ご褒美で勉強させる脳に正しい方法とは?心療内科医が教えるモチベーションの脳医学! | 受験専門の心療内科 東大赤門 吉田たかよし

ご褒美で勉強させる脳に正しい方法とは?心療内科医が教えるモチベーションの脳医学!

 

 

 

受験の心療内科

 

ご褒美で釣って勉強させる危険な脳への悪影響とは?

 

 

 

 

ご褒美で釣って子供に勉強させると、一時的に成績が上がる効果が生じるのは事実です。

 

しかし、心療内科 として私は警告します。

親御様は、安易な気持ちでこの方法に飛びついてはいけません。

やり方に注意しないと、長期的には、子供の脳に危険な悪影響を与えるからです。

 

かといって、ご褒美で勉強させることが、すべて間違いだというわけではありません。

脳にとって正しい方法で行えば、成績アップやモチベーションを高めるために役立ちます。

 

大事なのは、子どもの脳を理解し、正しいやり方のご褒美を出して勉強さえることです。

 

 

 

子供にご褒美を与えることを約束して勉強させた場合、子どもの脳と心には、次の相反する2つの作用が生じることが解明されています。

 

 

① 短期的に成績を上げる作用 ⇒ 「エンハンシング効果(Enhancing effect)」

 

② 中長期的に勉強嫌いの心を植え付ける副作用 ⇒ 「アンダーマイニング効果(Undermining effect)」

 

 

いくら短期的に、目先の成績を上げることができても、長い目で見て、子どもが勉強嫌いになってしまうほうが、害悪としてははるかに大きいです。

大切なのは、勉強嫌いの心を植え付ける危険な副作用を回避し、成績を上げる良い作用だけが現れる、正しいご褒美の釣り方を実践することです。

 

 

「エンハンシング効果」とは何か?

「アンダーマイニング効果」とは何か?

さらに、具体的には、どのようなことに注意してご褒美を出せば良いのか?

 

受験生の脳と心を専門に診療している心療内科医の経験と専門知識を元に、わかりやすくご紹介します。

 

 

 

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ご褒美で釣ると成績が上がるのは確か!

 

ご褒美を与えるとモチベーションが上がり、熱心に取り組むことで結果も良くなるというのは事実です。

 

これは子供に限らず、すべての年代の人に当てはまる現象で、これを証明した数多くの実験結果が報告されています。

 

メンタル医学では、これは「エンハンシング効果(Enhancing effect)」と呼ばれています。

 

 

子供の勉強についても、この現象が成り立つことが実証されています。

 

たとえば、ハーバード大学のグループが行った実験でも、ご褒美を上げることを約束すると、勉強のモチベーションが上がり、結果的に成績も向上したというデータが出ています。


これについては、親御様にとっても、ご家庭での実感に近いことだと思います。

 

 

勉強嫌いの心を植え付ける副作用とは?

 

目先の成績が上がるだけに、親としてはご褒美で釣りたくなる気持ちになってしまいがちですね。

 

でも、忘れてはならないのが、勉強嫌いの心を植え付けるという危険な副作用が潜んでいることです。

 

メンタル医学では、こうした効果は「アンダーマイニング効果(Undermining effect)」と呼ばれています。

 

 

大人でもこうした副作用があることがわかっていますが、脳や心が発達段階にある子どもの場合は、特に「アンダーマイニング効果」が大きいこともわかっています。

 

勉強嫌いの心を植え付けてしまったら、目先の成績を上げるメリットより、はるかに大きなダメージを子供の将来に与えてしまうことになります。

 

ご褒美で釣って勉強をさせる場合には、「アンダーマイニング効果」の副作用が出ないように工夫が求められるわけです。

 

そのために、まず、どうしてこのような副作用が出るのか、簡単にご説明しましょう!

 

 

 

内発的動機づけ vs 外発的動機づけ

 

人間が自分の意思で何かを行うとき、モチベーションには2種類があります。

 

たとえば、自分の意思で勉強をするときは、以下の2つのモチベーションが稼働します。

 

①勉強するのが楽しい、あるいは勉強自体をやりたいと思う ⇒ 「内発的動機づけ(Intrinsic motivation)」

 

②ご褒美が目的など、勉強以外に本当の動機がある ⇒ 「外発的動機づけ(Extrinsic motivation)」

 

 

ご褒美を目的に勉強をしていると、外発的動機づけが働き、そのときは、バラバリ勉強ができます。

 

しかし、同時に脳は、勉強は外発的動機づけで行うものだと学習し、内発的動機づけが消えていくのです。

 

簡単にいうと、勉強はご褒美を得るための単なる苦役だと脳に認識されてしまうということです。

 

成長期にこうした動機づけが繰り返されると、徐々に勉強嫌いの脳が形成されていくわけです。

 

 

勉強嫌いにならないご褒美とは?

 

では、子供を勉強嫌いにしないためには、ご褒美で釣る場合、どのような工夫をすればいいのでしょうか?

 

その答えは、ご褒美を、報酬型ではなく、賞金型にするということです。

 

 

報酬型のご褒美とは、「1時間勉強したら、○○をあげる!」、「問題を10問やったら、○○をあげる!」といった、労働の賃金のような形で与えるものです。

 

この場合は、明確な外発的動機づけとなっているので、自分の意思で勉強をやろうと思う内発的動機づけを摘み取って、勉強嫌いの心を植え付けてしまいます。

 

 

賞金型のご褒美の動機づけの効果!

