[佐世保警備隊](25)皆同防空砲台

長崎県大村市皆同町480-2付近

 

竣工:1943年(昭和18年)4月

備砲:40口径3年式8糎高角砲×4門

担当:佐世保(海軍)警備隊

 

引用:新幹線文化財調査事務所調査報告書 第9集

九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)建設に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書IX今富城跡2017長崎県教育委員会, P-28

 

平地が大半を閉める大村市だが、当時の区割りでは唯一の丘にあった今富城跡に設営したのが皆同高角砲台(陸軍用語では高射砲台)である。南には福重飛行場(竹松秘匿航空基地)=上記地図では臨時飛行場と書かれている、がある。

 

大村航空基地と第21海軍航空廠を守るため、福重町の黄金山古墳付近の福重砲台、上諏訪町の諏訪砲台、大村湾内の箕島の箕島砲台、皆同砲台が建設された。皆同高角砲台は、扇状に配置された高角砲4門の他、指揮所、弾薬庫、観測所、96式110糎探照灯、発電所、待機所など、ほぼ全ての設備が現存する。

 

皆同高角砲台の高角砲2門と探照灯1基は、昭和17年3月に長崎の稲佐山防空砲台から皆同に移設させたもの、とのこと。さらに2年後の昭和19年7月には田島岳高角砲台(佐世保市)の高角砲2門を皆同に移設した。

 

だが、時代遅れの8糎高角砲では高々度を飛行する敵機(B-29など)には対応できなかったようだ。

 

(引用:新幹線文化財調査事務所調査報告書 第9集

九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)建設に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書IX今富城跡2017長崎県教育委員会, P-33)

 

皆同防空砲台があるこの丘、すさまじく荒れ果てていて、多方向に倒れている竹藪が邪魔している。砲側弾薬置場など土砂と竹藪に埋もれている。何気に急斜面だったりするし、干からびた蜘蛛の巣も沢山ある。

 

砲台内にある民家の方が言うには「探すのは大変だよぉ!」だった。実際大変で、なんだかよくわからないうちに捜索は終了した感じになってしまった。なわけで写真と設備名は一致していないものもありそう(すいません)。

 

*

アンテナ基地から荒廃した雑木林に潜入すると、唐突に換気塔が出てくる。換気塔は1基のみ。これが用具庫なのか弾薬庫なのかよくわからない。

 

急斜面を少し下りると坑口があった。

 

 

潜入(^o^)

 

 

光が見える。

本室を挟んで出入口は2カ所あるようだ。うむうむ。

 

部屋は1室のみ、大きくはない。

 

部屋の奥の換気口

 

この管が前出の換気塔につながる。部屋1に換気口1のようだ。

 

では退出!

本室の出入口は中央より横に配置している。

 

もうひとつの出入口から出てみる。

 

坑口前には竹が林立、掻き分け力業で脱出。

デブには厳しい遺構である・・・

 

では、砲台(砲床)に向かう。

 

超多角形のコンクリート塀みたいなのがある。

これが指揮所なんだろうか?

 

コンクリートの厚さは50センチくらい。

 

 

指揮所っぽいところから砲座をみつけに移動する。

程なく土塁のような小山があり砲側弾薬置場のようなものがみえた。

 

 

どうやらここが40口径3年式8糎高角砲の砲座があったところ。

 

たぶんこれが砲床

 

形あるものを探すとしよう。

 

少し横移動するとやや大きめの砲側弾薬置場を発見。

 

平らの円形窪地は砲床っぽい。

 

 

「やや大きめの砲側弾薬置場」と思ったが、兵員待避壕を兼ねた待機所っぽい。

 

潜入する。

 

 

 

 

 

 

(兵員待避壕を兼ねた待機所を裏からみてみる)

 

高角砲の砲座群から脱出。少し下ってみると綺麗な石垣がある。

これに沿って歩いてみよう、何かがあるはず!

