芸術とセルフフルネス(11)

「自分で在る!」ということ (バッハの音楽を通じて)

〜東京アレクサンダーセンターでセルフフルネスを学ぼう!〜

 

【私の音楽活動】

私は、ファゴット奏者で、そんなにバッハオタクでもなんでもないんですが(笑)、

いつの間にか、バッハの音楽を通じての音楽活動が自分の根幹をなす様になってしまいました。

 

バッハの音楽そのものに対する興味もなんだけれど、本当に多くの人達がバッハについてやたらこだわっているので、何がそんなに魅力的なのか覗きたい心理も多分に働いていたのも事実だろうし、

周辺の情報量も豊富なので、

「なるほどこんな風に見る世界もあるんだなあ!」

って感心する部分も多いんですよね。

 

だから、パブロカザルスが毎朝チェロの無伴奏組曲を練習していた様に、

私もいつの間にか同じことしているのに気付いてた感じ!(笑)

 

【バッハの見た世界に自分の中心を置いて体験する!】

もう、300年前のことだから、実際は想像の域でしかないのだけれど、

歴史を紐解いて、彼の置かれた環境や、当時の楽器の性質や流行を知ることで、

その時代に生きながら、彼の音楽が作られる瞬間にどんな風景が展開していたか、ちょっと想像することができるわけです。

 

①共鳴感

例えば、チェロ組曲の作られた頃、彼は、KöthenのChapellmeisterだったわけで、

教会音楽、カンタータを毎週作曲していたみたいだし、

イタリアの楽譜を漁って、すごく勉強していたみたいだし、

フランスの影響もチェロ組曲にはあるし、

作った曲もオルガンで試して聞いていただろうし、

チェロのためといっても、5番とかはリュートの為に書かれてもいるし、

音の共鳴感はかなりエコーがあったり、天井の高さの影響もある中での音楽が根っこにありそうだし、

っていうことで、ファゴットでチェロ組曲を演奏するには、開放弦もないし(bariolage の技法が随所に見られる)、共鳴盤もない中で、自分の身体を振動させたり、楽器を最大限に共鳴させることに取り組んだりすることにエネルギーを注ぐことになる。

 

②音の流れ

また、当時の弓の構造上、音の発音の仕方が、はじめはフワッと、段々と膨らんで減衰するという、ニュートン力学にそのまま従う放物線の様な(笑)感じで「音」が設定されているから、パルスやメリハリは、和声の変化に頼る所も多かっただろうし、

それをファゴット演奏で適応しようとすると、例えばタンギング(リードに対する舌のリリースのプロセス)が一番反映するので、リリースの仕方を調整して音の発音を合わせていく作業も必要だし

音の減衰を表現するには、身体の空間の中で自然に減衰が起こる様に、筋肉で減衰をコントロールしない技術も求められるわけです。

 

③ポリフォニー

チェロ組曲でも、ヴォイスが複数あって、一つ一つを浮き彫りにするには、各々のヴォイスの始まりと終わりがぶつ切れにならない様に、

実際に一つのヴォイスが始まる前も終わっても、ヴォイスを作るものの存在感が残っている状態を作る。

これは、身体の表面で音を出すと(ファゴットの場合「口先」)、大袈裟に有る無しがはっきりしてしまうので、なるべく身体の深い所から音を出して、調整すると、あからさまなシフトがなく、ヴォイス同士を共存させられる。

 

④単純な和声に多様性を盛り込む!

バッハの時代の和声進行は、音大1年生程度の和声の知識で大体把握できるものしか使っていないので(I IV V, circular 5thとか)、結構単純なんだけど、そこに盛り込まれる音の上下の動きとか、音符のスピードの変化が多様で、即興的要素が強い部分もあります。

だから、この多様な要素を発見しながら、音楽の中に組み込んでいく作業は、自分の成長感も感じられてウキウキする部分も出てきますね。

結構、この辺は、バッハはオタクで、すごく追求したんだろうなあ!笑

 

他にも色んな見え方はあるだろうけど、こうしてバッハが作ったチェロ組曲を現代楽器のファゴットで、300年後に、極東の文化の違う奴が再現しようとしているんだから、彼がもし、今、私の演奏を聴いてどう思うかなんて定かでないですね。笑

それに、彼の世界には、ネットも携帯も、機械音もなかったし、電気的な音も知らないんだから、音感はかなりずれてるだろうなあ!

