カリウムはほとんどが細胞内に存在し、
摂取された量の90%は尿中に排泄されます。
したがって腎機能が低下してくると血液中のカリウム濃度は高値になります。
血液中のカリウムは、腎臓からの排泄と、細胞内外の分布を調節することで維持されており、
カリウム濃度の異常は、神経や筋肉などに障害をもたらし、
血清カリウム値が7~8mEq/mLを超えて症状が重くなると、
不整脈のために心臓停止が起きて命に関わることもあります。
CKD患者で高カリウム血症を認めた場合には、
カリウムを多く含む果物や生野菜の摂取を制限するなど食事療法を行います。
1.高カリウム血症の症状は?
血液中のカリウム濃度が高くなりすぎると、四肢の重い感じや冷感、脱力感、
しびれ感、呼吸麻痺、胃腸症状、動悸、不整脈など様々な症状が現れることがあります。
5mEq/mL以上になった場合は、カリウムの多く含まれる食品のとりすぎに注意しましょう。
6mEq/mL以上になると、重大な症状が起きる可能性がありますので、
薬を飲んで血清カリウム値をコントロールすることがあります。
2. カリウム値を下げる薬はどのような薬ですか?
カリウムを下げる薬
- ケイキサレート(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム)
- アーガメイトゼリー(ポリスチレンスルホン酸カルシウム)
- ロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物) など
カリウム値を下げる薬として、陽イオン交換樹脂製剤が使用されます。
この薬は分子構造中にカルシウム又はナトリウムを持っているため、
大腸内でカルシウムイオンまたはナトリウムイオンを離してカリウムイオンを結合することによって、
体外(糞便中)へカリウムを排出し、カリウムの血中への吸収を抑制する薬です。
成分の陽イオン交換樹脂は、水に溶けず、砂のように飲みにくいので、ゼリー状にしたり、
ドライシロップという、少量の水を加えるとペースト状になる薬もあります。
陽イオン交換樹脂製剤は口の中での違和感(熱感、ザラザラ感、樹脂臭)があり、
服用後も違和感が残りやすいのが欠点です。
3.高カリウム治療薬の副作用はありますか?
主な副作用として便秘、吐き気、食欲不振などが現れることがあります。
便秘がちな人は、下剤を併用することをお勧めします。
またカリウムだけを選択的に吸着する薬物ではないため、
他の金属イオンを含む制酸剤などと併用するとそれらも吸着してしまうので、効果がおちることがあります。
4.新しい高カリウム血症治療薬
2020年5月に、これまでのカリウム吸着剤とは異なるロケルマ®という薬が発売されました。
既存の薬はポリマー(重合体)ですが、ロケルマは非ポリマーの吸着薬です。
ロケルマは微細孔構造を有する陽イオン交換化合物で、水に懸濁して服用すると、
腸管内でカリウムを選択的に吸着していきます。
またカルシウムやマグネシウムなどの陽イオンが存在していたとしても、
カリウムを優先的に取り込むという特徴があります。
また非ポリマーであるため、腸管内で膨張することはないとされていますので、
今までのポリマー性の吸着薬での便秘や腹痛、腹部膨満感の軽減が期待できます。
カリウムの低下作用も他の薬剤より強く、効果も早く発現します。
薬を約45mlの水に懸濁して服用しますが、無味無臭で服用しやすくなると思われます。
食事療法とともに薬物療法で血清カリウム値をコントロールしましょう。
また、血圧の薬の副作用でカリウムが上昇する場合があります。
高カリウム血症では原因となる薬剤や病態を把握し、カリウムを多く含む食事の摂取を制限することから開始し、
さらに必要に応じて高カリウム血症治療薬を服用します。
治療に用いられる薬は様々ありますので、服用しやすい薬や方法を医師や薬剤師に遠慮せずご相談ください。