渦の中心になれ。
 経営の神様と言われる稲盛和夫さんは、より良い人生を送り、より良い仕事をするための哲学のひとつにこの言葉を挙げている。

 京セラの採用を受ける中で、一番共感を覚えた言葉。その言葉を今、頭で考えるだけでなく感じることができる場にいると思う。

 何かを動かそうと思うとき、そこには動力が必要になるのだけれど、それは機械でも人でも同じなのかもしれない。人をどれだけ巻き込むことができるのか。どうやって動かすか。特にこれだけ人口過多の時代になると、何かを変えようと思うとき、その難題をどうクリアしていくかが成功の可否に繋がると言っても過言ではないだろう。

 自分はこの場所で、渦の中心にいるわけではないけれど、その近くで働いている人たちを渦に巻き込まれながら見ることができる。それこそ中心で働く人たちの空気のようなものを、直接会う訳ではなくとも感じることができる。
 やっぱり、いいなあ、と思う。
 渦の中心で仕事をすることは、きっと大いに自分を高めてくれる。色んな人と出会い、知ることができる。

 人を惹きつけ、動かすこと。広告の真骨頂であるはずの力。方向性は取り合えず別問題として、世の中を動かしていく上でキーとなるものだと思ったから、魅力を感じた。人に伝えるだけでなく、いかに多くの人を巻き込むムーブメントを起こすことができるのか。惹きつけて、伝えて、巻き込み、動かす。さらにそのエネルギーの方向性を、世の中にプラスになる方向に持っていけたら。理想は尽きない。

 広告の場合、不特定多数の匿名化された「ひとたち」を動かすから、渦の出どころを見誤る危険性をはらんでいる気がする。世の中のどこかを指で触れると、そこに渦が起きていくというような感覚。だけど、実はもっと実態のある人たちを動かすことから、ムーブメントは始まっていくのだと思う。どれだけ周りの人を巻き込めるのか。自分が誰よりも懸命に動くことで、その姿を見た人たちが賛同してくれる。積極的に声をかけることで、近くに人が集まってきてくれる。その人たちによって作られた渦が、世の中の「ひとたち」を巻き込んでいく。
 渦が起きる現場は、場所も規模もジャンルも関係なく同じだ。

 教室の古い机を、体育館まで運ぶ。すごく地味だけど、学び場を円滑に動かす上で大切な作業のひとつ。懐かしい机の匂いに誘われてか、児童会とか、応援団長とか、修学旅行の実行委員長とか、リーダーの立場で働いたときにもよく似たようなことをしてたな、とか思い出しながら、そんなことを思った。