現実と虚構に追われる日々

現実と虚構に追われる日々


某IT系企業に勤める俺は、最近、いつも同じ夢をみることに悩まされていた
「何か」に何度も追いかけられる夢
それは、現実の生活において仕事と時間に追われているからなのだろうか
ある日、取引先の課長と仕事の関係の打ち合わせのため

一緒に食事をすることになった
その後、その課長は俺にある店を紹介した 

そこは、あるゲームを提供する謎のクラブであった
そのゲームに参加することになった俺を待っていたものは…


 

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一千万への賭けと逃亡

俺は夜の間、ずっとどうやってペンダントを回収するかを考えていた。


追っ手となる鬼はペンダントの周りで不審な行動をする男がいたら、
ターゲットである俺と見なして近づいてくるであろう。


よって、俺が直接ロッカーからペンダントを回収するのは危険だ。


どうやってペンダントを回収するか。
そして、仮に再びペンダントを手に入れた後、どう追っ手に捕まらずにするか。
問題はその二点であった。


俺はしばらく考えてある結論に達した。


これは賭けにでるしかない・・・


考えがまとめると俺は眠りについた。

明日に全てを賭けるために。


昼過ぎまでホテルで過ごした後、レンタカーを借りた。
もちろん周囲を極度に気にしながら。


そして、その足で服を買った。
昨日、追っ手に捕まったとき自分の服装は知られているからである。


そして、帰宅で学生やサラリーマンが多くなる夕方まで身を潜めた。


時間になると俺はあたりを見渡した。


そして、ある女子高生に声をかけた。
いかにも遊んでいそうな女子高生にである。


俺はその女子高生にペンダントの回収を頼んだ。
最初は自分をナンパ目的か怪しいと思ったのか相手にされなかったが、
何度も頼み、報酬として一万円、いや、二万を与えると言ったら、
途端に素直に用件を聞いてくれた。


俺は、回収するときにはペンダントを誰にも見られないように封筒に入れ、
そしてファーストフードで待っている自分に届けて欲しいと頼んだ。


女子高生は「ホントにお金くれるの」と何度も聞いてきたので、
最初に一万を渡し、戻ってきたらまた一万をやると言うと、
喜びながらロッカーへと向かっていった。


こんな重要なことを頭が悪そうなこの女子高生に委ねるのはかなりの不安であったが、他にこんな頼みを聞いてくれるような人物が浮かばなかった。


女子高生がペンダントをとりに行っている間は俺はまったく落ち着かなかった。
あたりを常に警戒し、今か今かと女子高生の帰りを待った。
その時間はとても長く感じた。


なかなか来ない・・・


もしかして鬼にペンダントを奪われたのではないであろうか。


そんな考えが脳裏に浮かんだ瞬間、女子高生が帰ってきた。


俺は、すぐに封筒を奪い中身を確認した。

あのペンダントである。

俺は、女子高生に金を与えるとすぐにその場を離れた。


そして、停めておいた車に飛び乗ると、一気に車を走らせた。


ペンダントを持った瞬間に発信機によって俺の場所はすぐに分かってしまう。
とにかく逃げなくては。


首都高に入り、さらに東名に乗り継いだ。


後は休みもしないでひたすら車を走らせた。




・・・




もう、どれぐらい走っただろうか・・・


時間は23時を過ぎていた。
もうすぐだ。


あとほんの少しで一千万が手に入る。


俺は一分一分時刻が回るたびに時計を確認した。


あと、30分・・・
あと、20分・・・
あと、10分・・・
あと、3分・・・
あと、2分・・・
あと、1分。


そしてついに、時計は0時をさした。


やったぞ。ついにやったぞ。


俺はこれで一千万円を手に入れたぞ。


俺は、車内で歓喜の声を上げた。

ペンダントの秘密

(続き)


