彼は自殺志願者だった.
目が隠れるほどの長い前髪、
極端に白い肌が印象的で、
首には、首を吊る為の縄を巻き付けていた.
「やっぱりしぬよ」
俯きながら彼が呟く.
「だめかな」
私の足元で、緑色の蜥蜴が
うろちょろしている.
「それなら私をころせばいいと思う」
私はポケットからライターを取り出して
彼に手渡した.
「そうだね」
彼は躊躇なく火をつけ、
私の左手を指先から炙っていく.
熱くはない、痛みも無い.
それでも私の体は
灰になって、消えていく.
徐々にぼやける視界.
「また、いつか」
彼が私に手を振って
自分の首に巻いてある縄を外した.