 

そうなんだけど、私自身としては、こうして、バッハの見た世界、人間として、彼の状況にいたらきっと体験するであろう思いや風景を共有することで、

自分自身が人間としてどう生きているのかが、すごくよく見えてくる。

そこが一番価値がある。

 

セバスチャン(と、ここでいきなり友達の様に扱う私!笑)は、敬虔なルター派のプロテスタントではあったけど、子供もいっぱいいたし、給料もそんなに多くなかったし、余裕なくて、短期で、下手なファゴット奏者を殴って牢屋に入れられたこともある。

(ファゴット奏者嫌いなのかな?苦笑)

 

でも、そういう外目の性格とか、人間として素晴らしかったかどうかなんて置いておいて、彼の音楽を作った根源から見た世界を共有することが大事なんですよ。

いいんだよ、作曲家が寛大で素晴らしい人間じゃなくたって!

その奥に潜んでいる大事なものを見たいんだから!

 

【セルフフルネス(AT)の取り組み】

ここで、アレクサンダーテクニーク(以下ATとします)を実践している私の視点と照らし合わせてみると、

ATは、創始者FMアレクサンダー氏が取り組んだものと、そこから学んだ教師達が継承してきた体系を指します。

それは、「人間の共通の機能」を、妨げないで、本来あるべき「心と身体の統合機能」として生きる取り組みであるわけです。

 

私の取り組みは、その意味で、音楽家としてバッハの音楽に取り組むことと同じ感覚です。

 

アレクサンダー氏が、彼の取り組みの中で見た風景を共有して、人間として生きるって何かをこうした体験から学び、影響され、周囲とも共有する。

 

100年前にアレクサンダー氏が、どんな性格だったか、寛大であったかどうかなんていいんだよ。

人間として、何か大事なものを発見したり、創造したりした彼の

「正直に自分や外の世界と向き合った場面」

に生き証人として見てみたいんだよ。

 

【真の「美しさ」を求めて!】

テクノロジーも情報も少ない、何もない所から自分の力で世界に心を開く!

そういう所は、自分自身にも大事なことなんだって、

噛み締めながら生きていこう!

っていうか!そんな気持ち以前に、自分の設定が正直に心を広げて生きる方向に舵取りされていく。

そういう影響を受けながら、考えたり、ものに取り組んだりする。

 

そこには、ありのままを捉え、以上でも以下でもない、人間にとって必然の在り方、生き方が明らかにされる。

美しさは、自ずと出てくるものに脚色しない、現実がドラマよりずっと心を動かす原動力なんだよ!

出てくる音や言葉を美しく飾り付けたりするのではなく、

自分の個人的な事情による感情を表現する為じゃなくて、

根底から出てくるものになるべく着色しないで、大切に見守る。

 

そういう体験が、人間として生きていく取り組みは、自分だけが必要なわけじゃない。

300年前のバッハだって、100年前のアレクサンダーだって、みんな必要に駆られて取り組んできたんだ!

 

そういうことに触れ続けて、積み重ねていくのを真の「学習」として捉え、

その学習の場を「教育」という風に言っているわけです。

教育の場は、生徒も教師もサポートするスタッフも家族も、みんながお互いの成長を感じながら、自分自身に取り組む環境なのです。

 

っと、音楽家とアレクサンダー教師として活動する私の視点から書いてみました。

 

セルフフルネスアカデミー(東京アレクサンダーセンター)の活動に興味のある方、是非とも、レッスン、クラスにご参加ください。

お待ちしております!

 

 

《「痛み」のワークショップ》

2024年6月23日(日) 13:00〜16:00

場所:東京アレクサンダーセンター

(北千住駅より徒歩3分)

参加費: ¥10,000-

教師: 稲田祥宏(TAC代表)

         棚橋和子(TAC副代表)

東京アレクサンダーセンター ~~「痛み」のワークショップ~~ – JATS 日本アレクサンダーテクニーク協会 (alextech.net)

参加ご希望の方は、以下からお申込みください。

yoshiinadabsn@gmail.com

携帯:070-4105-7255(稲田)

 

新入生募集

東京アレクサンダーセンターの教師養成クラスでは、2024年9月からの生徒募集(2名)しています。

 

《若手教師による初心者のためのATトライアルレッスン生募集》

 

詳しくは、ホームページをご覧ください!  

Tokyo Alexander Centre | アレクサンダーテクニーク 教師養成クラス (tac-self-fullness.net)

 

【ウィークデーモーニングクラス(月火水金曜日)】(9:30~13:00)

5月、6月、7月の開校日は

 

5月   27 28 29 31

6月  3  4  5  7

   10 11 12 14

   17 18 19 21

   25 25 26 28

7月  1  2  3  5

    8  9 10 12

《福岡での個人レッスン》は、2024年6月16日(日)、17日(月)です。

(福岡の予約、お問い合わせは、メールで、 <uzumaki@hya.bbiq.jp> にお願いします。)

6/16(日)6/17日(月)稲田祥宏の個人レッスンin福岡 – JATS 日本アレクサンダーテクニーク協会 (alextech.net)

 

いずれのクラスの予約、ご質問は、すべてメールにて、

yoshiinadabsn@gmail.comにお問い合わせください。 

 

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