Being の時代の幕開け(30)〜

アレクサンダーテクニーク界の大きな誤解

セルフフルネスアカデミー(東京アレクサンダーセンターの活動)

 

今回は、かなり突っ込んだ話題ですが、

「アレクサンダーテクニーク(以下、AT)界の大きな誤解」についてお話します。

 

【AT界のリニューアルの必要性】

武道の世界の継承でも、音楽界のテクニックの発展でも、ダンサーや俳優のテクニックでも、伝統や文化を継承しようとすると、必ず流派が分かれたり、分裂が起こりがちです。

 

なぜなら、元祖自身が、「実践すること」と「その捉え方」がズレていることは必ずあるし、

 

継承者達も、元祖から受けたことと、それに対する捉え方に様々な解釈が入り、各々が、

「本当の〇〇道は、これだ!」

と心の底から確信したものを基礎に取り組むからです。

そこには、時代や価値の置き方の変化も起こるでしょうから、

各々の解釈がお互いに違ってくるのは避けられないでしょう。

 

しかし、この差異には、深さの程度もあって、

表面をコピーしたものと、

深く人間の本質、本能に関わるもの

との違いは明らかに存在します。

 

そういう意味で、現代社会では、

簡単に得られる結果に行動が流される傾向(ポピュリズム)、大衆から人気があれば、支持されていることになり、それを良しとする傾向。

再生回数を増やしたり、「いいね👍」がいっぱいつけば、認められたことになる。

と言った動きが可視化されやすい世の中になって、

薄っぺらい、中身のない、うわべだけのものが、世の中を動かしている様に見えます。

(なんか、悪いことばっか書いてるけど!苦笑)

 

だけど、そういう薄っぺらいことだけでは、心の底から動くことはないので、

結局は、深い納得感が得られない活動に成り下がります。

 

AT界は、そういう意味で過渡期に来ています。

 

本来の意味が失われていることも知らないうちに、

「ATはこんなもの!」みたいな実体とかけ離れた常識が形成されている面が顕著に表れています。

 

【AT界の大きな誤解】

これは、私個人の視点(バイアス)も入るので、参考程度に読んで貰った方がいいのですが、何個か書き出してみます。

 

①ATは、医学的、科学的な情報の学習ではない

創始者FMアレクサンダー氏は、周囲に医師の支持者は沢山いましたが、医学や科学的な知見を基礎に取り組むことはしませんでした。

むしろ、医学界や医学教育の「前提」に警笛を鳴らしています。

(彼の著作「自己の使い方」の第5章 「診断と医学教育」参照)

 

②ATの学習に解剖模型は必須ではない

ATの学習は、解剖学の知識の裏付けは必ずしも必要ではありません。

アレクサンダー氏のトレーニングでも、解剖学の知識を学んだ形跡はありません。

トレーニング室でも、骨格模型もなかった様です。

 

③ATの学習は、知識や理解をすることを主眼にしていない

彼の著書全てに書かれていますが、人間の刺激に対する反応やそれによる歪みを認識し、修正できる素地を形成する学習であり、

より信頼できる感覚認識(more reliable sensory perception)(頭と胴体のバランスのとれた統合機能が働いた状態)があって、初めて、自分の全体を介した裏付け(reasoning)が可能となると述べています。

ATの学習が、「自分の在り方」に取り組むこと自体、知識や理解だけでは無理なことは明らかです。

 

④時間をかけないとATの学習は成り立たない

FMアレクサンダー氏のトレーニングを受けて、アメリカに戻り、ATを広めたMajorie Barstow女史は、FMアレクサンダー氏に手紙を送って、

「自身がワークを短時間で習得させる方法を開発した旨」

を伝えたと言われています。

その時のFMアレクサンダーの反応は、うやむやになっていますが、

「時間をかけることの意味」の解釈が、彼と彼の生徒達の間でもかなり異なっていたことが想像できます。

 

