2022年の初頭、3年におよぶコロナ禍の生活の終わりがみえ、もう少しで以前のようなグローバル世界に戻ると思っていた。

しかし、衝撃的なロシアのウクライナ侵攻が始まり、その後台湾有事危機が叫ばれ、そして中東でハマスのテロとイスラエルの報復が起こり、グローバルな世界は大きく変容し、権威主義・独裁国家の台頭ですっかり後退してしまったように思う。

人権や環境といった先進国のスタンダードな価値観がこんなにも脆いものなのかと痛感している。

 

世界は先進国のものではない以上、もうカーボンネットゼロのような目標達成は無理なんだと思う。

すべてのものを電化しても、原発を持てない途上国が化石燃料で発電し、ソーラーパネル製造に中国の人権問題が関係する以上、CO2の排出は続く。

 

IPCCの議長であるジム・スキーがシュピーゲル誌のインタビューで「1.5℃目標が実現できなくても世界は終わらない」と発言したことは、現在のCO2などのGHG削減目標が、あまりにも今の人類にとって高すぎた目標だったことを証明している。

 

今、インフレでこれだけ日本国民が生活苦を訴えてるのに、国民が合意して脱炭素のための炭素税なんか負担できるとも思えないし、電力料金のさらなる上昇を受け入れるとも思えない。

先進国の人間にとっても、急速なCO2削減に対応するコストに耐えられないのだ。いわんや途上国の人々にとってはなおさらだ。

 

ある程度の気温上昇を受け入れながら、増えていく自然災害へは国土のレジリエンスで対応していくのが最適解だと思う。

実際、日本では台風被害が増大しているが、被害は甚大でもかつての伊勢湾台風のような5000人規模の死者を出すこともないし、真夏日の増加もエアコンで乗り切って、熱中症被害者はいるものの生活を送っている。

建築技術やエアコンで自然災害に対処しており、こうした手法で温暖化に対応していくことがリーズナブルなんだと思う。

 

 

そして、ここにきて、いよいよ世界中のガソリン車がBEV(バッテリーEV)に置き換わることは、少なくても急速には起きないと確信するようになった。

今まではカーボンニュートラルへのストーリーとして、化石燃料(ガソリン)を使用する従来の車からの置き換えと、合わせて発電のカーボンニュートラル化も必要だった。

 

しかし、原子力発電にはアレルギーを示す国があり普及は不均衡で、またそもそも途上国では原子力発電という手段を持つことができない。

再生可能エネルギーは限界があり、アメリカなどは先進国はサプライチェーンの人権尊重から、中国製のパネルが使いにくく、洋上風力など他の再生可能エネルギーも問題が山積している。

 

結局、日本では化石燃料で発電しているので、製造過程も含めるとBEVは10万キロ走行するまでHV(ハイブリッド車)よりCO2排出量が多い。

原発や再生エネルギーに頼れない途上国ならなおさらだ。

 

BEVには静粛性や、災害時のバッテリーの役割などのメリットもあるが、最大のデメリットはバッテリーが高くて値段が下がらないことだ。

そして、バッテリーはすべからく劣化する。

バッテリー価格が下がらなければ、5~7年毎にバッテリーを交換していくのはBEVにとって大変な価格的ディスアドバンテージになる。

 

 

トヨタも散々BEV化の遅れを指摘されていたが、のらりくらりと回答をかわし、やってる感を出す程度に水素車やBEVをやっていた。

しかし、結局BEVの普及は一定以上は難しいことが見えてきて、HV車をコア事業とするトヨタが優勢になっている。

今年の決算もトヨタは絶好調なのだ(円安要素も大きいが)。

BEVの市場はテスラやBYDが占有し、その他のガソリン車市場でトヨタがトップランナーになる、そういった将来が見えている。

 

心配なのはホンダで、BEV化方針をかなり進めて八千代工業も売ってしまった。

 

未来は誰にもわからないが、こと自動車産業においてはトヨタの戦略はしたたかであり、成功の可能性が高いと感じている。