うず潮(1964) | YOSHI DESIGN

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「放浪記」で有名な作家、林芙美子の青春時代の物語。

人気のあったNHK朝の連続テレビ小説「うず潮」を元に、

ヒロインが尾道高等女学校の最終学年(大正11年)を

卒業し上京するまでを描いたもの。

吉永小百合の主演で

舞台である尾道の穏やかな景色が心地いい。



沢村貞子さん、女学生の服装チェックしながら

「あら、あんた見かけに依らず肉体美ね」

なんてセリフが、田舎の教師なのに江戸っ子しちゃってます。



母親役の奈良岡萌子さん、

行商しながら苦労しているのに

漂う色気があります。

向かいのおばちゃんは三崎千恵子さん。

すでに寅さんのおばちゃんが完成されています。

このベテラン女優二人も

下町の江戸っ子風情が出ていて

それぞれの女の人生の断面をキラリと

見せてくれるところが粋でもあります。



東京帝国大学生である大杉光平(浜田光夫)に

自作の童話を読んでもらっているフミ子(吉永小百合)。

身分の差に、ためらいながらも

寄り添う気持ちが前へと出てしまう場面。



そのとき、私の心に初めて悲しみが流れ

私は自分が大杉光平に惹かれていることを知った。

というナレーションが泣かせます。

喜びでは無くて、悲しみが先というのが

心の機微を感じさせる表現です。



二人の付き合いに反対している

光平の母親のもとを訪ねたフミ子。

心の内を吐き出す見事な演技となります。



おかあさん、ホンマのこと言うたら、うち

光平さんと駆け落ちしたいほど

光平さんが好きです。

でもしません。

両方の親を悲しませるより

諦めたほうが、自分でもつらうないけん。



人を傷つけず、怒らず、悲しみも抑え、

貧乏でも明るく、嫌われない生き方。

この優等生のメソッド(方法)を持って、

自らエグザイル(故郷離脱者)となっていくラストシーン。

この離れ技とも言える演技を

体現できるのは吉永小百合さんならでら であります。



「ローマの休日」のアン王女は、

恋を諦め、自分個人の幸せを選ばなかったが

フミ子は

恋を諦め、自分個人の夢へと旅立っていった。

それぞれの人生に、それぞれの選択で

現代よりもずっと重い

大人への扉を自分で開けていますね。