「ゲームのターゲットの方ですね。我々に同行してくれますか?」


男が俺に話しかけてきた。
周りにはその男のほかに数人いた。


捕まってしまった。


俺はそう思ったが、


何のことでしょうか。人違いではないでしょうか。


と言って、その場を離れようとした。


しかし、男の一人が、


「あなたの名前と顔は分かっています。そして、ゲームに参加していることも。」


俺は、なんとかここを切り抜けようとした。


急いでいるんで。


と、走り逃げようとすると、二人の男に腕を掴まれ、
背中にはナイフのようなものを突き付けられてた。


「この場所では人が多いので、移動してもらいます。」


と言われ、連行されてしまった。


近くの路地裏に連れられると、
男は、ペンダントを渡すことを要求した。


俺はペンダントなど持ってないと言い張った。


すると男達は俺の体を押さえ付け、ペンダントを探し出した。

しかし、男達はペンダントを見つけることは出来なかった。


なぜなら今、俺は本当にペンダントを持っていなかったからである。


俺は激しく抵抗しながら、大声をあげて助けを求めた。


すると、たまたま通り掛かった人がこの場を見つけた。


俺は、警察をと叫んだ。


「警察」という言葉を聞くと男達は俺から離れ、その場から逃げ出した。


その後警官が駆け付け、事情を聞かれたが、
俺はちょっと肩がぶつかってトラブルになったと言った。


ゲームの事を話しても理解してもらえないだろう。


しかし、間一髪の所であった。


実はペンダントはある場所に隠していた。
それも、自分で身につけていない。


俺は、今まで何故自分の居場所が分かってしまうのかが分からなかった。
しかし、ある一つのことに気がついた。


ペンダントである。


ペンダントの中に発信機がついているのではと思った。


そこで、一旦、ペンダントを手放すことにした。


もし、これで俺の居場所が分からなくなるのであれば、
それはペンダントに発信機がついていたことになる。


そこで、駅のロッカーにペンダントを預けることにした。


もし、これで追っ手が来ないのであれば、
それはペンダントに発信機が付けられていたことを意味する。


俺は、周囲に注意しながら、ビジネスホテルに向かった。


そこで、ノートPCであのサイトの追跡版を確認した。


しかし、追跡版は更新されていなかった。


やはりペンダントに発信機が付けられていたのに違いない。
恐らく、ペンダントが一箇所から動かないのに、
俺を確認することが出来ないからであろう。


そうなると、鬼は俺の場所を把握していないと思われる。
しかし、ペンダントの場所は分かっている。


恐らく鬼はペンダントのあるロッカーの近くに潜んでいるに違いない。


問題はペンダントをどのようにして回収するかである。


それを考えているうちに、夜が更けていった。


一千万円まで、あと一日…

一千万まで、あと二日

夢の中でも俺は追いかけれらていた。

逃げても逃げても追いかけてくるもの。

それは永遠に続くかのようだった。


目を覚ますと、外は雨が降っていた。


これは俺にとって恵みの雨となるのだろうか?
それともゲームオーバーを知らせるものとなるのだろうか?


俺は疲れからか、体があまり動かなかった。


体を無理矢理起こし、ノートパソコンの電源を入れた。

そしてあのページを開いた。


その追跡板を見た瞬間に、一気に目が覚めた。


新着情報にはこう書かれていた。


7:47 ターゲットは赤羽に潜伏していると思われる。


何故、場所が分かったのであろうか?


昨夜の時点では、俺の居場所は分かっていなかったはずである。
池袋からは完全に追っ手を撒いたはずであった。


何故?


そう思っていると、さらに新着情報が更新された。


8:01 ターゲットは現在、赤羽駅近くにいると思われる

完全に俺の場所が把握されていた。
いつまでもここにいたら危ないと思った。


俺はこのホテルを出ることにした。
しかし、どこに逃げればいいのだろうか?


とにかくここを離れようと思い、チェックアウトをすることにした。
その時、ホテルに男達が数人入ってくるのが見えた。
その男達は、フロントに向かうと何やら聞いていた。

俺はそれを見てすぐに奴らは追っ手だと思った。
奴らにばれないようにと、俺はとっさにトイレに隠れた。


個室の中でノートパソコンで追跡板を確認すると、

そこにはもう、今いるホテルの名前までもが記述されていた。


完全に居場所がばれていた。


何故なのか。


俺は考えながらも、トイレにあった窓から外に逃げ出した。


追っ手には誰にも見られていないはずである。

それにも関わらず、ここまでも詳細な場所がばれるとは…


ホテルの者にあのクラブの者がいたのだろうか?
俺はタクシーを拾うと、その場を離れた。


タクシーで手持ちの金が持つ限り移動した。


そして、降りてからコンビニで3万ほど卸した。

余計な出費が続いているが、一千万に比べれば何でもない額だった。


近くの公園のベンチで腰を下ろし、

再びパソコンを開いてあのページをチェックした。


俺はまた愕然とした。


追跡板には俺の移動先が更新されていた。


何故なんだ。


タクシーに乗っている間、常に後を確認し、つけられていないか見ていたというのに。

誰かに監視されているのだろうか?


