キングメーカー 大統領を作った男

 

金大中(キム・デジュン)氏に選挙参謀、厳昌録(オム・チャンノク)氏あり。

実在する光と影の男2人をモデルに描く政治裏側劇。

 

 

 

  あらすじ

 

長きにわたる独裁政権の打倒を目指す政治家キム・ウンボム(ソル・ギョング)と、その理想に共鳴した影のブレーン、ソ・チャンデ(イ・ソンギュン)。

現職大統領率いる与党と比べてカネもなければ人脈もない。

ないないづくしのウンボム陣営のために、チャンデは誰も思いつかなかった大胆な戦略に打って出る。

それはネガティブキャンペーンから詐欺まがいの贈賄工作まで、勝つためにはどんな手段も辞さない汚いやり口。

強大すぎる敵を倒すためには毒をもって毒を制するしかない。

チャンデの覚悟はある爆破事件を引き起こし、ウンボムとチャンデの共闘関係にも最大のピンチが訪れる――。

(映画『キングメーカー 大統領を作った男』公式サイトより)

 

 

なんて面白い映画。

政治が絡むとろくなことがないと思っているが、政治の裏側工作をこうも堂々と見せられると、もはやコントにしか見えない。

悪行には悪行で返すという必殺仕事人みたいな爽快感すら覚える。

2022M-1グランプリで優勝した漫才師が、世間のグレー部分を毒舌でまくし立てて、よくぞ言ってくれましたと評価を得たが、まさにあんな感じ?

だけど、これら映画で描写されたことが、実際にあったことだというからほんとシャレにはならない。

意外にも、あれほどドラマチックな一生を遂げた金大中氏に関する映画は本作を含み、わずか2本しかないという。

※2本と書きましたが、「偽りの殺人」のオ・ダルスが演じた役のモデルが金大中氏ということでした。

 

 

金氏の日本での出来事を描いた「KT」という日韓合作映画があるらしいが、韓国では不入りを理由に2週間で打ち切りとなったらしい。(ウィキペディア)

これもまた政治的に封印されたんだろうな。

 

 

ソル・ギョングVSイ・ソンギュン

ソル・ギョングの時代が再来したんじゃないのか。

「hitoが見た2022韓国映画大賞」で堂々の第1位に選ばせてもらった「茲山魚譜」と同様、本作のソル・ギョングも格別だった。

ここ数年の韓国映画界は、hito推しのソン・ガンホ一強時代が続いてきたが、ソル・ギョングが復活したとなるとガンホもうかうかしていられない。

だって、私が韓国映画を見始めた頃は、ハン・ソッキュ、ソル・ギョング、ソン・ガンホの序列だったから。

そのソル・ギョングだけど、正義感あふれるカリスマ政治家としてのキム・ウンボムには男でも惚れるんじゃないかと思うくらいかっこいい。

いや、まじ素敵。

 

まさに"光"の中にいる政治家。

 

一方、ウンボムの影に徹した、選挙参謀ソ・チャンデ。

これを「低音美声」のイ・ソンギュンが演じる。

タイトルが「キングメーカー 大統領を作った男」というだけに、この映画はチャンデ視点からの構成となっているにもかかわらず、ウンボムを演じたソル・ギョングが2022百想芸術大賞の最優秀男性演技賞を受賞した。

もったいないなあ。

こういう影の役って、光よりも個性が強くて、インパクト大なのに。

イ・ソンギュンはあの美声&スタイルで損したかな。

都会的でインテリすぎるというか。

 

あれが、例えば「背徳の王宮」のキム・ガンウとか、「操作された都市」のオ・ジョンセなんかが演じたら、もっと庶民派な雰囲気も楽しめる。

あるいは、「茲山魚譜」のピョン・ヨハンと再度タッグを組むとどうなるかなあ。

厳昌録(オム・チャンノク)氏

 

 

 

チャンデの見せ場

ウンボムの演説にしびれたチャンデが、"草の王"という押し花を挟んだ手紙をウンボクに送る。

いてもたってもいられないチャンデがウンボムの事務所に押しかけ、給料はいらないからお手伝いさせてくださいと頼む。

ここのシーンが印象的なのだが、ウンボクは、手紙に挟んであった花は何だと聞いた。

それは、"草の王"という毒草で、薬にもなると言った。

つまりは、自分を"草の王"に例え、自分は毒にも、薬にもなるという。

ウンボクから薬剤師かと問われ、

 

自分は、・・・

 

と言ったところで、バーンと

킹 메이커

という言葉が画面いっぱいに表示された。

調べてみたら、"キングメーカー"だった。

かっこいい演出。

 

しかし、最初から二人はすれ違っていた。

ウンボムがアリストテレスを引用してこう言う。

"正義こそが社会の秩序だ。"

すると、チャンデはアリストテレスの師匠のプラトンを引用した。

"正しい目的のためなら手段は不問"

 

チャンデの戦略がはまり、その後2回当選を果たすが、汚いやり口に運動員連中から疎まれ、事実上の謹慎処分となる。

 

それでも、絶対に負けられない3回目の選挙戦。

与党が大統領までかつぎ、金銭飛び交う地域戦を展開する中で、ウンボクは再びチャンデを呼ぶ。

そして、不満を持つ運動員たちを説得するよう命じ、チャンデは見事ウンボクの期待に応える。

チャンデ大一番の見せ場。

 

 

チャンデの後悔

ウンボクが訪米中の留守宅で起きた爆発事件が、チャンデの自作自演だと疑われた。

それを主張したのが、与党の参謀イ・ジンピョ(チョ・ウジン)。

※チョ・ウジンは百想芸術大賞助演男優賞を受賞した。

実際は、チャンデを陥れ、ウンボクとチャンデの溝を深める与党の罠だった。

ジンピョは与党側にチャンデを引き抜こうと画策していた。

 

ウンボクは事の真相を聞こうとチャンデを家に呼ぶ。

チャンデは、ウンボクからハグされるものの、自作自演の流れを止めたと聞かされ、裏で取引が行われたことを察する。

チャンデを外すという条件で、爆発の原因の別の答えが用意されたか。

チャンデは、念願の公認を得て議員になる道が目前まできていた。

表情が険しくなり、本音発言でウンボクを追い込む。

ついには、ウンボクまで理性を失い、言ってはいけない言葉を発した。

"君の仕業か?"

 

チャンデの表情が固まった。

10数秒の沈黙のあと、チャンデがこう言った。

 

はい。そうです。

 

あとはヤケクソな言葉の連発。

 

これが決定打となったか、チャンデは陣営から外される。

ウンボクが10年来大事にしまっていた手紙。

その中に挟まれていた"草の王"の押し花が粉々に風化した。

なんとも切ないシーン。

 

17年後、二人が再会した。

(ウンボク)

譲歩すべきだった。

選択を誤り、後悔しているよ。

時を戻せたらどんなにいいかとね。

 

シーンが切り替わると、チャンデの前には誰もいなかった。

ああ、チャンデの妄想か。

そう、ウンボクに言ってもらいたかったか。

それとも、チャンデ自身の本心か。

 

 

○おわりに

二人の心理戦が見事で、時々、パソコンが固まった?と思うくらい、微動だにしないウンボクやチャンデがいた。

何度も言うが、イ・ソンギュンの美声に誘惑される。心地良すぎ。

 

 

 

画像は、映画.comさんから引用させていただきました。

 

 

●hito基準による評価(10点満点)

泣き又は感動2(3点満点)

爽快感1

脱力感1

ストーリー1

胸きゅん度又は嵌り度1

没頭度2(2点満点)

メッセージ性1

9点   

 

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