薬の影響

高カリウム血症は薬の副作用としてあらわれることがあります。

薬が原因の高カリウム血症では薬を中止することで改善が見込めますが、

もともとの病気の関係で薬を中止できないことも多いので、薬の中止は自分で判断せず、

担当の医師と相談するようにしてください。

高カリウム血症を起こすことがある薬の例を以下に挙げます。

  • 降圧薬(ACE阻害薬、ARBなど)
  • 利尿薬(抗アルドステロン薬)
  • 鎮痛薬(NSAIDs)
  • 抗菌薬・抗真菌薬

それぞれどのような薬か説明していきます。

降圧薬(ACE阻害薬、ARBなど)

血圧を下げる薬(降圧薬)の一部は高カリウム血症を起こすことが知られています。

特に、注意が必要な降圧薬にACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)

ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)と呼ばれる種類のものがあります。

ACE阻害薬やARBは血圧を下げる作用に加えて心臓、腎臓などの臓器保護作用があることから、

心不全慢性腎臓病を持つ高血圧の人などに幅広く用いられています。

具体的には以下の薬がACE阻害薬やARBです。

  • ACE阻害薬
    • エナラプリル(主な商品名:レニベース®)
    • リシノプリル(主な商品名:ロンゲス®)
    • ペリンドプリル(主な商品名:コバシル®)
  • ARB
    • カンデサルタン(主な商品名:ブロプレス®)
    • ロサルタン(主な商品名:ニューロタン®)
    • バルサルタン(主な商品名:ディオバン®)
    • テルミサルタン(主な商品名:ミカルディス®)
    • イルベサルタン(主な商品名:アバプロ®、イルベタン®)
    • アジルサルタン(商品名:アジルバ®)

また、近年ではARBと他の薬との配合剤も発売されており、

これらもARBが含まれるため、副作用として高カリウム血症に注意が必要です。

  • ARBと利尿薬(サイアザイド系)の配合剤
    • ロサルタン・ヒドロクロロチアジド(主な商品名:プレミネント®)
    • カンデサルタン・ヒドロクロロチアジド(主な商品名:エカード®)
    • テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド(主な商品名:ミコンビ®)
  • ARBと他の降圧薬(カルシウム拮抗薬)の配合剤
    • バルサルタン・アムロジピン(主な商品名:エックスフォージ®)
    • オルメサルタン・アゼルニジピン(商品名:レザルタス®)
    • イルベサルタン・アムロジピン(主な商品名:アイミクス®)
    • アジルサルタン・アムロジピン(商品名:ザクラス®)

ACE阻害薬やARBを飲んでいて高カリウム血症が起きてしまった場合には、

他の種類の降圧薬に切り替えることで対応することが多いです。

利尿薬(抗アルドステロン薬)

抗アルドステロン薬はアルドステロンというホルモンの働きを抑える薬です。

アルドステロンが過剰になる原発性アルドステロン症という病気に使われます。

原発性アルドステロン症では血圧上昇、筋力低下、疲れやすさなどがあらわれます。

筋力低下、疲れやすさは過剰になったアルドステロンにより低カリウム血症が起こるためです。

また、アルドステロンは、腎臓の遠位尿細管という場所で尿中のナトリウムや水分を血液中へ戻す作用もあります。

抗アルドステロン薬はこの作用を抑えることによって、

尿としてナトリウムや水分を多く排泄させ、

尿の量を増やす作用(利尿作用)を発揮します。

そのため、抗アルドステロン薬は利尿薬として用いられることもあります。

加えて、アルドステロンには心臓の肥大や心臓及び血管の線維化を起こす作用があり、

抗アルドステロン薬を心不全の治療薬として用いることもあります。

代表的な抗アルドステロン薬には以下があります。

  • スピロノラクトン(主な商品名:アルダクトン®)
  • エプレレノン(商品名:セララ®)

抗アルドステロン薬を飲んでいて高カリウム血症が起きてしまった場合には、

もともとの病状から抗アルドステロン薬が中止できるようであれば、

中止にして経過を見ることが多いです。

鎮痛薬(NSAIDs)

痛み止めとして様々な状況で用いられる鎮痛薬ですが、

鎮痛薬の中でNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる薬は高カリウム血症の副作用が報告されています。

NSAIDsは市販薬としても多く販売されています。

代表的なNSAIDsには以下があります。

  • ロキソプロフェンナトリウム(主な商品名:ロキソニン®)
  • セレコキシブ(商品名:セレコックス®)

NSAIDsを飲んでいて高カリウム血症が起きてしまった場合には、

他の種類の鎮痛薬に切り替えることで対応することが多いです。

抗菌薬・抗真菌薬

感染症の時に使われる抗菌薬・抗真菌薬も高カリウム血症の原因になることがあります。

感染症の原因にはウイルス、細菌や真菌(カビ)などがありますが、

抗菌薬は細菌による感染症、抗真菌薬は真菌による感染症に使われる薬です。

感染症の治療を受けている時に、全身の力の入りにくさなどを自覚した場合には、

抗菌薬や抗真菌薬による高カリウム血症の可能性も考える必要があります。

具体的に高カリウム血症を起こす薬剤には以下のようなものがあります。

  • 抗菌薬
    • ベンジルペニシリンカリウム(商品名:ペニシリンGカリウム)
    • スルファメトキサゾール・トリメトプリム(主な商品名:バクタ®)
  • 抗真菌薬
    • ペンタミジン(商品名:ベナンバックス®)

これらの抗菌薬・抗真菌薬を飲んでいて高カリウム血症が起きてしまった場合には、

他の種類の抗菌薬・抗真菌薬に切り替えることで対応することが多いです。