させる起爆剤となるだろう。
デニス・ナカムラ氏は、技術が持つ可能性と人間の繋がりの重要性を次のように説く。「この新聞の価値は、単に紙の上や画面の中にあるのではありません。それは協力者やパートナー、一人ひとりの心の中に宿っています。私は皆様と共にこの新たなサイクルを開始します。勇気とテクノロジーを駆使することで、私たちは日系社会を繋ぎ、誇りとなる声を上げ続ける存在であり続けます」
彼の提唱する「勇気」とは、過去の成功に安住せず、新たな時代に適応するための変革を恐れない姿勢を指しており、そのビジョンは次世代の読者層をも惹きつける力強さを備えている。
伝統的価値と先端技術の融合=相乗効果と新時代への展望
日々の速報性をWEB版およびPDF版(週5回発行)で担保しつつ、木曜日発行の印刷版を「1週間の主要ニュースの総集編」および「NHK番組表」などを網羅した記録性の高い媒体として位置づけ直した。
日系社会において、紙の新聞は単なる情報伝達の手段を超え、アイデンティティの拠り所であり、世代を繋ぐ文化的な紐帯(ちゅうたい)としての役割を担ってきた。この伝統的な価値を先端技術による経営基盤の強化で守り抜くため、該博な知見と技術的真髄を極めた二人のリーダーが招聘された。
ブラジル日報協会が迎えた新体制は、日系社会の伝統を重んじる「経験と信頼」のレジス・レンジ理事長と、現代ビジネスシーンを席巻する「革新とスピード」のデニス・ナカムラ副理事長という、至高の相乗効果(シナジー)によって構成されている。レンジ氏が持つ国家レベルのIT戦略や国際的地位は、メディアとしての格調と基盤を盤石にする。一方で、ナカムラ氏が持つスタートアップの動的な成長戦略と広範なネットワークは、組織の近代化を劇的に加速させるだろう。
「印刷版の復活」という象徴的な再出発は、日系社会における「情報の灯」を絶やさないという不退転の意思表示に他ならない。伝統的な日本語文化の守護と、最先端テクノロジーによる情報流通の効率化。この二つの融合こそが、新生・ブラジル日報が切り拓く新時代の羅針盤だ。日系社会のさらなる発展に寄与する、両氏の英知に満ちたリーダーシップに、かつてない期待が寄せられている。