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自殺する受験生の家庭環境の特徴とは?【受験専門の心療内科】
受験生を専門に診療している心療内科医としての経験と知識をもとに、わかりやすく解説します。
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ストレスが増える受験期に、突然うつ症状を発症する人が急増している。うつで人生を狂わさないために、受験生本人や家族ができることは何か。受験生専門外来のがストレス管理や効率の良い勉強法を解説する。
受験生の自殺の原因は親のメンタルにある!
受験生が自殺を図ったことをきっかけに、私の受験生専門の心療内科クリニックを受診されるケースが少なくありません。
そのような場合、もちろん脳の働きについての専門的な検査も行いますが、それとともに力を入れているのは、親子のカウンセリングを通して、自殺を図った受験生の心の闇に光を当ててていくことです。
こうした中で、ほとんどの場合、受験生だけではなく、その親御様のメンタルにも何らかのトラブルが生じていることがわかります。
それが受験生の心の中で増幅しているというケースが極めて多いのです。
大人が自殺を図る場合は、職場など仕事にかかわるトラブルが関わっていることが多いのですが、受験生に関して言うと、親のメンタル面の影響が極めて大きいということです。
逆に言えば、この部分をしっかりとケアすれば、受験生の自殺を食い止めることができるということを意味しているわけです。
受験生を自殺に追いやる、親の囚われの感情とは?
自殺を図った受験生の親子に対してカウンセリングを行うと、ほぼ全てのケースで共通して認められるメンタル面の特徴があります。
それは、親がメンタル医学で「遂行目標」とよばれているものに対して、極めて強い囚われの感情を持っているということです。
これが子供のメンタルに無意識のうちに受け継がれ、それが自殺を促す要因になっているケースがとても多いのです。
つまり、親が「遂行目標」に対する心理的な囚われの感情を軽減させれば、受験生の自殺を予防する大きな効果を持つということです。
受験生の自殺を防ぐために、親御様は、ぜひ、メンタル医学で「遂行目標」と呼ばれているものがどういうものか、そのとき脳内はどうなっているのか、よく理解しておいていただきたいです。
「遂行目標」への囚われが自殺と受験失敗の原因!
では、受験生を自殺に追い込む危険な「遂行目標」とは、どんなものなのでしょうか?
一言で言うと、これは、他人から自分の能力を高く評価してもらいたいという動機に基づいた目標のことです。
言い換えれば、自分の能力が他人から低い評価を受けるのを、なんとしても避けたいとする動機に囚われた目標であるとも言えます。
一方、「遂行目標」と対比的な関係にあるのが「熟達目標」です。
こちらは、他人のことは関係なく、純粋に自分の能力を伸ばし、自分を成長させたいとする目標のことを指します。
心の中で「遂行目標」が優位となると、メンタルがストレスに対して脆弱になり、①うつ病になりやすい・・・、②自殺を図りやすい・・・、③受験などストレスに打ち勝つことが必要なミッションにも失敗しやすい・・・ということがメンタル医学の研究で解明されています。
つまり、自殺を防ぎ、志望校にも合格するには、「遂行目標」から「熟達目標」に切り替えることが有効だということです。
受験勉強の「遂行目標」と「熟達目標」とは?
このように、「遂行目標」と「熟達目標」は、自殺を予防するためにも志望校に合格するためにもとても大事なものです。
抽象的な理論の説明ではピンと来ないと思うので、受験勉強を具体例として、わかりやすく解説しましょう。
勉強をするとき、通常は、「遂行目標」と「熟達目標」が受験生のメンタルの中で混在しています。
自分の成長のために勉強したいと意識が強い・・・。
周囲に人の評価よりも、自分自身の手ごたえや実感が大きな意味を持つ・・・。
そんな場合は、熟達目標が優位となっているメンタル状態だといえます。
でも、自殺を図った受験生にカウンセリングをすると、「偏差値の低い大学に行ったら、他人から見下される・・・」といった囚われの感情を強く持っています。
これが、「遂行目標」にメンタルが囚われている状態、言い換えれば、「遂行目標」に脳が支配されている状態なのです。
受験生の親に見られる「遂行目標」の罠とは?
さらに、カウンセリングを行っていると、ほぼ全例で、自殺を図った受験生ご本人だけでなく、親御様のメンタルにも、「遂行目標」への囚われの感情が強く見て取れます。
お父様に多いのは、職場でのプライドによるものです。
最近は晩婚化が進み、部下よりも上司の子どものほうが年齢が低く、後から受験を迎えるという逆転したケースも少なくありません。
職場での地位は自分のほうが上だから、先に受験を終えた部下の子どもより、偏差値の高い学校に合格させたい・・・。
そんな囚われの感情から、「遂行目標」罠に脳が支配されてしまうケースが多く見受けられます。
一方、お母様の場合は、従来、ご近所の中での受験競争や、親族関係の中で親戚より優位に立ちたいという場合が多いのが特徴でした。
ただ、女性の社会進出を受け、最近では、お父様と同様に、職場の人間関係が動機となる場合も増えてきています。
いずれにしても、まず、親自身のメンタルが「遂行目標」への強い囚われを抱え、それが、二次的に子どもに伝わり、さらに受験勉強をストレスでそれが拡大させて、自殺や受験の失敗に結びついているということを、ぜひ、ご理解していただきたいです。
「遂行目標」への囚われで脳では何が起きるのか?
