ゴールデンウィークに入り、すっかり薄着でも良い気候となって、うららかな日が続いている。

緊急事態宣言中でもあり、外出は控えていたが、1回くらい登山に行きたい。

そこで雲取山に登ろうとしたら、東京都の緊急事態宣言を受けて、鴨沢の駐車場が閉鎖されるらしく、車で登山口に行けないようだ。

ならば緊急事態宣言外の山梨県の金峰山を登る計画に変更した。

 

天気サイト「てんくら」では、金峰山の天気は2000mでマイナス1~2℃、風速10~22mで登山不適とある。

しかし、「てんくら」の予報が外れるケースもあるようだ。

迷いながらも登山の準備を進め、あまりにも陽気がいいので「てんくら」のことはあまり気にせず、とにかく登山口に行ってみることにした。

 

5月3日、午前4時に瑞牆山荘駐車場に到着、車載の気温計では外気は1℃で、ちょっと怖くなる。

駐車場は数台スペースがあり、駐車して車外に出ると明確に寒い。

薄いフリースのシャミースジャケットの上にソフトシェルを着て、4時27分いざ登山開始する。

この時間はもう薄明るく、ヘッドランプは不要だ。

しかし、登山口が広すぎて、しばらく登山道を外れて登坂する。

 

【早朝の駐車場の様子】

 

最近の日帰り登山では、おにぎり2個とサンドイッチを持っていき、最初の休憩時におにぎりを1個食べるのがルーチンになっている。

しかし、富士見平手前で、折角来る途中に購入したおにぎりとサンドイッチをバックパックに入れ忘れて、車の助手席に置いてきてしまったことに気づいて落胆する。

 

そのうち見晴台に出て、瑞牆山が良く見えて綺麗、なんともな奇景である。

そして富士見平小屋に到着、連休のせいもあり何張かテントがあり、トイレには行列ができていた。

ここから、瑞牆山を目指すことも考えたが、やはり当初の予定どおり金峰山ルートを進む。

 

【明け方の瑞牆山 いつか登りたい】

 

 

【富士見平小屋、テン場の様子】

 

しばらくはそれほどきつくない登り、とぼとぼと歩いていると大日小屋が見えてくる。

大日小屋は避難小屋で、トイレ使用を考えるも、ルートからかなり下るので断念する。

ここのテント場にも2張ほどテントがあった。

 

【大日小屋】

 

さらに進み、大日岩で最初の休憩をする。ここまでほどんど登山者と会わなかった。

本当ならば、おにぎりと味噌汁の休憩をしたかったが、おにぎりを車中に忘れたので、チョコレートと野菜の味噌汁で食事するもなんか変な感じ。

 

【大日岩】

 

ここから登山道を進むにつれ、徐々に氷が多くなり、傾斜もきつくなって登り辛い。

危険なので、チェーンスパイクを装着し、トレックポールを取り出して氷を踏みしめて登坂する。

氷がツルツルで、本当に登るのが辛い箇所をパスすると、いきなり視界が広がる、千代の吹上という場所だ。

千代の吹上に到着すると絶景も、凄い強風でものすごく寒い。

ここから森林限界以上で、この先の登山道は氷と岩を渡るも、なにより寒さが酷い。

外気は「てんくら」どおりならマイナス2~3℃、風速は10~20mくらいなのか。

風速1mにつき体感温度はマイナス1℃なので、これは相当厳しい環境だ。

耳が寒さで激痛、手袋してても手が冷たくて痛い。

装備が2回りは軽装で、バラクラマかニット帽、もっと暖かい手袋、アウターシェルが必要だと痛感した。

 

【千代の吹上からの風景】

 

寒さと強風でへこたれそうになり、登頂断念も考え始める。

それでもなんとか前に進んでいると、いきなり視野が明るくなる・・・・強風で脱着式の偏光グラスが吹っ飛んだのだ。

帽子はゴムで締められる軽いキャップ(Blackdiamondディスタンスハット)を被ってきたが、強風で飛ばされそうになり、終始手で抑えなくてはならない。

 

他の登山者は、ハードシェルやニット帽を装備している、さすが。

本当に辛い、強風で全身が痛いほど寒い。

冷静に考えれば、この時レインウエアを装着すれば良かったのだが、半ばパニックだったので登山を進めるか止めるかしか考えられなかった。

 

頭の中で登頂断念がチラつくが、頂上の奇岩、五丈岩が見えるので、気力を振り絞って登坂する。

写真を撮るとき手袋を脱ぐので指がものすごく痛い。

 

【仰ぎ見る五丈岩】

 

そして8時9分、なんとか五丈岩に到着する。少し強風がしのげるのでホッとする。

てっきり五丈岩が頂上と思い込んでいて、ここから5分で行ける頂上に行き忘れてしまった。

でも、ものすごい強風だが、天気は良くて、八ヶ岳も富士山も綺麗だ。

 

 

【山頂付近の様子】

 

ただ、あまりに寒く、心が参ってしまい、さっさと下山開始する。

岩稜と氷の稜線を猛スピードで下山、鎖場もスルスルとパスして千代の吹上まで到着、これから先は強風には当たらないので安堵する。

しかし、登攀時に凍ってツルツルだった登山道は下山時はさらに滑り、転倒して一回転半し、他の登山者から心配されてしまった。

 

【下山時の稜線】

 

なんとか大日小屋前まで下ってきて装備を点検し、大日岩で行き同様少し休んで水を飲みチョコレートを食べる。

緊張のせいかあまり空腹を感じないが、ここまでエネルギー摂取不足気味だ。

関西なまりの登山夫婦にこの先の様子を聞かれたので、稜線が強風なこと、登山道が凍ってることを教える。

この頃から、登ってくる登山客が増え、他の登山者にもこの先の様子聞かれ、同様のことを伝える。

 

徐々に登山道の氷が少なくなった頃、滑って尾てい骨を強打する。

ものすごく痛くて悶絶することしばし、でも歩行はなんとかできそうだ。

 

富士見平小屋で今日初めてのトイレ。

小屋で食事も考えるがもうすぐゴールなのでスルーして下山する。

 

瑞牆山が見える見晴台は、朝よりも日が高く綺麗な風景で、見物の登山者が多く、頼まれて写真を撮ってあげる。

登ってくる登山者の多くは大きなバックパックで、おそらく富士見平でテントを張るのだろう。

 

【ふたたび瑞牆山】

 

かなり登山者が増えてきて、登山カップルの後をついて下山したので道に迷わず、11時27分に登山口に到着できた。

瑞牆山荘駐車場は満車で、路肩も満車状態でびっくり。

 

車の中で登山靴を脱ぎ、まずはアマノフーズのクリームシチューをつくり、車中に置き忘れたおにぎりとサンドイッチを食べる。

美味しい、できれば山で食べたかったが・・・。

そして道の両脇が路肩駐車で満杯のクリスタルラインを進み家路へと急ぐ。

 

しかし、稜線はものすごく寒かったが、下界は風もなく穏やか、本当に別世界だ。

今回の登山は失敗続きだった。

天気予報を確認したのに、十分な対策を取らず軽装にて登山したこと。

エネルギー元である食料を忘れたこと。

これらは本当に危険なことで、今後繰り返してはならないと痛感する。

そして、頂上の場所を失念して、ピークハントできなかったこと。

強風、寒さで動転していたのだろう。

でも、これはまたいつの日か再挑戦すれば良いことだ。

 

正直辛い登山だった。

 

須玉インターチェンジに向かって運転していると、あまりにも美しい八ヶ岳が見えてくる。

本当にキレイ、こんなの見ちゃったらまた登山したくなっちゃう。