今回は日本一短いローカル私鉄の紀州鉄道についてご紹介したいと思います。
●紀州鉄道とは
和歌山県御坊市を走る紀州鉄道線5駅、2.7kmを結ぶ路線です。起点駅はJR紀勢本線(きのくに線)と連絡する御坊駅で終点は西御坊駅となっています。
それでは御坊駅へ行ってみます。
★御坊駅構内
JRのホームを間借りしています。JR線は1〜3番線を使用し紀州鉄道は0番線を使っています。ちなみにホームはJR所有物で線路は紀州鉄道のものとなっているそう。また紀州鉄道のダイヤはJR線の普通列車と連絡しています。
紀州鉄道はJRのホームを間借りしていますが、京都丹後鉄道や信楽高原鉄道などのように昔はJR(国鉄)の路線だったというものでもありません。
御坊駅は特急停車駅でもある駅ですが、御坊市街地からは少し外れた場所にあります。
そのようなことから、駅と街を結ぶため地元有志により1927年11月に鉄道敷設免許申請書を提出し1928年3月に鉄道敷設免許状が下付され12月に御坊臨港鉄道が設立します。
そして御坊駅〜御坊町駅(現在の紀伊御坊駅)間が1931年6月に開通し1934年8月に西御坊駅を経て日高川駅まで開通しました。現在はありませんが、当時は貨物運輸もあったそうですが1984年に国鉄の貨物合理化に伴って廃止となります。
1972年に東京にある不動産会社が鉄道会社の不動産部門という信用を得るなどのために御坊臨港鉄道を買収し翌年に現在まで続く紀州鉄道の名称に変更されます。
また1989年に西御坊駅〜日高川駅間が廃線となり現在の形になりました。
それでは紀州鉄道の車両をご紹介します。
現役の車両は1両編成2両あります。
★KR301 気動車
元信楽高原鐵道SKR300形SKR301号車で2015年に無償譲渡されました。
SKR(S=信楽 K=高原 R=鉄道(レールウェイ)からSを消してKR(K=紀州 R鉄道)として活躍しています。
★KR205 気動車
こちらも元信楽高原鐵道の車両として活躍したSKR200形SKR205号車です。Sを消してKRとしています。2017年に無償譲渡されました。
紀州鉄道線は単線で列車交換設備などはなく1編成の列車が行ったり来たりするだけの至ってシンプルな路線です。
閉塞方式はスタフ閉塞式となっています。
朝から晩まで1編成しか走りませんが、運用を変える日が月曜日と金曜日の朝10時〜11頃と決まっていて、その日時に狙って行けばKR205とKR301は両方が撮影できるので鉄道ファンの皆様は、月曜日または金曜日、早起きして行かれることをおすすめします。ちなみに写真を見てわかる通り、中の人は月曜日の朝に撮影行きましたよ!
※運用に関して状況によって急遽変更する場合がありますのでご注意ください。
駅数は5駅。
御坊⇄学門⇄紀伊御坊⇄市役所前⇄西御坊
このうち有人駅は紀伊御坊駅のみとなっています。
★紀伊御坊駅 駅舎
紀伊御坊駅は駅務室のほか紀州鉄道御坊支店、車両基地があり鉄道オリジナルグッズなども購入できるほか、過去に紀州鉄道で活躍した車両が2両付近に保存されています。
★キテツ2形 気動車
現在活躍している1両2編成が信楽高原鉄道から譲り受ける前に当路線で活躍していた車両です。こちらは北条鉄道から余剰となったフラワ1985形(フラワ1985-2)を譲り受けたものです。
なかなか面白い場所じゃないですか!
