「ポケットが一杯ついてるから紀文調整豆乳1リットルとか、豆乳1リットルとか、1リットルとかたくさん入れられるよー!」
今日、新しい冷蔵庫が家に来た。
日曜日、帰ってきた父は「これ取っとけ、あと、冷蔵庫を買ってこい」と私に小遣いを渡しながら言った。競輪で儲けたのだとすぐ分かった。明日の天気と一緒で、バクチ打ちの言う金の使い道など、ああっちゅう間に変わりやすいモノのなので、早速翌日の月曜日、電気屋で買ってきたのだ。
母は父との買い物をとても嫌がるのだが、モノがモノだけに、一番使う人に決めてもらわないと…という訳で、珍しく父と母と3人で電気屋へ行った。
私は電気屋に行くのが好きだ。何も買わなくても見ているだけで楽しい。
だが、買うのはもっと楽しい。
それが高額商品、10年単位で買わない商品ならテンションがよりあがろうというものだ。しかも表示価格よりもさらに安く手に入る様はいつ見てもショッピング欲を満足させる…。
というわけでうちの父の出番である。
父も電気屋に行くのは好きなクチだ。今ブログを書いているこのノートPC・NECのラヴィちゃんも思えば3年前に展示品1台限りの大割引価格を、私がよそ見している間に、さらに1万円以上割引になっていて「しばらくはあの店では買い物は出来まい…ちうかこの目立つおっさんとは行けない」そんな電気屋ショッピングが大好きな父である。
あれから3年…もうそのときの店員なんていないよね、きっとバイトとかで辞めてるか転勤してるよね、それに今回は冷蔵庫、ジャンル違うもんね!レッツジョイナス電気屋deショッピング!
広い電気屋の右奥の冷蔵庫コーナー。母の希望の“400Lで冷凍庫が下で省エネ”。いくつかの冷蔵庫の中でも冷蔵庫の棚がスライドで高さが自由に変わる冷蔵庫に心奪われた模様。
ドアに張られた値札を見る。上の白い紙に印字されているのは定価と思われる価格、その下にはさらに割引ドンの黄色い値札。
18万6千円(白)→16万8千円(黄色)。
ここで買う人は買うよね、でももっと財布に優しく、店員に厳しい購入方法を私はずっと目の当たりにしてきたので、これは将来の為にも父の値引きテクニックの一部始終を見ておくことにした。太字&罫線部分は重要部分でテストに出るの←何の?でチェックしておく。
1.欲しい商品の目星がつく。しかし「これに決~めた!もうこれ買っちゃうから!!」という表情を極力抑え、COOLに商品を眺める。
2.「で、なんぼまで安くなるんや?」いきなり最大割引額提示を迫る。
3.「だめだ、これ(表示額)より安くならんのやて、やったらこの店おってもしゃあないわ、ヤ○ダ電気行こうか?」
「そうだねー、それでもいいよー別に時間あるしー」
他店に行くつもりは全くないが、つうか、店のハシゴなど面倒くさいので、ヤ○ダなどに行く気はサラサラなくても、向こうにいる店員のおっさんに聞こえるように、はっきりと家族の会話をする
※私は加担するが、母はこういうのが多分嫌なので、遠くでまだ冷蔵庫を見ている。
4.21世紀の現代、モノを捨てるのにも金がかかる。新品家電を購入するときは大抵それまで使っていた家電を処分しなければいけない。その引き取り料金を聞いてその分、まけさせる提案を出す。
今回の冷蔵庫は1台5千いくら。500Lだろうが定食屋でおしぼりいれるような正方形のちっこい冷蔵庫でも5千円と聞いて驚く。うちには1人暮らし用の冷蔵庫2台を使っていたため、処分だけで1万円を超えてしまう。
「どっかの電気屋は、リサイクルで金だけ取って2億儲けたってニュースで言いよったやないか~」
「うっ、うちはそういうのはやっていませんからっ、確実にやっていますからっ」
