はいさい。ヨシバードです。
大きな台風が次々と日本と襲っているようですが、皆さんいかがお過ごしですか?台風は赤道近くの太平洋上で生まれ北上するので、こちらシンガポールの暮らしは台風とは無縁です。地震もない安定した地質のようです。むしろ、あるのはヘイズという人為的な靄で、隣国インドネシアの焼畑農業や排気ガスなどの微粒子がモンスーンによって運ばれ、シンガポールを覆いつくします。4月から10月が特にひどくなるようです。
今日はマシな一日でした。
週末明けの長い一日が終わりました。緊急ダイヤルをファーストコールと呼びますが、かなり緊張します。内心、日本人でありますように、いや最低限アメリカ人でありますようにと願い受話器を取りますが、なかなかそういうわけにはいきませんね;
ここでの仕事は救急以外にも、広い知識を必要とします。その一つがこれまで縁が薄かった感染症学。日本でよく見られる肺炎・尿路感染といったものではなく、年齢層が圧倒的に若い人たち(働き盛りの人たちとその子供達、旅行を楽しめる元気があるご年配の方)が患者層になるので、起炎菌もかわってきますし、何より「旅行医学」や「熱帯医学」の知識が必要になってきます。マラリアやデング熱は日本ではほとんどみる機会がなかったですが、こちらでは鑑別診断の一つです。ワクチンについても、もう一度おさらいが必要です。
そして、世界展開している顧客からは、リスクマネージメントの観点から「最近話題の感染症」についてのアドバイスと求められることもあります。まだ記憶に新しいものといえば、SARSやH1N1インフルエンザですね。そして、最近のトピックといえば、「エボラウィルス」が西アフリカを中心に流行していることをご存知でしょうか。アフリカには世界各国から資源開発、インフラ整備など多くの企業が進出しています。インフルエンザほどの感染力はありませんが、一旦感染すると致死率は9割と非常に怖いウィルスです。(映画「アウトブレイク」はこれがベースになっています)
初期の症状も一般的な風邪に似てる上、対症療法しか治療法はなく、宿主も不明、ワクチンもありませんので、危険地域にいかないこと、患者に近づかないことという受動的なアドバイスしかできませんが、CDCやWHOなどの最新の知識は頭に入れておく必要があります。
英和辞書と同等に大事なのは、Google Earth。元々地理が大好きでしたが、この仕事では地理的感覚はMUSTです。患者がどの国のどの地域にいて、そこから最寄りの世界水準の医療を提供できる国の距離は、予後に直結します。それほど国間の医療格差は大きく、医療にロジスティックスを絡めた判断が求められます。
今日は、Google先生に西アフリカの地理について教わりました。シンガポール、日本をはじめ、アジアではまだエボラ出血熱の確認はないようです。ご安心ください。
そんなこんなで冷汗をかきながら、今日も一日無事終了しました。でも、地球上では常に誰かが事故に合い、疾病に倒れたりしています。アシスタンスセンター業務は、引き続き夜勤担当が東南アジア全域を統括しますが、これから起きてくるヨーロッパ、アメリカ大陸の同僚たちもこの命のバトンのリレーを引き継ぎます。
今日は、大好きな詩で締めたいと思います。明日、ちゃんとまたバトンと受け取れるようにしっかりチャージします。おやすみなさーい!
「朝のリレー」 谷川俊太郎
カムチャッカの若者が
きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球で
いつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交換で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
「朝のリレー」 谷川俊太郎 動画