1997年11月、小櫃川で野宿をした帰り、仲間の鉄道ファンが「上総亀山駅の写真を撮りたい」と言い出し立ち寄った。

その駅舎には趣があり、駅名の看板の駅の字が「驛」でその古めかしさに驚いた。

線路を見て友人が「パンタグラフがないからディーゼルだね」とつぶやき、列車にはディーゼルというものがあることを初めて知った。

その古色蒼然とした駅舎はインパクトがあり、いつか、今度は列車に乗って来たい、そう思った。

 

それから月日が流れ、いつの間にか駅舎が新装されて、私がみた古色蒼然とした駅舎はもうなくなってしまった。

 

上総亀山駅への興味は、マンガ「鉄子の旅」の第一話で紹介もされて一旦復活もしたが、どうしても行きたいという衝動までには至らなかった。

 

そうこうしているうちに、以前から久留里線の存続が危ぶまれていたなか、去年の春、久留里線の営業状況が、「1万9110円かけて稼ぎは100円」であることが開示され、秋には検討会議で久留里駅から上総亀山駅の存続について議論された。

 

これは・・・・いよいよ久留里線の久留里駅~上総亀山駅の廃線が近いと強く感じた。

 

今、行かねば!!

そう決意した。

 

久留里線は千葉県にあるローカル線で、木更津駅から上総亀山駅まで繋ぐ単線の鉄道だ。

本来は木更津と大原を繋ぐ木原線(木更津の“木”と大原の“原”)を開業する予定で作られたが、予算的な困難で上総中野駅と上総亀山駅を接続できず、結局盲腸線の形で現在に至っている。

 

2024年1月20日、地元の駅を6時台に出発、千葉駅で内房線に乗り換えて一路木更津駅へ向かう。

そして木更津で7時25分の上総亀山駅に乗り換える。

本当はその前の6時25分始発に乗りたかったが、電車ではこの時間にたどり着けないのだ。

そしてその後の列車は13時1分まで上総亀山行がない。

 

とにかく地元駅から朝乗りついで上総亀山に行くのはこの列車しかない。

 

列車はドアを押しボタンで開閉するシステムのキハE130形

随分しっかりした車両だ。

 

【ブルー、グリーン、イエローを基調とした久留里線】

 

乗換え後すぐ発進、乗車人数はまずまず、15~6人くらいか。

久留里線ではSuicaが使用できないとの車内アナウンスされる。

 

景色はひなびているが、車窓には住宅も多い。

最初の駅、祇園駅で何人か下車する。

 

【車内の路線図 色あせている】

 

列車が進むと住宅は減っていき、田んぼが増えていく。

真冬なので、風景は冬枯れている。

そして横田駅に到着、ここは比較的大きな2面2線の駅で、比較的乗降者もいる。

 

【しっかりとした造りの駅舎 横田駅】

 

さらに進むと馬来田駅に到着。

久留里線は久留里街道と並走区間が多いが、久留里街道はかつて鴨川方面への磯釣りで頻繁に利用しており、街道からその趣がある馬来田駅が見えるので以前から興味があった。

(その後、高速道路:館山道が延伸したので、久留里街道の利用は激減した)

とうとう列車でこの駅に来ることになるとは!!

 

【馬来田駅 哀愁を誘う】

 

その後の景色は田んぼが多く、久留里街道を車で移動する景色とあまり変わらない。

そこはかとなく、運賃の精算はどうなるんだろうと思っていたが、途中車掌が2人(一人は見習いバッチをつけた)が来たので、Suicaで上総亀山までの精算をする。

 

そして久留里線最大の駅(多分)、久留里駅に到着。

ここには駅員もいるようで、乗降者も結構いる。

時間があれば久留里城観光なんかもいいが、今日はこの列車に乗り続けないと上総亀山駅まで行けないので、そのまま乗車する。

 

 

 

【久留里線のトレーダー分岐点(分岐してないが) 久留里駅】

 

ここから車窓がヤブだらけになり、秘境感が増していく。

途中、車窓からかなり下に亀山ダムが見える、ここの鉄道施設がいかに困難かわかる。

そしてとうとう終点の上総亀山駅に到着する。

ここまでの乗客は10人くらいか、私のような上総亀山駅に来たいだけの鉄道ファンばかりだ。


 

 

【とうとうやってきました、上総亀山駅】

 

 

【記憶にある駅舎とは違う これでも随分新しい感じの駅舎】

 

 

さて・・・

 

当初の予定では、ここから亀山ダム周辺を2時間弱探索し、鴨川駅と千葉駅を結ぶバスで帰ろうと思っていたが、駅周辺がもう観光として機能しておらず、亀山湖への道も鄙びていて、観光に不安を感じてしまった。

一緒に来た乗車客は、全員また折り返して木更津方面に行くようだ。

う~ん。

この列車に乗らないと、木更津方面の列車は14:27までない。

考えた末、結局8:48の折り返し列車にて帰宅することにした。

 

帰りの電車は時間帯のせいか、木更津駅に近づくほど乗車客は増え、ある程度地域住民の足になっていることを実感する。

 

 

かつて古色蒼然たる上総亀山駅に衝撃を受けてから30年弱、とうとうこの足で列車に乗りこの駅にたどり着くことができた。

ひとつの感慨があり、そしておそらく近い将来なくなってしまうこの駅に、惜別の感情を抱いた。