[豊川海軍工廠]②

愛知県豊川市穂ノ原3-13-2(平和公園)

 

 

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豊川海軍工廠平和公園

2018年6月、かつての火工部(北側の一画/3ヘクタール)を整備して開園した。敷地内には第1火薬庫、第3信管置場、街路灯、露天型の小型防空壕が現存している。

 

 

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火工部

第1~第4信管工場、弾丸工場、第1・第2弾莢工場、機械工場、木工工場、第1・第2装填工場、火薬工場、分析工場などがあった。

 

火薬庫の周囲は爆発被害を最小限にするために土塁で囲った。横須賀海軍建設部が錢高組や鴻池組などを契約を結び工事を開始した。一方、横須賀海軍建設部は土塁造りに囚人などを動員して大規模に行われた。

 

豊川海軍工廠の主力は火工部(薬莢・弾丸・火薬)19工場で、敷地・人数共々全体の6割以上を占めていた。昭和19年秋頃から空襲が増してくると、敷地内に簡易的な小型防空壕が掘られた。

 

工廠の南西に位置する地(ここも火工部)は「名古屋大学太陽地球科学研究所の敷地」になっており、敷地内に火工部の一部施設がほぼ手つかずのまま現存している。

 

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第1火薬庫

鉄筋コンクリート・ラーメン構造の平屋建。火薬の保管のために使用された施設なので、構造体を覆い隠すように盛り土をしている。盛り土をすることで火薬庫の急激な温度変化を抑えることが出来る。

 

 

 

 

斜面に沿って側溝が掘られている。雨水はこの側溝を流れ、地面の側溝に吸い込まれる仕組み。

 

トラックを横付けさせ搬入・搬出するためのプラットホームも現存

 

第1火薬庫には1日4回実施される「豊川海軍工廠語り継ぎボランティアによる案内ガイド」で、内部に入ることが出来る

 

出典:豊川市「旧第一火薬庫について」

 

 

盛土基底部で計測

東西47.75m×南北37.40mで、直線の東西通路の3つの部屋が並んでいる。

まず間口6.87m×奥行2.14mの前室

その奥に間口8.21m×奥行7.87mの本室がある。

 

前室も本室も内側に板壁を設けて二重壁構造になっている。コンクリート壁と板壁の間の中空層が換気調整の役目を果たしている。具体的には板壁で湿度調節を行い、この中間層には上部へ空気を流す換気塔、下部に盛土基底部へ通じる通気口がある。

 

というわけで、ガイドツアーに参加してみた(・∀・)

 

整然と立ち並ぶ火薬庫、東端の第1火薬庫は3室を有し最も大きいとのこと。ちなみに第2火薬庫は1室のみだ。なお、火薬庫の通路は隣の火薬庫と互い違いに配置されている(爆発した際、類災が及ばないように)。

 

通路の出入口に何らかの照明具があったようだ。

 

 

 

トラックを横付けさせ搬入・搬出するためのプラットホーム

 

 

3室の出入口は地上(通路)より約1メートル程高い位置にあり、プラットホーム(木製足場)から入る。トラックを横付けさせ搬入・搬出、床下の通気孔の関係でこの高さにしたのだろう。プラットホームは往時のオリジナル!

 

プラットホームの下をみたら、床下の通気孔をみつけた。

 

 

壁にも通気孔あり

 

 

2室か解放されていた。

基本構造は全室同じとのこと。

 

出入口は鉄製扉で観音開き

 

 

 

 

 

まず間口6.87m×奥行2.14mの前室から

 

 

前室の換気孔

この換気孔は火薬庫周囲の空間(廻廊)の換気孔

 

 

 

そして本室

間口8.21m×奥行7.87m

 

1部屋目は完全復元

2部屋目は構造がわかるように復元されている。

 

 

 

前室も本室も内側に板壁を設けて二重壁構造になっている。コンクリート壁と板壁の間の中空層が換気調整の役目を果たしている。

 

 

 

 

 

本室の内側の木の構造部分には、木製の引き戸があった(二重扉)

 

本室の外側の扉は鉄製で、ダイヤル式の鍵が取り付けられている

 

 

 

 

 

 

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配電盤・水道管など

配電盤は旧薬筒乾燥場にあったものを公園整備にあわせて移設。

水道管は公園整備工事の不発弾処理で見つかったもの。制水弁には「水昭和14年」、「水昭和17年」の文字が刻印されている。絶縁体が大理石!

 

 

 

 

 

 

 

 

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外観をみる

 

側溝がきっちりつくられている

 

 

 

 

 

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チラッとみえた第2火薬庫

こちらも3室の火薬庫。

名古屋大学の敷地内、盛り土に木が生えて小山にみえる(T_T)

 

 

 

 

 

つづく

 

参考資料

桜ヶ丘ミュージアム『豊川海軍工廠資料集』

水谷眞理『豊川海軍工廠の記録―陸に沈んだ兵器工場』

豊川市平和都市推進協議会『ガイドブック豊川海軍工廠』

豊川市教育委員会『豊川海軍工廠近代遺産調査報告書』(第1分冊本編編)

豊川市平和都市推進協議会『図面ガイドブック豊川海軍工廠』

 

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