カーリング銀メダルに学ぶ受験生のメンタル管理【受験の脳科学】 | 受験専門の心療内科 東大赤門 吉田たかよし

カーリング銀メダルに学ぶ受験生のメンタル管理【受験の脳科学】

今日のテーマは、カーリング日本代表のロコソラーレが、銀メダルを取る原動力になったメンタル面の対策が、そっくりそのまま受験生が志望校に合格するために役立てられるということです。

 

昨日の文化放送の「ニュースSAKIDORI」と、今朝のFM「ハッピーモーニング(JFN系列全国)」と、二つの番組で語らせていただきましたが、番組を聞いてくださった方もそうじゃない方も、このブログでさらに詳しく解説していきますので、読んでいただけると嬉しいです。

 

 

ちなみに、私自身は、若い頃、月に一度、日曜日に休む常勤の医者の代わりに、軽井沢の病院へ休日診療の応援に行っていて、そのとき、診療の後にカーリングの練習に打ち込んでいました。

 

といっても、私はカーリングの選手としては初心者レベルなので、戦術面を解説する資格はありませんが、専門のメンタル医学の面から、ロコ・ソラーレが勝てた秘密を解き明かしていきたいと思います。


北京オリンピックは、金メダルがイギリス、銀メダルは日本、銅メダルはスウェーデンですが、この三つのチームに共通した成功の秘訣があります。


それが、メンタル医学に基づく心理トレーニングを積極的に取り入れていたということです。






日本代表のロコソラーレは、理事長の本橋麻里さんの発案で、メンタルの専門家に来てもらって、セカンドチームのロコステラの選手と一緒に指導を受けたそうです。


一方、金メダルのイギリスも、メンタル面の対策を強化したと地元スコットランドのメディアは伝えています。

 

スキップのミアヘッド選手は、ピョンチャンオリンピックで、最後、テイクアウトショットがずれて、「ナンバーワンは日本だ」ということになり、銅メダルをのがしたね。


ミュアヘッドさんの実力なら、十分に決められたショットだったので、緊張したのは間違いないでしょう。


ミュアヘッドさんご自身は、ピョンチャンの銅メダルマッチは関係ないと発言されていますが、おそらく、あのときの苦い経験もメンタル強化の動機になったと私は推測しています。

 

 

さらに、銅メダルのスウェーデンは極め付きで、スキップのハッセルボリさんは、高校1年生の時から専門の心理訓練を受けていたそうです。

スウェーデンには、高校に、普通科、商業科、工業科などと同じ感じで、カーリング科があり、定員はほんの数人なんだそうですが、カーリングのエリート教育を受けているんです。

 

そこで重視されているのがメンタル医学で、1年生から3年生まで必修なのだそうです。

 

実は、スウェーデンは意外にもカーリングがあまり人気がなく、競技人口は日本より少ないのに、この少数精鋭のエリート教育がうまくいって、男女とも世界ランキングトップです。

 

ちなみに、北京オリンピックの男子で金メダルをとったのもスウェーデンで、スキップのエディンも、高校のカーリング科で、このエリート教育を受けています。

 

 

 

 

さて、メンタルトレーニングの話に戻しますと、彼女たちが専門家からどういう指導を受けているのか、われわれ心療内科の医者がインタビューを聞いたら、よく分かるんです。

ロコソラーレは、インタビューで再三言っているのは、敵との戦いではなく、「氷との戦いに集中する」ということ。


もちろん、氷を読むことが大事な競技なんですが、ライバルを意識しない、ライバルに勝ちたいという気持ちを強く持たないということが、精神が安定するのです。

 

こういう効果があることは、メンタル医学の研究で明らかにされていて、カーリングの場合には、繊細なコントロールが求められるショットの成功率が上るわけです。



実は、ロコ・ソラーレが「氷との戦いに集中する」とインタビューで答えるようになったきっかけがあります。


去年の日本選手権で、当時の北海道銀行フォルティウスに敗れて、日本代表の座を明け渡し、オリンピックの日本代表になること自体も危なくなりました。


当然、自分たちを超えた北海道銀行をライバルとして強く意識しないわけはないはずです。

 

ですが、逆に、ちょうど、そのあとから、敵との戦いではなく氷との戦いだと発言するようになったんです。


私は、これは明らかにメンタルトレーニングの影響だとみています。





どうして、こういう効果が出るかというと、米国で行われた研究なんですが、ライバルを意識し、ライバルに負けたくないと思うと、脳は対人関係のストレスだと認識し、緊張感が高まるのです。

 

この思いが一定レベルを超えて強くなると、脳の反応は、一時的にうつ病のときに似た扁桃体が暴走しやすい状態になって、メンタルがよりいっそう不安定になってしまいます。


そのため、カーリングだったら、リリースするときに、蹴り出す足に無駄な力が入って、ストーンを投げる方向が狂ったり、距離が狂ったりするわけです。


私はすごく興味深かったんですが、優勝したイギリスのミュアヘッドも、インタビューでロコソラーレと同じような発言をしているんですね。


イギリスのメディアから、大会に入る前、「サツキ・フジサワをどう思うか?」ということを何度も聞かれていました。


ピョンチャンオリンピックのリベンジをしたいといった発言をしてくれたら、イギリスの番組もすっごく盛り上がるから、そういう話を引き出したくて、しつこく聞いていたわけですね


それに対してミュアヘッドは、「ストーンの曲がりとウエイトをしっかり合わせていきたい」、つまり、「氷との戦いだ」というロコソラーレと、内容は実質的に同じなんですね。


