[スミソニアン航空宇宙博物館別館 NASM. Steven F. Udvar-Hazy Center]震電

14390 Air and Space Museum Parkway, Chantilly, Virginia 20151 U.S.A.

 

ワシントン・ダレス空港に隣接するスミソニアン航空宇宙博物館別館 NASM. Steven F. Udvar-Hazy Center には、戦後、占領地日本から研究のために輸送したもの等、日本陸海軍の航空機の大半修復して展示されている。

 

月光の隣に展示されていた「桜花」が何処かに去り、

桜花がいた所に「震電」が来た!

 

胴体と水平小翼のみ、公開中。

後部(エンジンカウル)とプロペラはなし。

 

18試局地戦闘機「震電」J7W

 

空技廠のエンジニアパイロットである鶴野正敬大尉が、機首の空気抵抗を低減させ、さらなる速度向上のために、胴体後部にエンジンを配置する前翼型戦闘機(高速高高度戦闘機)として設計・試作したのが小型滑空機MXY-6という小型滑空機。昭和19年1月に行われた試験飛行に成功(木更津基地)。

 

海軍航空本部が空技廠に発注すれば略符号がJ7Yになるはずだったが、昭和19年5月に(開発生産に余裕があった中堅航空機メーカーの)九州飛行機株式会社に発注したため、略符号はJ7W設計となる。設計と試作は九州飛行機と九州飛行機に出向した鶴野大尉が行った。

 

・前翼型(水平尾翼を廃し主翼の前に水平小翼を設置/カナード機)

・エンジンを胴体の後半部に後ろ向きに取り付けた。

・三菱重工製の空冷複列星型18気筒「ハ43-42型」1,660馬力、750km/h

・プロペラを尾部に取り付けたため、三輪式の着陸装置を採用。

・プロペラは6翅でドイツのVDM Metals製品(量産機は4翅の予定)

・補助車輪は各垂直尾翼下部にあり。

・機首に3度上向きで配置された5式30ミリ固定機銃×4(1分間に450発の弾丸を発射)は、機体前部にプロペラがないため制約無く撃てる。

 

 

高速高高度戦闘機への期待が大きかったのか、震電は終戦まで試作を続けた。エンジンを開発していた三菱重工名古屋工場が壊滅的な空襲を受けたり、九州飛行機の工場疎開などもあり、1号機の完成は昭和20年6月と開発は大幅な遅延になってしまった。九州飛行機は2号機も納入している。

 

1号機は昭和20年7月の完工式後、鶴野大尉自身による滑走試験が行われた。機首を上げ過ぎたために、プロペラ端が地面に接触して先端が曲がり失敗。8月3日(九州飛行機所属のテストパイロット操縦で初飛行成功。試験飛行は6日と8日と計3回(45分間)行ったが、いずれも脚を出したままの状態、だったようだ。発動機に故障が発生し三菱重工から部品を取り寄せているうちに終戦となった、らしい。

 

終戦時、海軍の命令で、九州飛行機本社にあった設計図や資料、試作機2号・3号機、部品類が焼却されたが1号機は格納庫に保管されていた。米海軍情報部の専門家は1号機を分解し、分工場に保管されていた資料とともに船便でアメリカ本土へ送った(昭和20年10月)。

 

昭和20年12月、同じくアメリカに送られた日本軍航空機145機とともにテストと評価を行った。なおアメリカで震電1号機を飛行した記録は無い。

 

 

 

 

Kyushu J7W1 Shinden (Magnificent Lightning)

Created:April 10, 2019

 

Japan's J7W1 Shinden was the only World War II aircraft of canard configuration that any combatant ordered into production. Canard is a French term. The original meaning is obscure but aircraft designers used it then, as now, to describe an aircraft with the main wing mounted at the rear of the fuselage and a smaller wing fixed to the front. In the United States, the Curtiss-Wright company and the Army Air Corps also experimented with a canard aircraft, the Curtiss XP-55 Ascender (see NASM collection). However, the J7W1 was more advanced. Though innovative and unusual, neither airplane progressed past the early prototype stage.

 

 

風防正面の防弾ガラス厚は70mm

 

水平小翼!

 

*

レプリカ

映画『ゴジラ-1.0』の撮影のために制作された実物大のレプリカ。陸軍の、大刀洗陸軍飛行場跡地につくられた大刀洗平和記念館に常設展示されている。筑前町と製作会社による極秘売買の交渉により、筑前町は1,100万円で購入したそうだ(運送と設置費込みで約2,500万円)。私が行った平日、大勢の入館者で賑わっていた。←Tシャツも買っちゃった。

 

実機の震電には射出装置は付いていない。

搭乗員が脱出を要する際、プロペラの基軸を爆破。プロペラ落下後に脱出する(パラシュート?)

 

 

終わり

 

 

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