とにかく一箇所に留まっているのは危険だと感じ、歩きだした。


俺は歩きながら考えた。


安全な場所はどこだろうか?
何故かは分からないが、相手には俺の居場所が分かっている。
居場所がわかっても手が出せない場所に逃げればすれば…


人が多いところはどうだろうか?
しかし逆に、周りの人間の誰が追っ手かは分からない。

どうすれば…


俺は、首に着けたペンダントを触った。


その時、ふと思った。
もしかして…
多分、そうに違いない…


俺は、駅に向かった。


駅に行き、俺はあることを済ませてきた。


もしも、俺の考えが当たっているならば…


そして、その場所を離れようとした時だった。


何者かが俺の背後から話かけてきた。

迫り来る恐怖

たった三日間耐えれば一千万が手に入る。


きちんと戸締まりをしていれば、大丈夫だと思った俺は、

この三日間家から出ることはせず過ごそうと思い、

三日分の食料を買い込んでいた。


防犯対策もしっかりした。

雨戸は常に締めることにした。

玄関には、もう一つ鍵をつけた。


会社のほうも有休をもらうつもりでいた。
大きな仕事が入っている時期だったが、一千万の方が大事だった。
遅い朝食を食べたあと、上司に有休願いのメールを出した。

ノートパソコンを閉じようとしたが、

ふと再びTAGについて検索を確認したい気がして、
ネットでTAGを検索してみた。

昨日同様あのクラブに関するものは見当たらなかった。


しかし、ブラウザを閉じようとしたとき、ひとつの検索結果が目に留まった。


TAG ゲーム 新宿 鬼 …


その一字一字をみるごとに俺の脈は早くなっていった。

俺はこのリンクを開いた。

表示されたページにはまさしくあの店のことが書いてあった。

そしてそのページの中に「今回のターゲット」と書かれたものがあった。

俺は恐る恐るそこのリンクをクリックした。


次の瞬間俺は自分の目を疑った。


そこには俺の顔写真に加え20代半ば、身長は175ぐらい、

練馬区在住と書いてあった。

俺は激しく動揺した。

急いでそのページを消した。


これは一体…


そう考えていると、突然玄関のチャイムが鳴り出した。


無視しても何度も何度もチャイムが鳴り続けた。

まるで、そこに居るのは分かっているかのように。
俺は全身から汗が流れ出すのを感じた。
耳をふさぎチャイムが鳴り止むのを待った。


その時間が永遠に続くかのように思えた。


どれくらいの時間が経ったのであろうか。
気がつくとチャイムは鳴り止んでいた。
俺はホッとした。


玄関に近付き外をみる小さな窓を恐る恐るみた。


そこには誰もいなかった。

安心して部屋にもどろうとした次の瞬間、

雨戸が、がたがたと音を立てだした。

誰かが雨戸を壊そうとしていた。

俺は急いで警察に電話をした。

しかし、助けを求めているうちに、

バリっと言う音とともに雨戸は取り外されてしまった。

そして、バリーンと大きな音が響いた。

何者かが、石で窓を割り中に入ろうとしていた。

俺はとっさにノートPCとペンダントを手に取り、ドアから逃げ出した。


あいつらだ、「鬼」が追って来た。


俺は必死になって走った。

とにかく遠くに逃げたかった。

駅に向かい、電車に飛び乗った。


息を切らしながら俺は思った。

ネットといい、家に侵入してきたこといい、ここまでするとは…


もう家には戻れないと思った。


池袋に着くと、コーヒーショップに入り一息ついた。

そして再びあのページを見てみた。

今回のターゲットの覧には確かに俺の顔写真と、

自分に関する簡単な情報が記述されていた。


そのページをよく見てみると下のほうに追跡板というものがあった。

そこには新着情報という文字が点滅していた。
そこを開いてみると、
スレッド形式で俺の行動が書かれていた。

12:23 ターゲットアパートから逃走
12:35 西武線上りに乗車服装は白のシャツにチノパン
12:59 ターゲットと思われる人間を池袋改札にて確認
13:07 ターゲット西口に移動中