 

これに対し、賞金型のご褒美とは、「模擬テストでA判定を取ったら、○○を買ってあげる!」、「次の定期テストで10番以内に入ったら、○○を買ってあげる!」といった、スポーツの試合で優勝したときの賞金のような形で与えるというものです。

 

 

この場合は、うまく条件を整えれば、目標達成のために、目の前の個々の勉強については、限りなく内発的動機づけに近い形で勉強させられます。

 

だから、勉強嫌いどころか、勉強好きの脳に育ててあげられるわけです。

 

 

ただし、賞金型のご褒美であっても、機械的に勉強しただけで獲得できるようなハードルの低い目標だと、外発的動機づけの性質が強まります。

 

だから、この場合は勉強嫌いにする副作用が現れる可能性が高まります。

 

そうならないように、簡単には獲得できない、そこそこ高い目標設定が必要です。

 

 

勉強好きの脳を育てる賞金の条件とは?

 

目標の具体的な基準の目安は、本人が獲得できる確率が30%以下だと予想する水準であることです。

 

この程度の目標であれば、勉強したら必ず賞金が得られるわけではないので、脳は賃金のような動機づけとは認識しません。

 

勉強は、高い目標をクリアしようとするチャレンジ精神に基づいて行うことになります。

 

だからこそ、目の前の一つ一つの勉強は、内発的動機づけに基づいて行われることになるのです。

 

 

実際、私のクリニックでも、「模擬テストで東大のA判定をとったら高級バッグを買ってあげる・・・」という賞金型のご褒美を設定してもらい、みごとクリアして高級バッグをゲットしたら、その時の快感が忘れられず、勉強嫌いを克服できたというケースがありました。

 

彼女は、勉強好きというよりも、試験対策好きになったわけですが、東大独特の入試問題の攻略法を自分でも研究し、そのまま現役で合格を果たしました。

 

 

賞金型のご褒美が効果的な年代とは?

 

ただし、この方法で効果を出すには、子供の脳と心が、チャレンジしたいという気持ちを持てる程度に発達している必要があります。

 

一部、賞金型のご褒美では成績が上がらなかったという研究結果もあり、それをもとに賞金型は無力だと指摘する人がいますが、きちんと論文を読むと、被験者は幼い子どもで、しかも、チャレンジしたいという気持ちが起きていなかったことが示されています。

 

つまり、賞金型のご褒美がダメなのではなく、賞金にチャレンジしたいという気持ちを持たせることが大事だということです。

 

そのためには、たとえ達成確率が30%以下でも、チャレンジして手に入れたいと心の底から思えるご褒美を用意してあげる必要があります。

 

 

一方、年齢については、思春期を迎えて以降の年代が、特に賞金型のご褒美で成果が上がるというデータが出ています。

 

ですから、高校受験や大学受験については、賞金型のご褒美が効果的だといえます。

 

 

また、小学生であっても中学受験を目指すお子さんに限れば、チャレンジ精神がすでにある程度は育っているので有効です。

 

実際、私のクリニックでも、この方法で灘中学や桜蔭中学など、有名中学に合格された例が数多くあります。

 

 

モチベーションの低下に潜む脳の不調!

 

ただし、子供が勉強しなくなった場合、単なるモチベーションの低下といった問題ではなく、脳の不調によって意欲そのものを生み出せない状態になっている受験生も少なくありません。

 

あなたのお子さんは、大丈夫でしょうか?

 

 

この場合は、親がいくら工夫して内発的動機づけを行っても、子供の脳はそれに答えられなくなっています。

 

その結果、親が働きかけをしても、一切の勉強を拒絶し、ゲームやスマホだけに時間を費やそうとします。

 

 

あわせて、以下の症状が出ている場合は、特に注意が必要です。

 

なんだか、心がきつそうだ・・・。

 

めんどくさくて、嫌な気分になっているようだ・・・。

 

ご褒美を意識して勉強しようとしても、すぐに物哀しい気分になるようだ・・・。

 

 

心当たりのある場合は、一刻も早く、改善が必要です。

 

脳内でドーパミンが枯渇し、脳の側坐核が刺激を受けにくい状態になっている可能性が高いのです。

 

 

この場合、脳の状態をリセットし、勉強のヤル気を回復させる方法が、合格を勝ち取る上で有効です。

 

以下の解説を必ずご参照ください。

 

 

 


勉強のヤル気を回復させる最新治療!


 
 

 

 ✓   受験ストレスと脳の疲労、認知のゆがみなどの要因が重なると、脳の認知機能に障害が生じるため、勉強のやる気を出したくても出せない状態に陥ります。

 

 ✓   勉強のヤル気は、脳の「側坐核(Nucleus accumbens)」という部分が中心になって生み出されます!

 

 ✓   ストレスは、脳の「背外側前頭前野(DLPFC)」の機能を低下させることで、ヤル気の喪失を生じさせます!

 

 ✓   「背外側前頭前野」への磁気刺激によって、勉強に対するヤル気の急激な回復を図ります!

 

 
 
 
 

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