
渋谷パルコ劇場にて、コナ・マクファーソン作「海をゆく者」を観る。
アイルランドのダブリンにある一軒家のリビングを舞台に、
愚かな5人の男が繰り広げるクリスマスイブの狂宴。
飲んだくれては、ののしり合い、ポーカーに熱狂して、
果てしなく酒を飲みつづける。
脱ぎっぱなしの服、食べ残した皿やグラス。
臭い立つような舞台には思いっきり引いてしまう。
クリスマスイブに観るお芝居の気分とは程遠い。

いわゆる労働者階級の男たちの会話には
知性もマナーも全く無い。とにかく言いたい放題。
兄リチャード(高橋克実)は酒の飲みすぎで目が見えなくなり、
弟シャーキー(平田満)は過去に殺人事件を起こし、
その後勤め先の上司の妻と不倫関係になり解雇され、
アル中が過ぎて断酒中という有様だ。
リチャードの友人であるアイバン(浅野和之)は
メガネを無くして困っている。
そしてシャーキーの元カノと暮らしているニッキー(大谷亮介)。
その彼が連れてきたのが謎の男ロックハート氏(小日向文世)だ。

彼らの演技は素晴らしいが、その分リアルすぎて
うんざりする位に下品に落ち込まされる。
一体この芝居の意図は何なんだろう?
途中からそんな事ばかり考えながら観ていた。

純粋で混じり気のない人々を描くために、知性やマナーを省いて
本音だけで表現しているかも知れない。
いわゆる「無垢なる愚者」というやつだ。
となると見え隠れしてくるのが「神の恩恵」になってくるけど
果たして、そうなのかな。

謎の紳士、ロックハート氏は自分は悪魔だと自白している。
25年前にシャーキーの魂を賭けてポーカーで負けている。
そのリベンジで登場してきたという。
その魂をかけて再びポーカーの勝負が始まった。
果たしてその結果は・・・

さて悪魔と名乗る男が登場し、無垢なる愚者たち、
そして殺人という罪を背負っているシャーキーと
それぞれの立ち位置が見えてくると
やはり「神の恩恵」によって救われるのは誰なのか
という感じが強くなってきて
やはりキリスト教のお話なのかと思えてきました。
だけど何となく何かが違う。
妖精が住んでいるアイルランドの
冬至の祭りと集合したクリスマスのような民話。
こんな世界。
ロックハート氏の悪魔も、妖精と共生しているような
キリスト教以前の世界観での「神の恩恵」ですね。
寅さんが言うところの「お天道さまは見ているよ」みたいな
説教臭くないキリスト教と言ったところかな。
最後のロックハート氏のセリフがいい。
「私が欲しいのはただ一つ、皆さんにあって私にないものだ」
「へぇ?ちなみに何、それ?」
「安らかなる魂」
「は?冗談がうめぇや」
(写真は全て引用写真)