⑤手を使って直接関わる必要がある

FMアレクサンダー氏のワークは、音声は残っていませんが、動画はかなりあります。

彼が生徒さんと取り組んでいる時は、ほぼ手を使ってワークをしています。

後に、「手を使うのは最小限にする」と彼は言っています。

ここで、2つの解釈に分かれます。

一つは、手を使うことをスキルやテクニックと捉えると、逆に、必要性のない「使い方」が含まれてくる為に、新たに「本当の自分」から関わる為に洗練しなくてはならないと考える教師と、

2つ目は、手を使わないで、ガイドした方がバイアスがかかりにくいと考える教師がいます。

 

(因みに、私は、「手を使うこと」を「自分の使い方」とリンクさせる経験は、ATの学習には必須だと捉えています。FMアレクサンダー氏自身がこのテクニックを開発してきたプロセスを体験することでATの成り立ちを体験できるからです。)

 

⑥ATは、身体の使い方ではない!

日本で活動する多くのAT教師が、「カラダの使い方」という言葉を頻繁に使ったり、身体のアラインメントや、骨や筋肉の構造や運動学を教えることがATの学習であるかの様な印象を与えています。

実際、そう思っている教師も多いようです。

しかし、創始者FMアレクサンダー氏の著作「自己の使い方」という言葉を使っている為、いくら筋肉や生理学を理解しても、「自己」を扱うことにはならないことは明らかです。

 

【ATに対する根本的な誤解】

FMアレクサンダー氏が、「自己の使い方」の第5章「診断と医学教育」で述べている様に、医学界では、専門家が部分的な現象を細部にわたって研究することをいくら追求しても、根本的な「自分」という道具が機能しなかったり、壊れていたら、全体として歪んだ感覚でしか判断できないことを描写しています。

 

人間の内部を可視化する科学技術は格段に進化して、詳細なデータを集めることができても、人間全体の機能として見なければ、決して養うことができない捉え方があります。

 

彼は、医師、教育学者、哲学者など様々な学術分野で影響力のある人達と親交を重ねましたが、根本的な立場を共有した人はとても少なかった(というか皆無だった)様です。

彼は、学術的な客観性を持って研究を深め、真理を追求する立場にいる人達こそが、自分の根本的な「在り方」に取り組むことが必要だと力説したかったのだと思います。

 

現代に生きるAT教師達が、ATを科学的に証明されることに信頼性を高めると感じている現状を、もし彼が生きていて、見たらどう思うのでしょうか?

これは、推測の域を出ません。答えはもはや自分で探求するしかありません。

だからこそ、AT教師達は、「アレクサンダー氏がどんな風景を見ていたか」(彼の視点)を共有するため、何度でも心新たにし、取り組んでいく態度が一番大事だと思います。

 

セルフフルネス(AT)の取り組みは、異なるトレーニングを受けた教師達も、ドンドンチャレンジしてお互いに影響し合う環境です。

AT教師の卒後教育の場としても、是非とも参加して欲しいです。

新入生募集

東京アレクサンダーセンターの教師養成クラスでは、2024年9月からの生徒募集(2名)しています。

 

《若手教師による初心者のためのATトライアルレッスン生募集》

 

詳しくは、ホームページをご覧ください!  

Tokyo Alexander Centre | アレクサンダーテクニーク 教師養成クラス (tac-self-fullness.net)

 

【ウィークデーモーニングクラス(月火水金曜日)】(9:30~13:00)

6月、7月、8月の開校日は

 

6月 24 25 26 28

7月  1  2  3  5

    8  9 10 12

8月  5  6  7  9

《福岡での個人レッスン》は、2024年7月14日(日)、15日(月)です。

(福岡の予約、お問い合わせは、メールで、 <uzumaki@hya.bbiq.jp> にお願いします。)

7/14(日)7/15日(月)稲田祥宏の個人レッスンin福岡 – JATS 日本アレクサンダーテクニーク協会 (alextech.net)

 

いずれのクラスの予約、ご質問は、すべてメールにて、

yoshiinadabsn@gmail.comにお問い合わせください。 

 

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