昨年末以降の米国とイランの緊張を見ていて、このまま戦争に突入かと心底心配しました。

今日、両国は冷静さを取り戻しています。

この一連の推移を見ていると「瀬戸際外交のリスク」と「抑制の重要性」を痛感させられます。

 

イランはこれまで親和性の高い武装勢力(ハマス、ヒズボラ、フーシなど)を通じて米軍施設に小規模な攻撃を繰り返してきました。

そしてついに米国人の死者が出ました。

トランプ大統領は「一線を越えた」として革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害。

一気に緊張が高まりました。

 

米国もイランも、中東の近隣諸国も、泥沼の全面戦争は望んでおらず、両国民も決して戦争を支持しないでしょう。

両国がお互いを自制し、落とし所をみつけたことに加えて、イラン軍が自国民も多数搭乗するウクライナ航空機を誤って撃墜するという悲惨な事件もあり、緊張は少なくとも一時的に後退しました。

 

しかし、中東の不透明感が消えることはないでしょう。

欧米列強が過去に無理やり引いた国境線が憎しみの連鎖を生み続けています。

イスラム教の宗派(シーア派、スンニ派など)間や民族間の争いも絶えません。

イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプトなどの大国以外は政府より強い武装勢力の存在が影を落としています。

更に、米国の影響力が弱まったところにロシアと中国が強い存在感を示し始めています。

特にシリア内戦ではロシア軍の「極東」部隊が実際の戦闘で大きな役割を果たし練度を上げていることも我々日本人は忘れてはいけません。

 

日本が輸入する原油の8割はイランに面するホルムズ海峡を通って日本に届けられます。

万一海峡が封鎖されれば我が国の国民生活に大きな支障を来たします。

我々の生活と実は密接につながっている中東情勢。

日本の外交力を駆使して中東の安定に寄与することが国際社会からも日本国民からも期待されます。