法政大学の長文読解問題を題材にして、
生徒に本文を和訳させてみました。
案の定、生徒は頭を抱えます
今回の記事で取り上げたいのは次の2文です。
1.This is a crucial question into which we must look a little more closely.
2.It is not with facts like these that the historian is primarily concerned.
この2文を正確に解釈するのは
まず文法事項をしっかり押さえなければなりません
1の which は関係代名詞です。
2の "It is ... that ~" は強調構文です。
これらが分からないとそももそも訳せません。
ただ、文法事項は分かったとしても、
丁寧に構造を見ていかないと誤訳しますよ
順に見ていきますね
・1について
この英文の誤訳として多いのは、
"look" を「見える」「見る」等と訳すパターンです。
でも、この "look" は一語で成立しているわけではありません。
まして、"look a little" という熟語があるわけでもありません。
ここで注意すべきは次の点です。
関係代名詞 "which" の前に
前置詞 "into" があるのは何故か?
まともに英文法を勉強している生徒なら、
この点に疑問を持つはずです
なぜなら、関係代名詞には次の原則があるからです。
関係代名詞の直前には、
先行詞となる名詞が来る。
1の英文では、関係代名詞の前に前置詞が来ています。
そのため、「おかしいなぁ~」と思わなければなりません。
さらに勉強を重ねた生徒なら、
関係代名詞節内の前置詞を
関係代名詞の前に持ってこられる
ということも知っていると思います。
たとえば、次の2文は同じことを言っているんですよ~
・This is a town which I lived in.
・This is a town in which I lived.
ということは、1の文に関しても、
"into" を関係代名詞節内に移動できるはずです。
関係代名詞節内の欠損部分を考えると、
"look" が動詞で
"a little more closely" が副詞句ですから、
"into" は動詞(look)の後に置くのが妥当でしょう
以上を踏まえて1の文を書きかえます。
・This is a crucial question which we must look into a little more closely.
これは、次の2文を1文にまとめた分です。
・This is a crucial question. We must look into it a little more closely.
1の文の "look" と "into" は見事に結びつき、
"look into A" 「Aを調査する」
というイディオムになります
・2について
2は、"It is ... that ~" の形で強調構文と気づくべきです。
なぜなら、"It is" と "that" の間には
"with facts like these" という前置詞句が入っているからです。
強調構文というのは、
たとえば次のような文のことです。
普通の文: I played tennis in the park yesterday.
"tennis" を強調する文: It was tennis that I played in the park yesterday.
強調したい部分を "It is" と "that" の間に挟みます。
"It is" と "that" の間に前置詞句がくることもあります。
"in the park" を強調する文: It was in the park that I played tennis yesterday.
強調構文を見つけたら、
とりあえず普通の文に書き直しましょう~
今回は "not" を無視して普通の文に直してみました。
・The historian is primarily concerned with facts like these.
このように書き直してみて分かるのは、
"be concerned with" 「Aに関心がある」
というイディオムの存在です
2の文も、"concerned" を単独で見ていたのでは
文全体の解釈で間違ってしまうということです
以上のように、
関係代名詞や強調構文で文の構造が崩れると、
一見してイディオムが分からなくなる場合があります
そんな場合に意味不明な訳をしないためにも、
関係代名詞や強調構文を使わない文に
まずは書き換えてみることをオススメします
隠れたイディオムを探し出せ!
これはとても大切な視点です