俺は足が震え出した。


周りを見るとノートパソコンを見ながら俺を見ているサラリーマンや、

携帯をみながら、ひそひそと話しながらチラリと俺を見る二人組の若い男、

携帯で何やら伝える女の姿があった。


俺は周りにいる全ての人間が俺を追ってくるように感じた。


その場を逃げるようにして立ち去ると、丸井に駆け込んだ。

今着ている服装はばれている。

店で新しくTシャツを買い、サングラスと帽子を買った。

そして、誰も見ていないことを確認してからトイレに入り、

買ったTシャツに着替え、サングラスと帽子を着けた。

そして、辺りをうかがうようにしてトイレから出ると、

非常階段を使って下に降りた。


そして、人気のいない所で、タクシーを拾った。


行き先は決めていなかったが、とにかくここからは離れたかった。

それと、あの店がある新宿からも、できるだけ離れたかった。


ただ、手持ちの金もあまりないので、とりあえず、赤羽に向かった。

車中で何度かあのページの追跡板をチェックした。しかし、そこには


13:20 ターゲットを丸井付近にて確認

以降は更新されていなかった。


俺はとりあえず一安心すると、赤羽でビジネスホテルに泊まることにした。


部屋に着いてから再びあのページを見たが、更新はされていなかった。

俺は少し不安に思いながらも、疲れからか、

いつの間にか眠りについてしまった。


欲望と恐怖との葛藤

俺は次のゲームに参加するか迷っていた。


クリアすれば一千万という賞金が手に入る。
しかし、前回のゲームのことを思い出していた。


鞄を盗んできた男、森との事、電車での男…


その中でも、森との出来事は辛かった…


もう二度とあんな思いはしたくなかった。


しかし、今、手元には100万がある。

よく考えれば本当にこれだけの金が手に入ったものだと思う。


次のゲームの参加料は111万である。
手元には100万あったが、あと11万払う必要があった。


前回までは参加には実質1万で参加できたが、今回は11万かかる。
ここで油断させといて11万を騙し取る詐欺ではないかと考えた。


俺は詐欺とTAGという言葉でネットを検索してみた。

しかし、いろいろ調べたが、あの店に関する情報は見つからなかった。


その後、俺はふとBMWのサイトを見た。

何年も前から欲しかった車。
一千万あれば充分であるし、金も半分以上は残る。


今の給料ではどんなに必死に働いても、

1000万を稼ぐには3年はかかる。

例え、3年でそれだけ稼いだとしても、手元にはいくら残るだろうか。

生活を切り詰めても、月に7,8万しか貯蓄できないでいた。

1000万を貯めるにはどれくらいかかるのであろうか?


俺は、自分の欲しいものを思い浮かべていた。

大型の液晶テレビ、最新のノートパソコン、アルマーニのスーツ…


そして、BMWに乗って走っている姿を想像した。

高速を、レインボーブリッジを、湘南の海の近くを・・・


次に助手席に乗せている女性を考えた。

やはり浮かんできたのは森であった。


俺は森のことを諦めきれなかった。


もう一度、楽しく話がしたい。

もっとデートもしたかった。


そして、もう一度抱きしめたかった。


俺は何となくだが、次のゲームをクリアすれば、

森が自分のところに帰ってきてくれるような気がした。


大金が手に入れば、自分の欲しいものが手に入るだけでなく、

彼女に大きなプレゼントを買ってあげることもできる。


そう考えると、次のゲームに挑戦する意欲がわいてきた。


俺は、ここまで二つのゲームをクリアしてきた。


次も必ずクリアできるはずだ。


何度も自分に言い聞かせた。

不安と恐怖を取り払い、自信を持たせるために。


そして、俺は次のゲームに挑戦することを決めた。



夜になると、再びあのクラブへと向かった。


いつものように仮面をつけて店内に入ると、

明らかに前回よりも客の人数が増えていた。

50人以上はいただろうか。

誰もが俺が最後のゲームに挑戦を知っているかのように。


しかし、覚悟を決めている俺は動じなかった。

Aレベルなんだ。これぐらいの人数になるのも頷ける。


奥の部屋に入ると、我孫子氏が待っていた。


「お待ちしていました。ご来店いただけたということは、

 次のゲームに挑戦する気持ちになったといことでよろしいでしょうか?」


俺は、そうです。力強く言った。


契約書にサインをすると、我孫子氏からペンダントを渡された。


今回のペンダントは赤い宝石のようなものがついていた。

それは光に当たると怪しく輝いた。


そして、我孫子氏と共に部屋を出ると、

50人以上の仮面をつけた客達が、

自分達が出てくるのを待っていたかのように、

部屋の入り口に顔を向けていた。


「皆さんにお知らせがあります。

 今回こちらのお客様が最終ゲームに挑戦することになりました。」


と、我孫子氏が行った後、俺に仮面を取るように促した。


俺は仮面をゆっくりと取った。


50人以上の仮面が俺を見ていた。


俺は、この雰囲気に飲まれないように、深呼吸をした。

そして、その仮面の一つ一つを見渡した。


仮面の中の表情は見ることが出来ない。

仮面の下ではどのような顔をしているのだろうか?

この中に森はいるのだろうか?

俺の知っている人間もいるのだろうか?


顔を見せている時間がとても長く感じた。


「では、皆さん、今夜0時からゲームは始まります

 どうぞ存分に楽しんでください」


と言った。


盛大な拍手が起こった。


ついに俺は、一千万円を賭けて最後のゲームに挑戦することになった。

最後のゲーム

今日もいつものように仕事を終えると、

俺はその足であのクラブに向かった。


今回のゲームをクリアした。

賞金も貰える。

だが、これ以上ゲームを続ける気にはならなかった。


もう、あんなひどい目に逢うのはたくさんだ・・・


店に着き、前回と同様に会員証を見せ、

怪しい仮面をつけて店内に入った。


我孫子氏を探したが、店内では、皆仮面をつけているので、

誰が我孫子氏なのか分からなかった。


俺は、以前通された部屋に入ると、

その中に我孫子氏がいた。


「いらっしゃいませ。」


俺は、黙ってペンダントを提示した。


ペンダントを受け取った我孫子氏は、


「今回のゲームはどうでしたか?