では、「遂行目標」への囚われでによって、どうして、うつ病・自殺・受験の失敗が増えるのでしょうか?
これについては、メンタル医学では、従来、ストレス耐性の観点から説明がなされてきました。
ストレス耐性とは、脳や心がストレスに負けない能力を指します。
具体的には、レジリエンスと呼ばれるストレス状態から回復する力が、「遂行目標」によって低下するため、うつ病・自殺・受験の失敗が増えるわけです。
この考え方は全く正しいのですが、現在では、脳医学の研究から、さらに詳しいメカニズムが解明されています。
「遂行目標」にとらわれると、脳内の扁桃体が過剰に刺激を受けやすくなり、これによって不満と不安が暴走するわけです。
「熟達目標」を志望校への合格に結びつけるには?
「遂行目標」への囚われから脱し、「熟達目標」に切り替える・・・。
これはとても大事なことですが、従来の心理学は、これを根拠に受験を否定してきました。
入試の合格を目指すことが「遂行目標」であり、純粋に学問を修めていく「熟達目標」を追求するのなら、受験の合否を考えてはいけない・・・。
今でも、心理学分野では、こうした指導が行われています。
しかし、私は脳医学の立場から、この考え方に否定的です。
入試に合格することが、世間体を保つことや、他人の目を気にしてのことが動機であれば、それは「遂行目標」そのもので、そこに人間関係の心理的なトラブルが介在するので、扁桃体の暴走を招いてしまいます。
ただし、純粋に自分自身の将来のために志望校に合格したいと考えることには、対人関係の心理的なトラブルは介在せず、扁桃体の暴走にも結びつきません。
「熟達目標」という言葉が心理学から生まれたため、これを「熟達目標」というと、いささか国語的に違和感があるのは否めません。
ただし、志望校に合格できないと、結局は受験生に心の平安は訪れないのが、臨床の現場の医者としての実感です。
この点でも、受験を頭から否定する心理学面からの指導には、私は否定的なわけです。
親がやるべき我が子の自殺の予防策とは?
以上のようなご説明をすると、多くの親御様が、ご家庭でお子様に対し、「遂行目標」への囚われをなくすように説教話をされようとします。
でも、これでは、自殺を防ぐ効果は十分に出ないどころか、最悪の場合、逆効果になることもあります。
親御様のメンタルに「遂行目標」に対する囚われがある場合、こうした説教話は、なんら説得力を持たず、むしろお子様の反発を招くだけだからです。
まず、親より始めよ・・・。
親御様自身が、「遂行目標」に対する囚われをなくし、その状態をお子さんに二次的に伝えていくことが大事なのです。
一方、受験生の自殺を防ぐうえで、親御様にしっかり見守っていただきたいポイントがあります。
これについては、「受験生の心の危機 親の見守りポイント 心療内科医が解説 自殺を予防するメンタル医学」のページで詳しく解説しています。
こちらもあわせてご参照ください。
一方、受験生が自殺を図る場合、前兆現象として朝寝坊が増えるなど、いくつかのSOSサインが見つかっています。
心の危機を見逃さないポイントと対策については、「 朝寝坊は受験生の自殺のSOSサイン!受験生の自己愛型自殺」のページで詳しく解説しています。
こちらもあわせてご参照ください。
詳しい記事を読む ⇒ クリック!
以下の記事も自殺の予防に役立ちます。
また、来春が受験だという場合は、あまり、悠長なことは言っていられません。
この場合は、磁気のパルスを脳の背外側前頭前野に当て、扁桃体の暴走を止めるといった最新の脳医学に基づく治療が、志望校への合格を勝ち取るためにとても有効です。
このほか、「遂行目標」への囚われで受験うつを発症している、あるいは、その前段階に至っている可能性がある場合は、①ヤル気の低下、②イライラの暴走、③集中力の低下、④記憶力の低下、⑤思考力の低下・・・という5つの問題のいずれかが生じます。
そこで私のクリニックでは、認知機能の検査を行い、5種類の脳の機能の中で、低下している機能をあぶり出し、それを脳医学の力で重点的に高めることで、大学受験など次のステップの入試でも志望校への合格を勝ち取っていただいています。
これが、5つの特別診療です。
実際、試験の点数の大幅アップと、志望校への高い合格率を実現しています。
以下、クリニックのホームページに掲載した5つの特別診療のご案内文の冒頭部分を掲載しておきます。
目を通していただければ嬉しいです。
✓ ヤル気・イライラ・集中力・記憶力・思考力の5つに関して、受験生の遺伝子のバリエーションに起因する脳の働きの格差が大きく、これを知ることが志望校への合格に大きな力を与えてくれます!
✓ 受験に特化した光トポグラフィー検査や各種の認知機能検査のデータを解析することで、受験生の脳がどのような働き方の癖を持っているのか科学的に解明できます!
✓ 根性で頑張るといった前近代的な方法で受験に取り組むと、逆に脳に対する悪影響が生じ、成績の低迷をもたらします!
✓ 遺伝子のバリエーションを無視し、他人が成功した方法を鵜呑みにして真似ると、脳に負担を与えることにより、受験うつなどに陥る場合が少なくありません!
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