このような、前述にもあるような“他店と比べる”という態度を見せるのも効くっぽい。ここで「とりあえず値引きをしますよ」という方向が定まったのでオッサン店長のところへダッシュ。
5.オッサン帰還。出た価格は15万8千円。メモに書かれた15万8千円の“8千円”の部分を指でピッとはねて、
「端数切ってや」
値引き交渉の時は会話は簡潔に、一言で。決して喋りすぎていけない。毅然とした態度で、客>店員の構図を何人たりとも崩さない方向で。あとカードじゃなくてキャッシュだからってことも言ってたな。
6.店員再び店長のもとへダッシュ。15万で交渉成立。
18万6千円→16万8千円→15万8千円→15万ジャスト。
黄色価格からは1万8千円引き、店定価からだと3万6千円引き。こう書くと結構な額だが、最初の店側がつけた定価なんて嘘っぱちなんだ、そういうもんなんだ。
会計等の手続きは母にまかせておのおの見たいコーナーへ向かう親子2人。
「これフットボールアワーののんちゃんが『ジャイケルマクソン』でオススメしていた、ナショナルの一番新しい4枚刃の電気ヒゲソリだー」と話したところ、父即買い。やっぱり自分が使うものを買う方が楽しいらしい。私はCDケース10枚入りをついでに買ってもらった。
「店長か一番上の奴を呼ぶんが一番早いんやが、最近の店は店長は売り場に出てこんのやのう、あのオッサン(冷蔵庫担当の店員)は弱くて話にならん。あれ以上の値引きは無理だった」あえて出来ない店員に見せることもしつこい客からの値引き対策にはいいらしいですよ、全国の家電屋店員の皆さ~ん←誰も聞いていないよ。
しかし「しまったっ!ヒゲソリも買うからもっと値切れって言うべきだったっ」と後悔していた。父としてはちと不満が残る今回のショッピングだったようだ。
「まあ、安く買えたからいいけれど、よその電気屋に行くとか言ってたけど、あれは一種のおどしや、ああいうのはよくないね。お母さんだったら顔で笑って絶対値引きはしないね。まだ「年金生活で苦しい」とか年寄りのばあさんがテレビでやってそうな、まぁ泣き落としの方が、値引きしてあげようかっていう気になるわね、お母さんは」
最初に「安く買えたからよかった」って言っている時点で夫の“おどし”認めちゃってるよお母様。
ともかく新しくて使いやすい冷蔵庫が買えてよかったね。
でも競輪やらロト6やらやってなかったら、もっともっと早く冷蔵庫買えてたよなつうか、父の約40年分の全バクチ代計算したら、昭和の時代だったら、家も買えたかもね…。
冷蔵室の扉を開けると、まだ食品で汚されていない家電のプラスチックの真面目な匂いがする。
自分に関係あろうとなかろうと、どうして新品家電というのはこうも私の心をときめかせるのだろうか。そんなふうに冷蔵庫の前に突っ立って想いをはせていたら、「開けたり締めたりしたら電気代がもったいないやないかい」と怒られた。
私は電気屋に行くのが好きだ。
何も買わなくても見ているだけで楽しい。だが、買うのはもっと楽しい。
そして父も電気屋に行くのは好きなクチだ。でもレジカウンターとかバックヤードでぜってー「なんかムダにデカくて人相の悪いオッサンが来てよー、うってぇ客だったよ」とか言われているんだろうなと思う。
でも多分、父が帰りの車の中で吐いたタイトルの言葉どおりで、もう2~3年はデカイ買い物する予定ない=父をつれていかない。からいいや。
「冷蔵庫かってヒゲソリかって、お前らに小遣いやってこれで儲けた分カラや。今日買った大穴5千円分も外れたし…」
それ買わなきゃ5千円は残ったんじゃないのか父よ…ばくち打ちってほんとバカねー。
「バクチで儲けた金はあぶく銭、明日まで残らない」ってお母様が言ってたっけ。それが冷蔵庫(モノ)で残っただけまだマシってことで。