二期会ニューウェーブ・オペラ劇場
ヘンデル《セルセ》は、おかげさまで2組とも無事に終演いたしました!
ご来場いただいた皆さま、様々な事情でいらっしゃれないにも関わらず、ご声援を賜りました皆さま、本当にありがとうございました!
以前ブログ記事にもしたかと思いますが、このニューウェーブ公演というのは3年に一度開催され、研修所を修了してから一度だけオーディションを受けられる、いわば新人公演のようなものです。ですから、多少の年齢の違いはあれど、ソリストは同年代の方ばかりでした!これはオペラの現場では本当に珍しいことで、まさに”新顔”のみで構成されるメンバーでした。
私の出演組は22日の初日。初日組とも呼ばれる一方、制作から来る連絡メール等には”新堂組”という恐ろしいワードも載っていました。
本番前に円陣を組んだ際にも話したのですが、この呼称が嬉しくもあり、身に余る光栄でもありました。
※オペラの現場では、ダブルキャスト等の場合、タイトルロールを演じる人の名前を組の名前に冠するということがしばしば見られます。
さらに、今回のプロダクションの特色をいくつかあげるとすれば、まず一つ目は”バロックオペラ”という点です。作曲者のヘンデルが生きた時代に使われていた楽器=現代における古楽器(ピリオド楽器とも)によるオーケストラが編成され、当時のピッチA4=415によって、今回の上演はなされました。
通常、我々がよく耳にする音楽は、A4=440という音高に設定されており、この間にはおおよそ”半音分”の音の開きがあります。なので今回私にとっては、楽譜に記されている音より、実際に出てくる音は半音”くらい”低い、という状態でした。
…この”くらい”というのが実に曲者でして、実際にはジャスト半音ではないですし、そもそも平均律で調律された音に慣れている私不肖テノールの音程感覚など、バロック音楽の前では無きに等しく、最後の最後の瞬間までこのピッチの感覚には悩み続けることとなりました。
~”我々古楽奏者はミリ単位で音程を合わせます。皆さんのそれは今のままではインチ単位です。 by某マエストロ~
もう一点は、演出家に抜擢されたのが、新進気鋭のダンサー・振付家の中村蓉氏だったということです。中村氏は同シリーズの《ジュリオ・チェーザレ》で振付を担当され、その活躍を買われ今回オペラ初演出に挑戦されました。
当時も一緒に仕事をされて、今回も参加されている音楽スタッフの方から事前に通達は(笑)受けていたのですが、歌手にも容赦なくダンスの指示がとび(それでもだいぶご勘弁くださっていたのだとは思いますが)、立ち稽古の前半戦はほとんど”振り入れ”の様相を呈していたぐらいです。
オペラ初演出の中村氏、ほとんどが今回の公演で二期会デビューの新人歌手たち、そして経験豊かな音楽スタッフや舞台スタッフの皆さま、全員が文字通り一丸となって臨んだ公演でした。
結果は、見に来てくださったお客さまに判断していただく他ありませんが、本格的な集中稽古が始まってからの1ヶ月半はあっという間で、辛さとキツさを、楽しさと幸福感で包み込んだような時間でした。
稽古初期の頃。
今見返してみると、どうにもぬるいポージングだ…
おそらく、通称”虎の穴”での千本ノックの模様。
公演Tシャツ(のちにパーカーまで!)を作成してくれた、別組セルセ役の澤原行正氏!
彼とは藝大学部時代からの付き合いで、懐かしさと、月日の流れを改めて感じました。笑 相変わらずよく歌うテノールで、感心しつつ、悔しさも感じたりもしつつ、でも一緒の役をできてとても嬉しかったなあ!
Tシャツお披露目&役柄アピール!
そして紹介し忘れてはならないのが、ダンサーの皆さま!
ダブルキャストの歌手と違って、シングルキャストにも関わらず、劇中入れ替わり立ち替わり舞台に立ちっぱなしだった、ある意味今回のプロダクションの主役たちといっても過言ではありません。リフトされて運んでもらったり、肩車してもらって歌わせてもらったり、一緒になんちゃらトレインのダンスやってもらったり…笑
上段左から
池上たっくん さん
田花 遥 さん
山田 暁 さん
北川 結 さん
久保田 舞 さん
下段左から
中村 理 さん
(この時新堂は、まだセルセのヘアメイクの相談が終わっておらず、ひたすら伸ばしっぱなしのボサボサの極みでした)
両組歌手&ダンサー&中村氏での写真!!
稽古中は、歌唱の際も常にマスクを着用していたので、全員の素顔が写っている写真はとても貴重です!
(スタッフの方々も入っていただいた写真もあり、時折見返してはムフフとなっております)
稽古場を後にし、劇場入り前最後のオーケストラ合わせの後。
(立ち稽古中は現場に入るとすぐに稽古着に着替えることもあり、私なんかはズタボロの格好で現れることもしばしば…この日はやや気合を入れて行きました笑)
先述したとおり、今回の公演Tシャツ及びパーカーのデザインから発注まで、多忙な中1人で引き受けてくれた澤原氏に、歌手からサプライズでウイスキーをプレゼント!なんとなく理由をつけて集合写真を撮っている勢いで突然渡したので、良い表情をゲットできました笑 今頃楽しんでくれてるといいな〜
劇場に入ってからの写真は、実はあまりありません。
場当たり、H.P.、G.P.そして本番と、怒涛のように過ぎ去っていった1週間でした。
これは研修所時代に演出家の先生にも言われたことなのですが、本番の日は必ずホールで声を出して、今日の自分の調子を知りなさいとのこと。開場前のホールで、オンブラマイフを歌っているところを、撮られていたらしい!
(見切れているのは、カナランタこと雨笠さん!)
本番直前、セルセ王(?)のヘアメイクをしてもらっている模様。
嬉しがって写真をとっています。
第一幕
オンブラマイフ
一見するとオペラの写真とは思えないこちらの一枚。
実はこれ、オペラなんです。
引用元:ぶらあぼ・ゲネプロレポート
そのほかの写真、レポート全文は以下のリンクよりどうぞ!
ダブルキャストで、本番はそれぞれ一回のみ。
長い時間をかけて作ってきた舞台を一度しかお見せできないのはとても残念でしたが、かけがえのない時間でした。
劇中で登場した小道具を持ち帰って嬉しそうな人。
2日目の公演は、客席から応援しておりました!
開演前に、ホールの側に生えている立派なプラタナスの木の下で。
最後1週間くらい本番に向かって駆け抜けている間は、何か根拠のない自信のようなもので突き進んでいくのが常なのですが(良いか悪いかは置いておいて)、終わって冷静になってみればやり残した事や後悔が多く浮かんできます。ずいぶんと、ひどい歌を歌っていたのかもしれないという不安や、事実も容赦なく襲ってきます。
今回得た糧を胸に、また一歩ずつ進んでいく他ありません!
由暁