政策研究大学院大学のステーツマン・プログラムでイスラエルに出張しました。

このプログラムは大学の教授陣と与野党の若手議員6名からなるミッションで、

私は行き先と目的の選定や訪問先との交渉にも携わりました。

 

今回のミッションではイスラエルの政府機関やシンクタンクを訪問し、

日本とイスラエルの交流を促進すると共に、

イスラエルの①イノベーション、②サイバーセキュリティー、③インテリジェンス、

などの強さの源泉を研究することにしました。

↑イスラエルサイバーセキュリティ庁長官と。

 

訪問先はイスラエルのサイバーセキュリティー庁長官、

イノベーション庁、リヒター国会議員(元治安機関長官)、

イスラエル国防軍サイバー防衛総局INSS(外交安全保障シンクタンク)、

イスラエル空軍トレーニングセンター、アメリカユダヤ人協会、

IAI(航空機メーカー)Auto Talks(コネクティッドカー システム製造・販売会社)

パレスチナ暫定政府ムハマンド・シュタイエ首相、駐テルアビブ日本大使館・・・

と超盛りだくさん。

3泊5日(実質3日)に日程をもりもり詰め込みました。

 

↑ユダヤの聖地「嘆きの壁」とイスラムの聖地「アル=アクサー・モスク」

 

イスラエルは1948年に英国から独立した比較的新しい国家です。

ナチスドイツやソ連政府による大虐殺を経験したユダヤ人が7割を占めています。

首都エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地が数キロ以内に混在し、その覇権を巡って何世紀も争いが続いていた経緯もあり、今日でもイスラエルは国家存続の危機にさらされています。

現在はゴラン高原の領有権をめぐって戦争をしていたシリアに加えて

イランが支援するパレスチナのハマス、レバノンのヒズボラなどの過激派勢力とも

緊張が続いています。

 

↑イエス・キリストが磔になった場所に建てられた廟。ゴルゴダの丘も嘆きの壁から程近い。

 

イスラエルは国家存続の為には政治的にも軍事的にも経済的にも強くなるしかありませんでした。

その為に、アメリカとの安全保障同盟を基軸としつつも、自らできるたくさんのことを世界一流のレベルにまで磨きあげました。

まさに「必要は成功の母」と言えるでしょう。

 

石油などの天然資源がないから「人間が資源」と割り切り、教育に投資をして、今やGoogleやトヨタなど世界のトップ企業の研究開発センターが続々と立ち上げられています。

イスラエルでは高校を卒業したら男女共徴兵ないし社会奉仕に2〜3年従事します。

国家の課題、社会問題の現場に身を投じ、国家や先端企業の最新事例に携わりながら研鑽を積みます。

 

例えばある高校生は素質を見込まれて兵役の間にサイバーセキュリティーの部隊に配属され、そこでサイバーのプロになり、退役後に一流大学の専門課程に進学しました。

 

またある高校生は要素技術の素養を嘱望されて研究機関に入り、退役後に一流企業に就職した後に大学院での研究を経て起業しました。

 

進学や就職の前に実社会で経験を積むことにより人生の目標設定がより具体的になり、勉強のモーチベーションが上がり、専門性を高め、イノベーションや起業のチャンスを押し上げています。

 

私の友人の空軍サイバー部隊の退役将軍は退役前に「J6」と呼ばれるイスラエル国防軍サイバー総局を創設し、退役後に起業。現在は世界の政府機関にサイバーセキュリティーのソフトを販売しています。

 

イスラエルのイノベーション庁は毎年5.5兆円の予算を起業支援に投じており、

ベンチャーキャピタルの役割も果たしています。

 

イスラエルの若者も日本同様、転職を躊躇しないそうで、職場はいかに優秀な人材にレベルの高い任務を与えてモーチベーションを維持するかに腐心しているとのことでした。

国の出自から「祖国と自分自身は自らの手で守る」という考えが常識として定着しており、その延長で「自らの活路は自ら切り開く」という起業家魂が大企業志向を圧倒的に上回っているようです。

 

↑パレスチナ暫定政府のシュタイエ首相

 

イノベーションを後押しする環境とは

「起業や研究開発に失敗しても、銀行からお金が借りることができて、結婚できて、再び挑戦できる社会」

とイノベーション庁の幹部が語っていました。

クレイジーなアイディアや失敗した人に冷たい日本は大いに見習うべきと感じました。