 難しかったでしょうか?」


と言った。


俺はそのまま黙っていた。


「なにかお気にいりなかったようですね」


と、我孫子氏は俺の顔を見ていった。


俺は、ゲームをクリアしたから早く賞金をだしてくださいと言った。


我孫子氏は、金庫から契約書と札束を出した。


契約書を確認し、俺は金を受け取った。

それを確認すると、少し頬が緩んだ。


「では、次のレベルのゲームの説明をしましょう」


と、言った。


しかし、もうあんな目に逢いたくない俺は、断った。

そして、部屋を出ようとすると、我孫子氏が、


「賞金は一千万なのですが…」


と、ぽつりとつぶやいた。


それを聞いた俺は、足が止まった。


一千万だって?


俺は、振り向き、話の続きを聞くことにした。


「あなた様は、Bレベルのゲームをクリアしたので、

 次のAレベルのゲームに参加できる権利があります。

 先ほど述べましたように、ゲームをクリアすれば、

 一千万円の賞金が出ます。

 参加するには111万円払う必要があります。

 ルールは今までと同じです。期間も三日日間です。

 ただ、当然難しくなりますが。」


111万という参加料の高さに俺は驚いた。

手元には100万があった。

しかし、11万足りない。


「ご不満のようですが、今回のゲームは賞金を考えてもらわないと。

 ただ、11万を払えば一千万円を得られるチャンスがもてます。」


俺は、過去にAレベルのゲームをクリアしたものがいるのか聞いてみた。


「それはお答えできません」


と、我孫子氏は言った。


俺は、考えていると、我孫子氏が、


「お答えは明日まで待ちます。

 参加料のこともありますし。」


と言った。


店を出た俺は考えてた。


もうゲームは絶対にやりたくないと思っていたのに・・・


奪われる

結局、俺は一人でホテルで過ごすことになった。


ショックで一睡も出来なかった。

森との愛はゲームの一部だったとは・・・


外を見ると夜はすっかり明けていた。

会社に向かわなくてはならない。


でも、行きたくなかった。

こんな状態で仕事が出来るとは思えなかった。


それに、森に会わす顔がない。

どのように彼女に接すればいいのだろうか…


それに森があのクラブの会員だった事を考えると、

他にも会社の中に、クラブの会員がいるかもしれない。

そう考えると、人間不信になりそうだった。


会社に向かわなくてはならないぎりぎりの時間まで、

俺はベッドの上でぼーっとしていた。

しかし、重い腰をあげた。


ペンダントを再び首につけた。


もう、いっその事こんなもの捨てようかと思った。


でも、今日一日我慢すれば…


会社に着くと、トイレに行き、再び自分の席に戻ろうとすると、

森とすれ違った。

彼女は何事もなかったことのように、


「おはよう。」


と笑顔で挨拶をした。


本当に昨日の出来事は幻であったのだろうか・・・


この日は、眠気とショックにより無気力で仕事に全く集中が出来なかった。

そのせいで、ミスばっかりし、上司に大目玉をくらった。


仕事の時間が終わると、後輩の池田が声をかけてきた。


「今日はどうしたんですか?調子悪いですね。

 気晴らしに、ぱーっと飲みにいきませんか?」


しかし、残業を理由に断った。

池田もあのクラブの人間ではないかと疑っていた。


自分のミスのせいによる居残りの仕事を終えると、

もう22時近くだった。


帰りの電車に乗ると、時間も遅いせいか、

ほとんど乗客は乗っていなかった。

俺は座席に座ると、疲れて寝てしまった。

夢を見ていた。

また、「何か」から逃げている自分。

疲れ果てて、地面に座り込んだ自分に、

何者かの手が伸びてきた。

俺の首元をめがけて。

俺はそこで目を覚ました。

ふと、首元を見ると夢と同じように手があった。

自分の手ではない。


男の手が、俺のシャツを開けてペンダントを掴もうとしていた。

俺は、その瞬間その手を掴んだ。

しかし、男は強引にペンダントを掴んだ。

ブチッという音と共に、ペンダントのチェーンが切れた。

俺は、男の腕を掴みながら力任せにそのまま押し込んだ。


男もろとも俺は倒れこんだ。


ペンダントが男の手から離れ、数メートル先に転がった。


俺と男はペンダントめがけて飛び込んだ。


わずかに俺のほうが早く、ペンダントを掴んだ。


しかし、男は俺の手を掴み、ペンダントを奪おうとした。


その時、隣の車両から騒ぎを聞きつけた乗客が、駆けつけてきた。


男はそれを見ると、俺の手を離し逃げ出した。


俺は、立ち上がり追いかけようとしたが、

