中学数学の関門は一次関数です。
通常の中学校では、
2年次の中盤に登場する一次関数。
この分野の厄介なところは、
計算だけでは対応できないという点です。
一次関数分野で大切なのは、
言葉の定義をキチッと理解したり、
式をグラフに変換したりという部分です。
この部分をおろそかにしていると、
「一次関数がさっぱり分からない」となります。
「計算が得意=数学が得意」
と勘違いしていた生徒がどんどん脱落します。
数学的センスが試される分野でもあります。
生徒に数学的センスがあるのかないのかは、
一次関数分野の「グラフと方程式」で明らかになります。
一次関数分野の中盤では、
直線の式を求めて
それらを方程式として解く
という考え方を学びます。
2直線の交点の座標を求める
⇔連立方程式の解を求める
このことをきちんと理解できるかどうかが、
その後の数学の勉強に影響してくるのです。
中でも僕が特に注意して指導するのは、
x軸とy軸に平行な直線の式を考える単元です。
たとえば、x軸に平行で(0, 5)を通る直線の式はy=5です。
同様に、y軸に平行で(-3, 0)を通る直線の式はx=-3です。
ここまでは新たに教わることなので、
生徒は普通に覚えればいいだけです。
しかし、その後、僕は生徒に聞いてみます。
「今習ったことを踏まえて考えてね。
x軸とy軸を式で表すとどうなるの?」
この質問に対して、
「x軸はy=0、y軸はx=0」
と答えられる生徒は数学的センスがあります。
一方、
「x軸はx軸で、式で表せないでしょ?」
と考えてしまう生徒は数学的センスがありません。
こういう生徒は、高校以降は文系に進むべきです。
一次関数に限らず、
中高レベルの関数分野において、
座標平面に描かれた直線や曲線は
全て式で表せるという特徴があります。
(式で表せないものは中高レベルでは扱われない)
それは、x軸・y軸とて例外ではありません。
しかし、数学が苦手な生徒の頭の中には、
「x軸とy軸は式で表せない例外」
という固定観念が居座っているのです。
こういう生徒は、
数学の問題を全てパターン別に暗記しようとします。
たとえば、次の問題を考えてみます。
「y=2x-3とx軸との交点の座標を求めなさい。」
数学的センスのある生徒は、
この問題を次のように考えます。
「x軸の式はy=0だから、
y=2x-3と連立すれば答が出るよね!」
一方、数学的センスの無い生徒は、
同じ問題を次のように考えます。
「直線とx軸との交点の座標を求めるときは、
直線の式にy=0を代入するんだったよな……
だから、y=2x-3のyを0に置き換えて……」
どちらの生徒も、式変形だけを見れば、
やっていることは全く同じに見えます。
しかし、後者の生徒の考え方には汎用性がなく、
似たような他の問題もパターン暗記になります。
具体的には、一次関数分野だと、
「傾きのある2直線の交点の座標」
「傾きのある直線とx軸との交点の座標」
「傾きのある直線とy軸との交点の座標」
を全て別パターンとして認識するわけです。
中学3年では、これに二次関数が加わります。
さらに、高校数学では、
三次関数や三角関数、円の方程式など、パターンが増えます。
そして、当然のことながら、
生徒の記憶容量には限界があるため、
パターン暗記も十分に行えず撃沈します。
何が何だか分からなくなった挙句に
「数学嫌い!」となってしまうわけです。
以上のような交点の座標を求める問題を貫くのは、
2式を連立して解くという考え方だけです。
この根本となる考え方を理解して応用するのが、
数学的センスと呼ばれるものに他なりません。
数学的センスの有無によって、
その後の生徒の勉強法や進路は変わってきます。
そこを見極める意味でも、
一次関数分野の指導では
生徒を特に注意深く観察するようにしています。