独活寄生丸 (どっかつきせいがん)

 

体が虚弱で、腰や手足の痛みが頑固で治りにくい方に。

からだが虚弱で疲れやすい方の痺証(ひしょう)に用いる。痺証とは、冷えや湿気が体内に入ることで腰や手足などの運動器に起こる痛み・しびれをいう。 対象者は慢性化した患者や高齢者に多い。

独活寄生丸適応症



◆一般には、高齢者や虚弱者の腰痛にはファーストチョイスとされている。寒湿痺(かんしつひ)(寒さや湿気で起きる関節、筋肉、骨などの異常)を呈する疼痛全般に広く用いる。 また、激しいスポーツで腰痛を起こす一時的な虚証にも用いられる。

 

◆気血(エネルギーや栄養)が不足して、筋骨(肝腎)の養分が足りなくなった結果、虚に乗じて邪(寒邪や湿邪)が入り込む。本方の治法は扶正祛邪(ふせいきょじゃ)(抵抗力を高めて病気の原因を追い払う)である。

 

◆肝は筋を栄養し、腎は骨を栄養するため、肝と腎が衰えれば膝と腰に異常が出やすい。筋と骨のトラブルにより、関節の変形、こわばり、屈伸困難などの症状が発生する。このようなケースによく使われる。

 

◆曲げられるが伸ばせないのは筋(肝)に病があり、伸ばせるが曲げられないのは骨(腎)に病があると言われている。

 

◆特に高齢者は、骨を栄養する腎が衰えやすい。腎が衰えている高齢者や虚弱者には、体の痛み以外に耳鳴り、健忘、めまいなど(腎虚の症状)を訴えるケースもある。

 

◆関節リウマチ、リウマチ熱、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、骨粗鬆症などの骨や関節、筋肉の疾患にも応用されている。

 

【処方構成】16味

処方中の唐独活(トウドクカツ)・桑寄生(ソウキセイ)を中心とした構成で、この組み合わせには、袪風湿、強筋骨の効果がある。それをサポートする形で他の生薬が加わる。薬性のほとんどは温性である。牛膝(ゴシツ)・杜仲(トチュウ)・桑寄生は肝腎を補い、 骨を盛んにして筋を強くする。補気薬(党参(トウジン)・茯苓(ブクリョウ)など)・補血薬(当帰(トウキ)・芍薬(シャクヤク)・地黄(ジオウ)・川芎(センキュウ))もバランスよく配され、痛みの原因を改善する

独活寄生丸生薬構成

 

処方名 類方鑑別
独活寄生丸 高齢者や虚弱者で腰背および下肢痛を訴えるもの(急性・慢性)。
疎経活血湯 体力があり元気なタイプで、特に固定性(痛む場所が移動しない)の刺すような痛みがみられるもの。
八味地黄丸 高齢者や虚弱者で、下半身が冷えて腰痛および下肢痛を訴えるもの(主に慢性)。
五積散 上半身に熱感があり下半身が冷えるタイプ。体内の循環が悪く、腰、股・下腹が痛む。