人生は感動と失望、楽しみばかりでなく苦しみ、悲しみも繰り返すんですけど、
これはあり得ないだろうという感動を何度も繰り返して見せてくれたのが菊池涼介。
もう50年近くカープの試合を観たけど、間違いなく最高の野手です。
というよりも、日本史上最高ですね。
菊池が入団してから球場に行く機会がぐっと増えました。
全盛期は過ぎましたが、その分安定性は上がりました。
二塁や遊撃といった業務繁忙のポジションで、失策ゼロで1シーズン通すことなど「悪魔の証明」に近いと思っていたが、
昨季、広島・菊池涼介がなし遂げた。503回の守備機会で失策ゼロ。つまり守備率10割。
宇宙人はいる、と示すには宇宙人を1人連れてくればいいが、宇宙人はいないと証明するのは難しい。
そんなふうに、所詮無理と思われる事柄の立証を迫るのが悪魔の証明。
1年間失策無しの完全性を求めることも、それに似て、ひねくれた打球も多い二塁ではまず無理、と思われた。
投手、捕手、一塁手、外野手で無失策の例はあるが、二塁手、三塁手、遊撃手では菊池涼まで誰もいなかった。
挟殺プレーで、走者が振りだした腕に送球が当たっても失策になりうるし、いちかばちかの本塁返球が、捕手と走者が交錯してこぼれて、失策がつくこともある。こうした不可抗力の「事故」もあることを考えると、守備率10割はやはり悪魔の証明なのだ。
それを菊池涼はやってのけた。
素晴らしいのは安打を凡打に変える攻撃的な姿勢を貫いたこと。
昨季もスーパープレーを重ねた。8月のDeNA戦のプレーも印象深い。
大和の中前へ抜けようかという打球に飛びつき、一塁に3バウンド目くらいで届けて刺した。セーフとなっても安打が記録されるだけだが、送球がそれて二塁への進塁を許したら、失策がつく。
二塁、遊撃、三塁で失策1、2個に収めた選手も過去にはいた。それだけで名人と認定していいくらいのもので、攻めの守りを通してのゼロはほとんど神業。
これに刺激を受けたのが、パ・リーグの遊撃で3年連続ゴールデングラブ賞の西武・源田壮亮だ。
「二遊間、いや、ほかのポジションでもノーエラーで1年間いくなんて、不可能じゃないかと思っていた」。
菊池涼によって「それができるんだと希望をもらった。僕も目指したい」。
狙ってできる記録ではないかもしれないが、悪魔の証明に挑む気持ちが、プロならではのアピールになる。