自殺する受験生の母親の共通点とは?
今回のテーマは、自殺を図る受験生の母親には、ある重要な共通点があるということです。
受験生の親御様に、これを知っておいていただいたうえで、それに対してメンタル医学に基づく適切な対策を取れば、受験生はストレスが大幅に軽くなり、自殺を防ぐことができます。
また、仮に受験生が抱え込んでいる苦悩が自殺を図るほどには達していなかったとしても、この対策を取れば、受験生はよりメンタル面が安定した状態で入試に取り組めます。
ですから、入試の本番で力を発揮できるようになるので、第一志望の大学の合格を勝ち取ることにも役立つわけす。
「ニュースSAKIDORI」(文化放送)と「ハッピーモーニング」(JFN全国ネット)という番組でお話しさせていただいた内容をもとに、解説した記事が今でもアクセスが多いため、加筆してアップデートしたものを再掲載させていただきます。
カウンセリングで浮き彫りになる自殺を図る心理!
自殺する受験生の親には重要な共通点があるということは、心療内科の現場でカウンセリングを行うと明確に浮かび上がってきます。
知っておいていただきたい共通点は、母親と父親の両方にあてはまります。
ただし、子供との心理的距離は母親のほうが近く、結果として、その影響も母親のほうが大きくなる傾向があります。
ですから、ここでは母親と記載していますが、まったく同じことが父親でも生じるということは、理解しておいてください。
私は心療内科クリニックでカウンセリングを行っていますが、①受験生+親、②受験生のみ、③親のみ・・・この3種類のカウンセリングを行っています。
それぞれ、受け答えや表情・仕草の特徴をメンタル医学の観点から分析して比較すると、受験生が自殺を図る心理が立体的に浮き彫りになってきます。
自殺を図ろうとする受験生の母親に共通して見られる特徴として、まず指摘したいのが、母親が受験生の子どもに抱く期待の中に、自分自身の虚栄心が透けてみえるということです。
誤解してほしくないのですが、親が子どもの受験に期待を抱くこと自体は、決して悪いことではありません。
大学受験の年代になると、照れくさいから「親なんて関係ない」と受験生本人は言います。
ですが、丁寧に心理分析をすると、親、特に母親を喜ばせるために合格したいという心理が、受験生には強く見て取れるのです。
これをバネに受験勉強を頑張るモチベーションとなってくれるので、親の期待はあったほうが良いわけです。
実際、全体としては、親が受験の結果に期待を抱いているご家庭のほうが、子供はより偏差値の高い志望校に合格している傾向があるのは間違いありません。
ただし、問題なのが、受験生への期待に、母親自身の虚栄心が入り込んでいる場合が少なくないということです。
子供が一流大学に合格して、世間体を良くしたい・・・。
ママ友に対して、子供の学歴で優位に立ちたい・・・。
親類の子供よりも、偏差値の高い大学に合格させたい・・・。
どんなに人間ができている方でも、心の奥底では、このような思いを多少は持ってしまうのは、人の親として致し方のないことでしょう。
しかし、こういう虚栄心が母親の心理に紛れ込んでいると、入試に対してピリピリしている受験生は、無意識のうちにそのことを敏感に感じ取り、脳内に特別なストレスを生じさせてしまうのです。
それが、「母原性受験ストレス(Maternal exam stress)」です。
これによって、脳の働きが低下し、入試で実力が発揮できなくなる受験生が多いのです。
また、それが積もりに積もると、自殺を図るという、最悪の結末を招くこともあるわけです。
実は、さらに子どもの母原性受験ストレスが大きくなる、虚栄心よりもっと危険な母親の心理があります。
それは、子供と精神的に共依存の状態になり、母親自身の自尊心の崩壊を子どもの受験で紛らわせようとすることです。
それは、どういうことなのか?
抽象的な説明ではピンと来ないと思いますので、わかりやすい具体例でご紹介しましょう。
クリニックで何度かカウンセリングを行っていると、私と信頼関係が構築されてきて、なかなか話しにくいご家庭の事情も聞かせていただくケースが増えてきます。
夫が妻のことを振り向いてくれない・・・。
ひょっとしたら、浮気をしているのではないかという疑念さえ湧いてくる・・・。
このような悩みを抱えているご家庭の話を伺う機会もあるのです。
そのような場合、当然、お母様のプライドはズタズタに傷つくわけです。
その心の傷、トラウマを子どもの受験の成功で覆い隠そうとする心理が働くのです。
もちろん、これは、話がわかりやすいように極端な例をご紹介しただけで、共依存の関係になってしまうのが、すべて、このような韓流ドラマのような展開だと言うわけではありません。
また、実際は、共依存に至るプロセスがこれほど単純なものでもありません。
でも、程度の差はあっても、同じ方向性の心理の問題点を抱えている場合は、ものすごく多いのが現実です。