電車が車線変更のため傾いたため、

バランスを崩し、座席に倒れこんでしまった。


ふと窓の外を見ると、駅についていた。


もう、あの男は駅に降りてしまっただろう。


俺は、まだゲーム中であることを忘れていた。

時計を見ると23時を回っていた。


あと、少しだ。


俺は、気力を振り絞り、周囲に注意しながら、帰宅した。


家に着くと、ちょうど0時になった。


やったぞ。今回もクリアしたぞ・・・


俺はベッドに倒れこみそのまま、意識を失った…

幸せの絶頂から絶望へ

仕事が終わった後、俺は森と一緒に映画を見に行った。


見たのは恋愛映画であった。


映画を見終わった後、二人で食事をした。

美味しい料理を食べながら、楽しく会話をした。


まるで、以前見た夢が現実になったようだった。


食事をした後、今日はもう帰ろうかと話したら、


「もう少し一緒にいたい。」


と、森は言った。


俺はその表情を見て、ドキドキした。

もしかしたら、今日は…


二人はバーに行き、カクテルを少し飲んだ。

とても、いい雰囲気だった。

俺はこみ上げてくる感情を抑えていた。


すると、彼女が俺の肩に頭を預けてきた。

俺は、彼女の肩に手を置いた。


バーを出ると、彼女の肩に手を回しながら歩いた。

そして自然と、そのままホテルに入った。


部屋に入り、俺は先にシャワーを浴びた。

その時、首にかけているペンダントを見て、

一瞬ゲームのことを思い出した。


しかし、今はゲームのことは考えないことにした。


森がシャワーを浴びている間に、俺はペンダントを外し鞄の中に入れた。


今はゲームのことは忘れることにした。

憧れの女性であった森を今夜抱くことになったのだから。


俺は、嬉しさと緊張から落ち着かなかった。


しばらくすると森がシャワールームからバスローブを撒いて出てきた。


とても、魅力的でセクシーであった。


部屋の電気を暗くし、森をベッドへと誘った。

自分も一緒にベッドに入ると、彼女を抱き寄せてキスをした。

軽く唇に触れるように優しく。


お互いに見つめ合うと森は恥ずかしそうに視線を外した。


とても、可愛く見えた。


彼女の髪を撫で、優しく体をベッドに倒すと、

ゆっくりとバスローブを降ろした。


森は最初は自分の胸を手で隠していた。

俺は、再びキスをすると、その手をゆっくりと外した。


森のとてもきれいな乳房があらわになった。

Cぐらいの大きさと思われるその胸は形も美しく整っていた。


俺はその胸を愛情をこめて愛撫をした。


その後バスローブを全て脱がし、

彼女の足をゆっくりと開いた。


彼女を喜ばせるためにじっくりと愛撫をした。

優しく、時に激しく。

時折、彼女は声を漏らした。

感じていると思い、嬉しくなってもっと刺激させた。


そして、充分に彼女が感じていることを確認すると、

俺は、自分のものを彼女の入り口に近づけた。

森の顔を見ると、彼女はこくりと頷いた。


ゆっくりと、しかし一気に入れた。


ついに森と一つになった。


俺は歓喜のあまり声を上げそうになった。


森の体に重なると、彼女の背中に腕を回し、

全身で、全力で彼女に対しての愛を表現した。


彼女の名前を耳もとでささやいたりしながら。

彼女も嬉しいと言いながら俺の名前を呼んだ。


とても幸せであり、快感であった。


愛の行為の後、彼女を自分の腕を枕にさせ、

髪を優しく撫でながら、少し話しをした。


しばらくすると、彼女の寝息が聞こえてきたので、

俺も夢の中に入っていった。



俺は何か虚無感を感じ、目を開けた。


ふと横を見るとそばで寝ているはずの森の姿は無かった。


俺はうつろな目で辺りを見渡すと、

奥のテーブルの近くに森は立っていた。

何かを探している様子であった。

そこには、自分のスーツと鞄が置いてあったはずである。


森は、スーツのポケットなどを物色していて、

その後、鞄に手をやり、中にあった何かを取り出した。

それはあのペンダントであった。


俺は、その瞬間ハッとした。

そして、ベッドから飛び上がると、

森にめがけて走りだした。


森は突然のことに驚き、硬直したままだった。


俺は、彼女の手からペンダントを奪い取ると、

彼女を問い詰めた。


森は、小さくため息をついて話だした。


「私もあのクラブの会員のひとりなの。

 今回のゲームではあなたからこれを奪う

 「鬼」の役割をオーナーから引き受けていたの。」


俺は、何かガツンと頭を叩かれたようなショックを受けた。


「だから今日こうやってあなたを誘惑したの。

 もし、ペンダントを取り返すことができれば、

