滋腎明目湯 (じじんめいもくとう)

過労や高齢によって起こる眼精疲労、視力障害に。

体が衰弱したり、年を重ねるにつれて肝腎の力が弱ってくる。

その結果、血流が悪くなって眼に栄養が充分に行きわたらなくなり、

目のかすみ・疲れ・痛みなどの症状を訴えるようになる。本方はそのような方によく用いられる。

滋腎明目湯適応症



◆滋腎明目湯は名前からもわかるように腎を滋養しその働きを高め、

目の前が明るくハッキリと物が見えるようになる処方である。

出典の『万病回春』には、「神を労し腎が虚し、血が少なく眼痛するを治す」とあり、

酷く疲れていることにより腎の機能が低下し、

その影響で肝の血が不足することで目に血が供給されなくなり、目が痛むものに使われていることがわかる。

 

◆五行説では目は直接的には肝の失調(肝の血の不足など)の影響を受けると考える。

すなわち肝の失調によって目が滋養されないことで、眼精疲労、視力障害、ドライアイなどの症状となって現れるのである。

しかし、肝は相生(母子)関係にある腎の影響も受けており、

老化による腎の機能低下(腎虚)によっても目のトラブルが起こる。

滋腎明目湯はこのような肝および腎の失調による目のトラブルに適応する処方である。

 

◆眼底(網膜)は漢方的には腎に属するので、

滋腎明目湯は眼底出血、網膜症などにも広く応用できる。
また、浅田宗伯は内障眼(そこひ、白内障のこと)の主方といっており、白内障にもよく用いられる。

【処方構成】15味

血を補う四物湯に補気健脾(胃腸を調え、気を補う)の人参(ニンジン)、甘草(カンゾウ)の組み合わせにより肝血の不足から派生する視力低下、貧血、疲労倦怠および腎虚(加齢現象全般)にも対応する。また、黄連(オウレン)、桔梗(キキョウ)、山梔子(サンシシ)で上半身の熱をとり、蔓荊子(マンケイシ)、菊花(キクカ)、細茶(サイチャ)、白芷(ビャクシ)は目の炎症を冷まし、乾地黄(カンジオウ)で潤いを与えて熱を冷ます。また、水分代謝を改善する灯心草(トウシンソウ)は熱を冷ます働きも持ち、目のかすみや疲れをとる。

滋腎明目湯生薬構成

処方名 類方鑑別
滋腎明目湯 老化や過労による目のかすみ、目の疲れ、目の痛みに。
八味地黄丸 腰から下が冷えて重だるく、夜間の頻尿がある方の白内障などの視力障害に。
洗肝明目湯 炎症による充血、腫れ、疼痛などが顕著な眼病に。
杞菊地黄丸 老化が進み、目の乾き、かすみを強く訴える方に。
苓桂朮甘湯 水分代謝が悪く、目が疲れると視力が落ち、近視状態になる方に。