 

 

道は急激に下っていく。

 

 

どうやらこの辺りが丘のピークっぽいので、ここいらに観測所か探照灯があるはず。

 

少し戻って適当に直登してみる。

あった!何かのコンクリート製土台が。

 

 

土台に上がってみる。

 

探照灯台座ですな。

96式110糎探照灯の台座

 

草むしりをして土砂を掃き出すと全容がわかった。

 

 

 

 

 

 

戻ろう。

 

そして探照灯があった丘を振り返ってみる。

 

このまま適当に歩くと、2本の換気塔が見えた。

 

 

 

換気塔をみながら下ると、「大変だよぉ」とアドバイスをしてくださった方のお宅の裏だった。

 

 

潜入する(^o^)

 

 

構造は前出の地下壕(弾薬庫か用具庫)と同じにみえる。本室を挟んで左右に出入口あり。

 

 

 

 

脱出する。

本室の出入口は中央に配置。

 

 

もうひとつの出入口からでてみよう。

 

ありゃ、竹藪が立ちはだかる。

戻ろう。

 

 

 

以上、おしまい。

 

 

* * *

佐世保海軍警備隊(防空砲台)

佐世保軍港防衛のために建設された海軍の砲台群。第一次世界大戦の勃発により初めて建設された。航空機や潜水艦の登場、火砲や聴音機やレーダーなど兵器類の著しい技術の進展に合わせてその装備も移り変わっていく。

 

佐世保海軍防備隊の砲台群を構成するのは48施設、と言われる。

いづれの砲台も資料に出てくるのは昭和16年12月前後。砲台の詳細な資料はほぼなく、引渡目録や戦時日誌を読み込んで判断する。

 

高射砲陣地と防空砲台、特設見張所や防備衛所といえば第一人者のファーザー氏

ファーザーのHP

資料が限られている中、ファーザー氏のHPは勉強にもなりますし、探索意欲が湧いてきます。勝手に慕っております(^o^)いつもありがとうございます!

 

(1)田島岳防空機銃砲台・特設見張所:長崎県佐世保市小野町(弓張岳)

(2)庵之浦防空砲台:佐世保市庵浦町(つくも苑の西?)

(3)猫山防空砲台:佐世保市黒髭町(猫山ダムの東?)

(4)高島番岳防空砲台:佐世保市高島町(高島)

(5)寄船防空砲台:

(6)大崎防空砲台:佐世保市針尾北町(大崎公園)

(7)盲目原防空砲台:佐世保市鹿町(目暗ヶ原遺跡付近?)

(8)虚空蔵山防空砲台:西海市西海町太田和郷(長崎県立西彼青年の家)

(9)石盛山防空砲台:佐世保市知見寺町(石盛山/佐世保カンツリー倶楽部?)

(10)前畑防空砲台:佐世保市前畑町

(11)八久保防空砲台

(12)八丈岳防空砲台

(13)天神岳防空砲台

(14)八天岳防空砲台:佐世保市里美町

(15)高岳防空砲台:佐世保市大潟町(陸上自衛隊相浦駐屯地の西隣)

(16)黒島番岳防空砲台・特設見張所:佐世保市黒島町(黒島)

(17)百合岳防空砲台:

(18)稲佐山防空砲台:廃止

(19)東ノ浦防空砲台:山ごと消滅(長崎県立大村養護学校付近)

(20)福重(今福)防空砲台:(大村基地から北へ4キロ)

(21)箕島防空砲台:長崎空港滑走路?

(22)諏訪防空砲台:上諏訪公民館の西側?

(23)瀬戸防空砲台:千綿宿の北東側の丘陵上?

(24)諫早防空砲台:消滅。諫早市立みはる台小学校の北西の尾根上?

(25)皆同防空砲台:大村基地から北北東へ4km程の位置にある皆同町の丘の上

(26)錐崎防空砲台:消滅?針尾ICの南東側に突き出た岬の西側

(27)古里防空砲台:消滅?針尾ICの南東側に突き出た岬の西側

(28)三越防空砲台:三越トンネルの真上付近

(29)川棚防空砲台:消滅?川棚駅北東の小山

(30)日野防空砲台:相浦にあった海兵団内?

(31)左石防空砲台:佐世保市街の北、詳細不明

(32)野口防空砲台:引渡目録には記載なし、未備砲?