『アニメと戦争』 | yoshi's drifting weblog -揺蕩記-

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私の一番好きな言葉、揺蕩(たゆた)う。……
日常の、ふとした何気ない出来事について、
その揺蕩う様を書き留めていきます。

藤津亮太氏の『アニメと戦争』を読み了えましたよ。

 

 

 


戦後社会において、戦争はメディアを通して体験するものになり、アニメもその一翼を担ってきたわけですが、その語られ方の変遷を見ていくことで作り手は何を考えどの様に描き、観客は何を感じ体験することになったのか、そのうねりを考察する、といった内容でございます。

 

 

まず表紙がカッコいいというか、戦争の悍ましさや恐怖感を表すタッチとMSのザクというSFとのバランスがすごい。

 

 

ザクなんだけど怖いもん。

 

 

さて。

 

 

内容なんですが、戦争体験を4つの区分、……戦前(「状況」の時代)、戦中(「体験」の時代)、戦後直後(「証言」の時代)、戦後後期(「記憶」の時代)に分け、作り手がどの立ち位置にいてどの時代に世に出したのかなどを考えて、その時代背景などと併せて考察していくスタイルとなっております。

 

 

初めは『ゲゲゲの鬼太郎』から。

 

 

作者の水木しげるは戦前生まれで、戦地で左腕を失いながらもどうにか生き延び、戦後は貸本漫画化になり、そして『ゲゲゲの鬼太郎』を誕生させるわけですが、そこに太平洋戦争が絡む「妖花」というエピソードがありまして。

 

 

鬼太郎ってこれまでに6回アニメ化されてて、この「妖花」というエピソードは毎回作られてるそうなんですが、段々とそこから太平洋戦争という印象が薄らいでいくんですね。

 

 

作る側も薄れていくし、見る側にも薄れてしまうという。

 

 

そういった時代性を考えながら、次は戦後直後に思春期を迎えていた「少国民」の世代が作ったアニメを紐解くとして、『巨人の星』『サイボーグ009』、そして『宇宙戦艦ヤマト』。

 

 

このヤマトの章はかなり面白く読みましたね。

 

 

菊の御紋がないとヤマトじゃない!と言った監督に逆ギレした松本零士が「そういう風に見えればいいんですよね!」と言ってできたのが、あの波動砲の発射口。

 

 

あれ、菊の御紋だったんだ、って。

 

 

それから『ガンダム』『ボトムズ』『マクロス』などのリアルロボットものSFアニメを通り、『火垂るの墓』『メガゾーン23』『紅の豚』と展開され、湾岸戦争や9・11などのテロによって戦争の形も変わり、『パトレイバー2』『攻殻機動隊』などの「国家対非国家」の戦争が描かれ。

 

 

そして反動で誕生した「萌えミリ」の部分にも触れていて『ガルパン』だとか自衛隊ものだとか。

 

 

最後に『風立ちぬ』と『この世界の片隅に』で締められてました。

 

 

こうして一息に振り返り、考察していくことでアニメにおける戦争への捉え方の変遷というのが本当によく分かり、単に楽しんでいたアニメもまた違った趣が出てきたりもして良かったですね。

 

 

馴染みのない作品も殆どないですし。

 

 

……ただ。

 

 

この本、今まで色々な本を読んできましたが、誤字脱字が断トツに多い

 

 

思い返しただけで、10箇所くらいあったんじゃないかってくらいで、読んでてもう引っ掛かりまくるんですよいちいち。

 

 

それがすごく残念。

 

 

引用した文章にも誤字脱字があり「原文まま」になってますが、当のこの本にも誤字脱字だらけっていうのがなんとも残念でございましたね。

 

 

内容は面白かっただけに。

 

 

いっそのこと、第2版も買って校正がされてるかどうか調べたい気もする。

 

 

そんなこんなで『アニメと戦争』堪能いたしました。

 

 

次は武田砂鉄の本でございます。

 

 

ではでは。