月山もも氏の「ひとり酒 ひとり温泉 ひとり山」を読んだ。
氏の独特の「ひとり」を愛する感覚はなかなか読ませるのだが、この本はレクチャー本やエッセイ本にとどまらず、きちんと最初から最後まで「物語」として構成されているのは秀逸で唸らせるものがあった。
文体も優しく、世界観に引き込ませるものがあるので、その感覚が合うのであればとても面白い本として読めるだろう。
さて、この本自体の感想は一旦置いておいて、読んで考えさせられた箇所がある。
それは、この著者、月山もも氏が、「登山に専念したいので婚活をやめた」という経緯のところだ。
彼女は登山が趣味であり、同じ登山趣味の男性と結婚できればと婚活するのだが、それがうまくいかない。
登山趣味を持った惹かれる男性がいても、登山の指向が違ったり(百名山登山にこだわる 本格的すぎる 登山への熱意が薄い)して、結局自分との相性もあきらめてしまうのだ。
しかし、考えるに、自分の少ない恋愛経験の中で、恋人と同じ趣味を持ったことなど果たしてあっただろうか。
確かに世間的には、恋人同士が共通の好きな野球やサッカーチームを一緒に応援したり、旅行が趣味なら一緒に出掛けたりしたらそれは楽しいだろう。
しかし、自分の場合、趣味が釣りや野宿(含む登山)、車の運転などで、まずこの分野で恋人と趣味が共通になることはほとんどない。
もし、宝塚歌劇団鑑賞が趣味の女性が恋人になれば、きっと一緒に観劇に行くだろう。
その場合、恋人と一緒に宝塚を楽しむことはあるだろうが、自分にとって宝塚鑑賞が一生の趣味になるとも思わない。
趣味が違ったって、恋人なら会っているだけで楽しい。
なので、婚活で趣味にシバリをつけたら、ものすごく候補が限られてしまうのだ。
というか、齢を重ねて人生の円熟期に入り、理解したことがある。
それは、人生を一緒に歩む伴侶とは、趣味は別な方が良いということだ。
年を取っても夫婦で一緒に同じ趣味を楽しむ人生はスバラシイというのは幻想にすぎない。
どんなに仲の良い人同士でも、一緒にいる時間が増えれば増えるほど、うまくいかなくなることが多いからだ。
よく旦那が定年退職して毎日家にいるのが嫌な奥さんの話を聞くだろうが、その気持ちもわかるだろう。
夜も昼も毎日一緒にいるというのは、お互いにとって良くない環境だからだ。
だから、夫婦はお互い別々の趣味があった方がいい。
お互いに一緒に人生を歩むパートナーだからこそ、その相手とは距離を置ける別々の趣味があるべきなのだ。
月山もも氏の著書を読んで、そんなことに気づいたのでありました。