日常で考える陰陽と季節の養生② | 鍼灸師 Shuhei Higashi 鍼灸師のブログ

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鍼灸師 鍼灸の勉強、言葉、英語学習など備忘録的に使用予定です。

前回は日常の中を取り巻く陰陽、特にバランスについて記事を書きました。今回は、日本の四季に対して養生をどのように鍼灸師が捉えているのかまとめてみたいと思います。

 

〇養生とは?

養生という言葉は中国で生まれ要約すると、人間の体の状態を整えること、健康を増進すること、病気の自然治癒を促すこととされます。当時の中国では戦争が相次ぎ世が乱れ、次第に世俗的な生活を逃れる生活を目指す考えが流行していた時代で、そこから規則正しい生活と節度ある食事を重視した養生という考えが生まれました。それから貝原益軒という人物が日本の生活に即した養生法を「養生訓」という書物に記し、運動・栄養・休息が過不足なく生活すること、生活に対する心構えなどを説きました。

 

〇3つの気

東洋思想では「天人合一」という考え方があります。人間も自然界の一部であり、互いに影響を及ぼしあうというものです。生活の中には様々な人がいます。様々な思いの中で無理を続けると体調を崩すこともあります。自然に合わせてに生活すること、川の流れのように力を入れずに生活することでいつまでも元気でいられるということです。では、自然に合わせるとはどういうことでしょうか?ここで三つの気が出てきます。

 天の気

 地の気

 人の気

この三つが調和することであります。

・天の気

これは四季や天候などの外的な要因です。寒さの中薄着をして風邪をひく、雨の前の日に頭痛がするなどがこれにあたります。

・地の気

これは、大地からもらう気のことですが、環境とイメージする方がわかりやすいかと思います。人間関係や居住環境などが当たります。

・人の気

これは、人が持つ正気を指します。免疫力や体力と言い換えてもいいかもしれません。過剰な労働や安逸(楽すること)、欲望は正気を消耗させます。

 

〇季節に合わせて生活する

中医学最古の書物「黄帝内経」には四季に合わせた生活の心構えが書かれています。2000年以上前の書物ですが、現在でも通用する部分は十分にありますので、それを紹介していきます。

 

 ・春の養生法

春は新しいものが芽吹いていく季節です。春の寒さに耐え、自然の万物が芽を出すエネルギーに満ちた季節です。

就寝は多少遅くなってもよいが、早めに起きて散歩をしながら春の陽気を感じるとよいでしょう。服装もゆったりしたものを選び体の動きを妨げないようにということです。心構えは「生而勿殺 予而勿奪 賞而勿罰」と言われます。生かして殺すことなかれ、与えて奪うことなかれ、証して罰することなかれ。意訳すると何事も妨げることなく寛大に見守り、自由闊達にさせるということです。

 

 ・夏の養生法

夏は草木が重なり合うように生える季節で、万物が一際成長する季節にあたります。春に芽生えたものが天気の気を吸収するイメージです。多少の夜更かしは大丈夫ですが、朝は早めに起きることです。暑いからといってエアコンのきいた部屋に閉じこもるのではなく、適度に体を動かすとよいでしょう。そうすることで汗をかき体の内外の気を交換することが出来ます。そして気を安らかに保ち夏の陽気に負けないようにします。夏は五臓でいうと心にあたりますが、夏の時期に汗をかいて体内の邪を発散できずにいると毒となり秋に咳が止まらくなったり冬に風邪をひいたりします。

 

 ・秋の養生法

日中は暑いが夕方になると涼しくなるなどの変化があります。秋に収穫された植物は冬に向けて蓄えられていきます。夏に青々としていた草葉も次第に枯れて紅葉になっていきます。秋の夜長という言葉がありますが、この時期は早寝早起きが良いとされます。気持ちを安寧に保ち過ごすことです。秋になると物悲しくなったり、気持ちが落ち込んだりすることがありますが、穏やかで寛大な心を保ち、あまり気を発散させずにエネルギーを蓄えておくことが秋の養生法です。

 

 ・冬の養生法

冬は、エネルギーを閉じ込めておくイメージです。雪が降り水も氷る季節では身を引き締め、身体の陽気を傷つけないようにじっと我慢する時期です。夜も早く眠り朝は日の光を待っておきましょう。この時期は欲望をぐっと抑え、発散することは避けましょう。重労働や激しい運動で大汗をかいたりして体の正気を消耗しない。これが冬の養生法です。

 

同様に一日の中でも始まりの朝、陽気が強い昼、昼から夜に変わる夕方、月が出て気温の下がる夜と陰陽が絶えず変わることを陰陽説では解きます。自分のやりたいことや成すことと、自然の営みは必ずしも一致しないこと。一致しないことを理解したうえで、時と機会を逃さないことが必要なのだと教えてくれています。