無気力な受験生へ親の声掛け!心療内科医が教えるNGワードとは?【受験専門の心療内科】
今日のテーマは、入試に失敗した心の傷を抱える浪人生や、成績が伸び悩んで無気力に陥っている受験生に対して、親はどんな言葉をかけてあげるべきかについてです。
勉強の意欲を取り戻し、志望校への合格を勝ち取らせてあげるため、心療内科の理論を元に、どのような声掛けが効果的なのか解説します。
無気力になった受験生は、スマホやゲームばかりして、受験の現実から目を背け精神的に逃避しようとします。
これに対し、多くの親御様が、我が子を大事に思う気持ちから声掛けを行います。
ですが、多くの場合、親が望む行動変容は起きません。
それどころか、受験生のメンタルは、ますます悪化していく場合が多いのです。
そうなってしまう理由は、親が受験生の脳と心を蝕むNGワードを口にしてしまっているからです。
かといって、親が何ら声掛けをせず、落ち込む受験生を放任しておくと、スマホやゲームばかりする生活が定着するだけです。
そして、やがて昼夜逆転、引きこもり生活となることもあります。
これでは、志望校に合格できないのは当然のこと、社会に適応することもできなくなり、生涯にわたって定職につけなくなるリスクも高まります。
そうならないよう、受験生のメンタルを立て直すための親の声かけは、やはり必要不可欠です。
では、親は、どんな声掛けをすればいいのか?
それは、無気力になった受験生の脳と心を正しく理解し、心療内科の理論に基づいた声掛けをするということです。
親が無気力になった受験生に対して言ってはいけないNGワードとは、どんなことなのか?
受験生を立ち直らせるために親が掛ける言葉は、具体的には、どのような言葉が適切なのか?
受験生を専門に診療している心療内科医としての経験と専門知識をもとに分かりやすく解説します。
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ストレスが増える受験期に、突然うつ症状を発症する人が急増している。うつで人生を狂わさないために、受験生本人や家族ができることは何か。受験生専門外来のがストレス管理や効率の良い勉強法を解説する。
「頑張れ」は「頑張るな」と言っているのと同じ!
落ち込んで勉強の意欲を失い、スマホやゲームで精神的に受験から逃避している受験生に対し、多くの親御様が「頑張れ」と言います。
これは、親が言ってはいけないNGワードの代表例です。
うつ病に代表されれる落ち込んだ人に「頑張れ」は言ってはいけない言葉だというのはよく知られているので、「頑張れ」そのものの言葉は口にしていないという方は少なくないでしょう。
しかし、受験生の脳と心に、これと同じ悪影響をもたらす励ましの言葉をかけている親御様は、とても多いのが現状です。
激励の言葉が、なぜNGワードなのか?
浪人生は、ほぼ全員が入試に失敗したトラウマに苦しみ、それがネガティブな感情となって、脳内に無気力が定着しやすい状態になります。
現役生や高1高2でも、長期間にわたって成績が伸び悩むと、やはり、コンプレックスと勉強に対するネガティブな感情を持っています。
こうした受験生は、頑張ろうと思っても頑張れない、あるいは頑張るためのなメンタルのコントロールができない状態になっているのです。
そんな中で親から激励の言葉をかけられると、ストレスが脳と心を蝕み、トラウマとコンプレックスがさらに深まります。
その苦悩から無気力症候群や受験うつになってしまうケースも少なくありません。
「頑張れ」はもちろん、むやみな激励の言葉は、NGワードだということを頭に入れておいてください。
「頑張れ」が効果がある人 vs 「頑張れ」が逆効果になる人!
誤解してほしくないのですが、「頑張れ」といった激励の言葉が、いつも良くないと言っているのではありません。
親御様の中には、自分自身は子供の頃、親から「頑張れ」と励まされて、それで大学に合格できたという人も多いでしょう。
実際、合格体験記には、そのようなエピソードが数多く書かれています。
実は、メンタル医学の研究でも、激励の言葉の効果については、数多くの研究結果が論文として発表されています。
そのうちのかなりに共通するのは、激励の言葉は、脳や心に影響する効果は、かなり大きいと言うことです。
効果が出る条件が満たされている場合は、個人の能力を開花させるのに、激励の言葉はかなり有効です。
では、効果が出る条件とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
簡単にいえば、頑張れる人は、頑張れと言われるとより頑張れる・・・。
頑張れない人は、頑張れと言われると、脳と心が蝕まれる・・・。
この差を決めているのは、頑張れと励ましの言葉をかけられて人の脳が、頑張るためのメンタルのコントロール能力があるかどうかということです。
入試や定期テストで失敗してスマホやゲームに逃避している受験生は、その時点で、頑張るためのメンタルのコントロール能力が十分な水準に達していないといえます。
だから、頑張れという声かけで問題が解決するはずはなく、むしろ 受験生のメンタルを悪化させるだけなので、だからNGワードなのです。
親の声かけは、子どもができることを教えること!