 ちょっとしたお金が入るから…」


と言った。


俺は何がなんだか分からなくなった。


ついさっきまでは目の前の美しい体の女性を抱き、

二人で愛を確かめ合ったというのに。


全ては虚構だったのだろうか…

俺はそれを確認したかった。


「全部幻よ。あなたとの関係も全て。

 明日からはまた、以前のようにただの同僚として接するわ。」


と言って、森は服を再び着なおしていた。


俺は呆然として立ちすくんでいた。


着替え終えた彼女は部屋を出ようとした。


俺は声をかけようとしたが、

何を言っていいのか分からなかった。


彼女は何も言わずに部屋のドアを閉めた。

じわりと近づいてくるもの

もう、すでに今回のゲームは始まっている。


前回よりは難易度は上がっているという。
自分の身に何が起こるかは分からない。
特に通勤中や帰宅時など外にいる間は、

周囲の人間に注意しなければならない。


俺は、ペンダントが奪われないように、しっかりと身に付けて家を出た。


いつものように満員電車に揺られて会社に向かった。

俺は時々首に付けたペンダントを触って自分の身にあることを確認していた。


会社の最寄の駅のホームに着いた。


すると、携帯が鳴ったので、

俺は電話に出るために持っていた鞄を椅子の上に置いた。


どこからかかってきたのか確認しようとしたその瞬間、

何者かが俺の鞄を奪い去っていった。


おい、待て!泥棒!


俺は叫びながらその男を追った。


その男は階段を駆け上がり、構内を走り抜けて行った。


俺は必死に追いかけたが、

通勤中の混雑した状態で追いかけるのは困難であった。


ついに、その男を見失ってしまった。


俺は激しく落ち込んだ。
鞄の中には仕事の書類とノートパソコンが入っていた。

その二つが無いと、仕事が何もできない。


俺は諦めず構内を探したがその男を見つけることはできなかった。


もう、改札を出てしまったのだろうか?


どうしようもなくなり、俺は、

汗で乱れた自分の身なりを整えるためにトイレに入った。


すると、洗面台の上に俺の鞄が置いてあった。
急いで中を確認すると、中身は物色された形跡があったが、

何も盗まれていなかった。


とりあえず俺は一安心した。
しかし、一体何が目的だったのだろうか?


奪っといて何も盗まないとは…


俺は、首にかいた汗をふこうとした。

その時ペンダントのチェーンが手にかかった。


俺はハッとした。


あの男の目的はこれだったのだろうか…


会社についた俺を待っていたのは、大量の業務だった。


今回の仕事は今までよりも大きなものだったので、

やらなければならないことは沢山あった。
今朝の鞄の件ですでに体力を奪われていた自分にとっては辛かった。


昼休みになり、目を押さえながら深く溜め息をついた俺を見た森が、


「辛そうだけど、大丈夫?」


と声をかけてくれた。


俺は、うん、大丈夫だよ。ちょっと朝トラブルがあっただけだから。

と言った。すると森は、


「じゃあ、元気つけるために、美味しいもの食べに行かない?」


と、昼食に誘ってくれた。


昨日に続いて今日も森と一緒にお昼を食べることになった。
俺は嬉しくなって、今朝の出来事によって沈んでいた気持ちが明るくなった。


イタリアンレストランで食事をすることになった。
今日は9月に入ったというのに真夏ような暑さだった。
俺は、ネクタイを緩め、シャツの第一ボタンを外した。
すると、俺の首元を見た森が、


「ペンダントしているの?」


と、聞いてきた。


俺は少しドキッとしたが、うん、ちょっとね。あ、でも特別な意味はないよ。

と言った。


森には、変な誤解を与えたくなかった。


食事をしながら、色々話しているうちに、映画の話題となった。
どうやら、森には今見たい映画があるらしい。
それを聞いた俺は、思い切って、


良かったら、今度一緒に見に行かない?
と聞いてみた。

すると、森はO.Kしてくれた。


俺は、本当に嬉しかった。

憧れの森と一緒に映画を見に行けるなんて。


俺は、空いている日はいつ?と聞いた。


「明日の仕事が終わった後でもいいかしら?」


と聞いてきた。


俺は、もちろんO.Kした。

携帯の電話番号とメアドも交換した。


明日は森と一緒にデートが出来る。

その事がとても嬉しくて、俺は午後の仕事は、張りきってすることができた。


仕事が終わった後も、俺は明日のことばかり考えていた。


すっかりゲームのことは忘れていた。


そして次のゲームに

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(続き)

