人間の体は、すべて新陳代謝していきます。
六十兆の細胞がみな新しい細胞に置き換わることを日々に続けていく
(すべての人において毎日平均数千億の細胞が新しい細胞に置き換っている)から、人間は生きているのです。
細胞はみな細胞分裂によって新しい細胞になっていきます。
それを抑えようとするのが抗がん剤ですから、
抗がん剤は、人体すべての細胞のナチュラルな働きを止めようとする薬だともいえるわけです。
いってみれば、抗がん剤は生命の自然な働きに反する薬なのです。
だから つらい副作用がいろいろ出てしまうのです。
がんは自分の外にいる敵ではない。
自分の中にいる敵だ。
あなたのがんはあなたそのものである。
がんには、生命の歴史がこめられている。
がんの強さは、あなた自身の生命システムの強さでもある。
だからこそ がんという病気の治療は一筋縄ではいかない。
がんをやっけることに熱中しすぎると、
実は自分自身をやっけることになりかねない。
そこに がん治療の大きなパラドックスがある
立花隆「がん生と死の謎に挑む」