では、受験生の脳と心が頑張るためのコントロール能力を失っている場合には、親はどんな言葉をかけてあげればいいのか。
それは、本人の脳と心が受け入れ可能で、実現することも可能なことを促すということです。
親から見れば、スマホをやめて勉強すればいいと思えます。
でも、そんなことは、受験生はみんな頭ではわかっていることです。
頭ではわかっていても、脳と心が実現できる状態でないから、スマホを眺めて受験の現実から逃避しているのです。
そんな場合は、まず、「今は勉強しなくていい。そのうち始めたら大丈夫だ」と声をかけ、受験生を受験勉強のプレッシャーから開放してあげるべきです。
子どもは幼い頃より親から勉強しろと言われ続けているので、勉強しなくていいという言葉は、効果がある場合が少なくありません。
ただし、それだけなら、いつまでたっても勉強は始まりません。
今すぐには勉強はしなくていいが、いずれ勉強できるようになるために、脳と心が健康になる生活に改善させることです。
勉強はしなくていいから、外出する。
スマホではなくて、体を動かすような遊びに切り替える。
カラオケでもいい。
バッティングセンターでもいい。
散歩やサイクリングでもいい。
まずは、脳と心が健康になる生活に切り替える。
そうしたら、今は勉強しなくても、いずれ勉強できる脳と心に切り替わるから、お前は大丈夫なんだ・・・。
そんな言葉をかけて、落ち込む受験生を説得していただきたいのです。
無気力と現実逃避に潜む脳の不調!
ただし、単なる心理的な問題ではなく、脳の機能的な不調によって無気力と現実逃避になっている受験生もいます。
この場合は、勉強が出来なくなっているだけでなく、外出しようと思っても、それができない状態になっています。
特に脳の扁桃体と呼ばれる部分が機能の異常をおこすと、そうなってしまうのです。
こういう段階に至ると、それはもう、心理の問題ではなく脳の機能の問題です。
あわせて、以下の症状が出ている場合は、特に注意が必要です。
なんだか、心がきつい・・・。
めんどくさくて、嫌な気分になる・・・。
外出するだけで、なんだか物哀しい気分になる・・・。
心当たりのある方は、一刻も早く、改善が必要です。
ドーパミンが枯渇し、脳の側坐核が刺激を受けにくい状態になっている可能性が高いのです。
この場合、ドーパミンで側坐核を刺激し、勉強のヤル気を回復させる方法が、合格を勝ち取る上で有効です。
以下の解説を必ずご参照ください。
このページの要点は?
✓ 受験ストレスが脳の機能に障害を与えるため、ヤル気の低下を生み出します!
✓ 勉強のヤル気は、脳の「側坐核(Nucleus accumbens)」という部分が中心になって生み出されます!
✓ ストレスは、脳の「背外側前頭前野(DLPFC)」の機能を低下させることで、ヤル気の喪失を生じさせます!
✓ 「背外側前頭前野」への磁気刺激によって、勉強に対するヤル気の急激な回復を図ります!
ポイント!
受験勉強などのヤル気は、脳の奥深い部分にある「側坐核(Nucleus accumbens)」と呼ばれる部分が中心になって生み出される仕組みになっています。
このため、「側坐核(Nucleus accumbens)」は意欲の中枢と呼ばれることもあります。
試験で良い点数を取ると、ますますヤル気が出てきますね。
そんな経験が、どなたもあると思います。
良いことがあると、A10神経が快感ホルモンと呼ばれるドーパミンを分泌するため、気持ちよくなるわけです。
同時に、A10神経は「側坐核」にもドーパミンを分泌して、活動を活発にしてくれます。
ヤル気がさらに高まるのは、こうして起こる脳の生理的な現象なのです。
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