こちらもメンタルトレーニングの成果だと思う。

 

 

ライバルを意識すると、脳が対人関係のストレスだと認識して能力が低下するというのは、受験もまったく同じです。

 

具体的に言うと、ライバルを意識することによってストレスが高まると、脳は論理的思考力や合理的な判断能力が低下してしまうのです。

 

ぜひ、受験生の方も、ストレスが高まる入試の時期は、「ライバルを意識しない」ということを徹底させるべきです。

 

 

ただ、注意しないといけないのは、無自覚のうちにライバルを意識してしまっているということです。

 

カウンセリングでお尋ねすると、ほぼ全員、「ライバルなんていません」と答えます。

 

でも、その認識が間違っているんです。

 

 

① 友だちの○○君より、偏差値の高い大学に合格したい・・・。

 

② クラスの平均よりは、良い大学に受かりたい・・・。

 

③ 有名進学校のうちの高校を卒業するわけだから、GMARCH以上に受からないとダメだ・・・。

 

メンタル医学の観点から言えば、これは、すべてライバルとの比較です。

 

③だって、目に見えない大勢の卒業生やこれから卒業する生徒たちと自分を比較しているわけです。

 

しかも、無自覚だからこそ脳の扁桃体は、より暴走しやすくなるので、明確にライバルと競い合うより、さらに悪影響が大きいです。

その延長上には「受験うつ」があり、実際、私のクリニックで問診を行うと、ライバルを意識することによりネガティブな心理が浮き彫りになります。

 

 



でも、ここまで読んでいただいて、モヤモヤした感想を持っている方も多いでしょう。

 

世間では、ライバルを意識したほうが頑張れるものだと信じられていますよね。


ライバルを意識してはいけないというのは、正反対だと感じた人が多いと思います。

 


実は、ライバルを意識したほうが良い結果が出る場合と、意識しないほうが良い結果が出る場合と両方があるんです。

たとえば、スピードスケートは、必ず、二人の選手が一緒に滑って競い合います。


たまに、相手がフライイングで失格になって、一人で滑ることになることがありますが、この場合は、良い記録が出ることは、まずありません。

 

スピードスケートでも、ライバルを意識することで、脳が対人関係のストレスを感じるのは同じです。

 

ただし、筋肉を極限状態まで収縮させる場合には、ストレスによって、より大きな力が出るのです。

 

だから、ライバルがいて、勝ちたいという本能に火をつけることで、良い記録が出るわけです。

 

陸上競技の100メートル走でも同じです。

逆に、カーリング以外でも、筋肉の繊細なコントロールが求められる、フィギュアスケートやスノーボードの場合は、ライバルを意識しないほうが良い結果が出ます。

 

 

 

 

実は、頭脳についても、この使い分けの法則が、そのまま成り立ちます。

 

一桁の足し算を延々と続けるクレペリンテストのような、脳が行う情報処理が単純作業だと、ライバルを意識してストレスを感じたほうが、良い成績が出ます。

 

でも、受験は、難問の解き方を考えたり、課題文の要旨を読み取ったり、複雑な情報処理をバランス良く組み合わせて行う必要があるので、ライバルを意識すると脳のパフォーマスが落ちてしまうわけです。

 

 

ただし、注意していただきたいのは、ライバルを意識しないでおこうと思っても、頭の中でどうしてもライバルと比較してしまう・・・とい受験生もいます。

 

また、それで焦燥感に苦しむ場合もあります。

 

このような場合は、すでに脳の扁桃体が暴走し始めており、受験うつになっているか、そうでなくても、受験うつの一歩手前の状態になっている場合もあります。

 

こういう状態になっているケースでは、志望校に合格するには、何よりも脳のコンディションをリセットする必要があります。

 

特に親がやるべきことは、とにかく早期に「受験うつ」に気づくいてあげることです。

 

まずは、親御様は、以下の「親がチェック!わが子の受験ストレス診断」というチェックリストを使って、我が子のストレスが危険水域に入っていないか、確認してあげてください。

 

 

 


 

 


 

 このページの要点は? 

 

 ✓  わが子の受験ストレスを親御様に10項目のチェックポイントで判定していいただきます

 

 ✓  デューク大学の研究手法をもとに、クリニックでの症例と学習塾・予備校のデータをもとにリスト化したものです。

 

 ✓  親が声をかけると「うるさい!」「ほっといてくれ!」と怒鳴るようになるのも「受験うつ」の重大な兆候です。

 

 ✓  子どものワガママなのか、メンタル面や脳機能の問題なのかの区別が重要で、見極めるための指針を解説しています。

 

 

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本郷赤門前クリニック

 
 

 

【判定の注意点】

お子様のメンタル面を親御様にチェックしていただくにあたり、大事な注意点があります。

 

以下の10項目の中に、「・・・になった」、あるいは「変わってしまった気がする」というチェック項目があります。

この場合は、受験勉強を始める以前の様子と比較して判定してください。

 

詳しくは、チェック項目のあとの、「ワガママとメンタル面の不調の違い」「精神面と教育面の見分け方」ところで解説しています。

こちらも、ご確認ください。

 

 

【チェック項目・その1】

・勉強のヤル気が一気になくなり、スマホばかり見ているようになった!

 

【チェック項目・その2】

・親が声をかけると「うるさい!」「ほっといてくれ!」と怒鳴るようになった!

 

 

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