入試の前夜に熟睡するための脳医学の裏技【受験専門の心療内科】
今日のテーマは、入試の前日の夜に、ぐっすり熟睡するための、脳医学を応用した簡単テクニックです。
実は、病院の入院患者さんを対象に効果を測定する実験で、効果が確認された方法なんです。
明日は、いよいよ、大学入学共通テストですね。
受験するかたは、今夜、さっそく実践すべきだと思います。
実践していただきたいのは、後頸部温罨法(こうけいぶ・おんあんぽう)と呼ばれる方法を受験生向けに応用したものです。
とっても難しい漢字ですが、簡単に言うと、首の後を温めるというもの。
やり方はとても簡単ですが、医学的に言うとタイミングだけは、ちょっと注意が必要です。
タオルなどを熱いお湯につけて温めた後、絞って首の後ろに当てるのが一般的です。
よく、美容室なんかでやってくれますよね。
とっても気持ちいいですね。
気持ちいい理由は、血行が良くなるということもありますが、それ以上に大きいのは、自律神経の状態が変化することにあります。
首の後ろは、自律神経のコントロールセンターのような役割を担っており、冷やすと交感神経優位になるという性質があります。
そのため、程度はほど大きくありませんが、首の後ろを冷やすダイエット方法があるわけです。
同様の理由で、逆に温めることで、副交感神経優位に切り替えることができるわけです。
眠りにつきやすくなるのも、このためです。
受験生と同じように、病院の入院患者も、手術を控えていて心配だとか、寝る環境が変わったために、なかなか寝付けなくて苦労している方が少なくありません。
そのような方を対象に行なった実験でも、実際に寝つきが良くなったという結果が出ています。
さらに受験生の場合には、この効果がとりわけ大きくなる条件がそろっています。
なぜかというと、入試の緊張でとても交感神経優位になっているうえに、首の血液循環も悪化しているので、この部分を温める効果が、同年代の受験しない人より、はるかに大きいわけです。
受験生は、勉強しているときに、頭を支えるため、首の後ろ側の筋肉に負担がかかっているということも影響しています。
私のクリニックでは、受験生のお母様にお願いして、入試の前にこの方法を実践してもらっていますが、お子さんの受験生にしてあげたら、「ビックリするほど気持ちいい!」という答えが返ってくるそうです。
気持ちいいというのは、効果が大きいということとほとんど同じで、実際に試験の前の夜もよく眠れたという方が多数派です。
もちろん、それまでの磁気刺激治療によって脳の状態が改善していて、夜は熟睡してしっかり休む、日中は脳がバリバリ活動してよく頭が働くというリズムを既に確立していることもありますが、この方法も役に立っていると思います。
では、タオルを温める温度は、何度がいいのか?
それから、温める時間は、どれくらいの長さがいいのか?
これについても、答えは同じことです!
どれくらい副交感神経優位になっているのかは、心地よさに反映されているのです。
だから、心地良いと感じる温度、心地よいと感じで時間の長さが、寝つきを良くするためにも最もよいといえるわけです。
ただし、とっても大事な注意点が一つあります。
もちろん、温めるタイミングは寝る直前がベストなのですが、注意していただきたいのが、その1時間前までには、むしろ温めない方が効果は大きくなるということです。
なぜかと言うと、自律神経系が温めることに慣れてしまうので、最も大事な寝る直前の時間への効果が低くなるわけです。
ぜひこの方法を実践していただきたいのですが、他には、
・午後7時を過ぎたら、できるだけ部屋は暗くして、睡眠ホルモンのメラトニンが出やすくする。
・もちろん、スマホは見ない。
・寝る前にストレッチをして、筋肉をゆるめ、それに連動して精神活動もゆるめる。
・入試の後に何をして遊ぶかを考える。入試のことは考えない。
受験生の睡眠については、以下の解説も、ぜひ、ご一読ください。
こちらは、本郷赤門前クリニックの「受験ストレス不眠(Exam stress Insomnia)」のページの一部ですが、受験生にはとても役立つ情報だと思います。
受験生にとって危険な不眠の対処法
☓ 眠れないときには無理に寝ようとはせず、眠くなってから床につく!
☓ 睡眠はこうあるべきだという考えは捨てる!
☓ 眠れなくても、緊張したら眠れなくなるものだと受け入れる!
⇒ 不合格になる危険な常識!
これらは、一般論としては正しいです。
しかし、受験生の方に限れば、こうした方法を鵜呑みにするのはとても危険です。
なぜなら、不眠は治るかもしれませんが、それによって大切な受験で失敗してしまうからです。
不眠対策の常識が、志望校への不合格を導くという落とし穴をもつことを、ぜひ、認識しておいてください。
必要な睡眠時間には個人差があり、特に年齢によって大きく変動します。
ですから、決まった時刻に眠り、睡眠時間をしっかり確保しなければならないと決めつける必要はない・・・というアドバイスです。
よく言われているので、あなたも何度か耳にしたはずです。
しかし、受験生に限れば、このアドバイスはとっても危険なのです。
なぜなら、日中に勉強したことは、眠っている間に長期記憶に変換されるためです。
睡眠時間を十分に確保しなければ、苦労して勉強したことが無駄になってしまいます。
また、脳は、1日24時間のサーカディアンリズムによって機能しています。
このリズムを壊してしまうと、問題を解くための能力が大幅に低下してしまします。
さらに受験生に知っていただきたいのは、そもそも、このアドバイスは、高齢者に向けたものだということです。
年をとると、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が低下するため、そもそも生理的に睡眠の量が低下するのは当然のことです。
さらに、老後に悠々自適の年金生活を送っている場合、記憶力が低下してもそれほど困ることはありません。
だから、高齢者に向けたアドバイスとしては適切なのですが、受験生は事情が異なります。