KR205 気動車は初代信楽高原鉄道の車両と同形式でキテツ2形も初代北条鉄道の車両であります。
信楽高原鉄道と北条鉄道はそれぞれ国鉄(現在のJR)でした。
しかし日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建法)により特定地方交通線と呼び輸送密度等の条件を勘案して廃止対象路線が選定され対象路線が、代替バスや第三セクター鉄道などに転換されます。関西では信楽高原鉄道と北条鉄道のほか智頭急行や京都丹後鉄道なども含まれます。
1980年〜90年代にかけ日本国有鉄道の特定地方交通線を転換するなどで相次いで開業した第三セクター鉄道(信楽高原鉄道や北条鉄道など)のほか輸送量の極端に少ない閑散区間を抱える鉄道会社等において多く採用されたのが富士重工業(現・SUBARU)が製造していた軽快気動車LE-Car(エルイーカー・Light Economy-Car)です。
LE-Carには種類がありました。
●LE-Car IIシリーズ(2軸車)
1984年〜1986年まで製造されました。
エンジンをバス用と同じものなほか、2軸車であるためレールバスと呼ばれることもありました。
なお先程紹介したキテツ2形(フラワ1985形)気動車がLE-Car IIシリーズに含まれます。
●LE-DCシリーズ
1987年に製造がはじまり車体工法がバス車両工法から軽量鉄道車両工法に変更されLE-Carに比べて屋根が深くなりました。
なお先程紹介したKR200形(SKR200形)とKR300形(SKR300形)気動車がLE-DCシリーズに含まれます。
このほかLE-DCを基にした普通気動車があり例を挙げると京都丹後鉄道のKTR700.800形や智頭急行のHOT3500形が含まれます。またそれぞれ鉄道会社初代の車両となります。
つまり関西の特定地方交通線全て初代車両は富士重工業が気動車LE-Carだったということになりますね。智頭急行初代車両(HOT3500形)と京都丹後鉄道初代車両(KTR700.800形)は現在も各路線で現役で活躍しています。なおKTR700.800形は新型車両への置き換えがはじまり姿を消しつつあります。そして信楽高原鉄道と北条鉄道の初代車両は紀州鉄道で見れます!
つまり上郡駅、福知山駅、紀伊御坊駅に行けば関西の特定地方交通線初代車両を全て見ることができるということです。特定地方交通線内で青春18切符は使えませんが、それぞれJR線が近くまで延びているのでそこまで撮影に行くのに苦労はしないと思います。
また紀伊御坊駅付近には
★キハ600形(603)気動車
キハ603が保存されています。
元大分交通耶馬渓線の車両でしたが同線が廃止され1975年に譲渡され長らく紀州鉄道線で活躍していましたが、2009年に引退し保存されています。
キハ603気動車が保存されている場所の最寄り駅は紀伊御坊駅ですが、ここから少し歩くとお隣の駅、学門駅に行けます。
★学門駅
いたって普通のローカル線にありそうな駅ですが少し特別な駅です。
★学問地蔵
ホーム端に学門地蔵がいます。これは何故なのか?
駅名が学問に通じることから学業御守として祈願に訪れる人がいらっしゃるそうです。駅名の由来は近隣に学校の門があるからということからだそうです。
当駅は無人駅なので入場券や乗車券がなくても駅構内に入場することができますが、当駅の入場券や学門駅と書かれた合格祈願のキーホルダーなどのグッズが先程紹介した紀伊御坊駅で販売されています。
なお学門駅は門、学問地蔵は問 です。お間違いなく!
また学門駅にこんな看板がありました。
通勤・通学は割安な定期券を御利用ください
うーん誰でも知ってる気がするけど笑笑
紀伊御坊駅内にあった紀州鉄道御坊支店。
それでは本店はどちらにあるのでしょうか?
答えは東京都中央区です。なんでやねん!?と思われた方多いでしょう。
先程少し紹介しましたが、1972年に東京にある不動産会社が鉄道会社の不動産部門という信用を得るなどのために御坊臨港鉄道を買収したんですよね。紀州鉄道は鉄道部門これは副業で本業は不動産業やホテル業なんだそうです。またそこからの補填で鉄道運営が続けられているそうです。
これ素晴らしいですよね!
こんなことありませんか?知らない場所に行ってどこで御飯を食べようか迷ったときに鉄道会社が管理するビルなら安心できると思い知らない飲食店だけど入店したとか!
また紀州鉄道線は数千万円の赤字で済んでいるらしく、この程度であれば看板代、広告費用と考えられるのだそうです。
鉄道事業というものはそれだけ信用できるものなのかということがよくわかります。
これからも愛され末長く、紀州鉄道が走り続けることを願っています。
ご覧いただきありがとうございました。
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