仕事が終わると、我孫子氏に会うために、新宿に向かった。


先日、我孫子氏と食事をした和食の店に、

待ち合わせの時間の10分前についた。


しばらくすると我孫子氏が手を挙げながら近づいてきた。

俺は軽く会釈をした。

店内に入って、まずは仕事の話をした。


そして食事をしながら二時間ほど話した後、

我孫子氏はあのゲームについて話しだした。


「ペンダントは取られずに持っていますか?」


俺は、鞄にしまっておいたペンダントを見せると、我孫子氏が、


「おめでとうございます。ゲームクリアですね。

 では、賞金を渡さなくてはならないので、

 「TAG」のほうに一緒に行きましょう」


と言って、席を立った。


俺は、ゲームについて聞きたいことがあったが、

とりあえずあの店に向かうことにした。


再び、「TAG」の店内に入ると、

会員証の提示をされた。

会員証を見せると前回と同じくあの仮面を渡された。

蝶の形をした怪しい仮面。


店内に入ると、前回よりも客の数は増えていた。

30人ぐらいはいただろうか。


我孫子氏は俺を店内の奥の部屋の中に連れて行った。


「では、ペンダントを提示してください」


と言ったので。俺はペンダントを我孫子氏に渡した。


我孫子氏はペンダントを確認すると、


「確かに預かりました。

 では、ゲームクリアということなので、

 Cレベルの賞金10万円を渡します」


といって、俺に現金10万円を手渡した。


俺は何だか信じられないと思った。

本当に賞金が貰えた。

確かに一度、見知らぬ男に追いかけられはしたものの、

こんなに簡単にこれだけのお金がもらえていいものだろうか?

俺はこの賞金をもらうのをためらっていた。


すると、我孫子氏は前回書いた契約書を見せ、


「間違いありません。このお金はあなたのものになります。」


と言った。


俺はようやくこの金を受け取った。


すると、我孫子氏がもう一枚の契約書を持ち出して話し出した。


「さて、あなたはCレベルのゲームをクリアしたので、

 次のレベルのBレベルのゲームに参加できる権利を得ました。

 Bレベルも期間は三日間ですが、当然、難易度も上がります。

 しかし、賞金は100万円です。

 参加料は11万円になります。」


俺は、100万円という言葉に驚いた。

賞金の額を聞いて次のゲームもやりたくなった。

しかし、参加料11万は高いとも思った。


「参加料は高いとお考えのようですが、

 今あなたのお手元には10万ありますよね?

 それを元手にすれば、たったの1万円で、

 100万円を得られるチャンスを手にすることができますが。」


と我孫子氏は続けた。


確かに、そう考えると、いい話だと思った。

しかし、あの男に追いかけられた恐怖もあった。

挑戦するか迷っていたので、

過去に参加した人は?成功した人はいるのか?

と聞いてみた。


「次のレベルに挑戦する人は半々です。

 そして、ゲームをクリアする人はその中の約1/4です」


と答えた。


俺は正直迷っていた。


「もし、今回チャレンジしないのであれば、

 他のお客様に権利が渡ってしまいます。」


と言った。


その言葉を聞いて、やはりこの権利を自分のものにしたいと思い、

次のレベルのゲームに挑戦することを決めた。

渡された契約書にサインをすると、

再びペンダントを渡された。


その部屋を出ると我孫子氏が仮面を外すように促した。


怪しい仮面をつけた30人ぐらいの人が自分を見ていた。


俺はゆっくりと仮面を外し、素顔を見せた。


「こちらの方がBレベルのゲームに挑戦します。

 みなさんはこの方からペンダントをお願いします」


と、我孫子氏が話した。


顔を見せている間、俺は自分の心臓の音が早くなるのを感じた。


しばらくして、仮面をつけた人々は俺の顔から視線を外すと、

再びさっきのように周りの人と話を始めた。

しかし、中には自分のことをじっと見ているものもいた。


俺は、できるだけ早くこの場を離れたかった。


その旨を我孫子氏に話すと、


「では、期限は今夜0時からきっかり三日間です。

 基本的には前回と変わりはありません。

 ペンダントを守りきれば賞金はあなたのものです。

 ご健闘を祈ります。」


と言った。


俺は足早に店内を出た。


まだ時計は23時前だった。


ゲームが始まるまでに家に帰りたいと思い、

早足で駅に向かった。


今度のゲームはどうなるのだろうか?


不安であった。

しかし、変に自信はあった。