認知症 | care_matsu

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「認知症」の狭義の意味としては「知能が後天的に低下した状態」の事を指すが、医学的には「知能」の他に「記憶」「見当識」を含む認知の障害や「人格変化」などを伴った症候群として定義される。
従来、非可逆的な疾患にのみ使用されていたが、近年、正常圧水頭症など治療により改善する疾患に対しても認知症の用語を用いることがある。

単に老化に伴って物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、病的に能力が低下するもののみをさす。また統合失調症などによる判断力の低下は、認知症には含まれない。また、頭部の外傷により知能が低下した場合などは高次脳機能障害と呼ばれる。

日本では従来より血管性認知症が最も多いといわれていたが、最近はアルツハイマー型認知症が増加している。
認知症の原因となる主な疾患には、脳血管障害、アルツハイマー病などの変性疾患、正常圧水頭症、ビタミンなどの代謝・栄養障害、甲状腺機能低下などがあり、これらの原因により生活に支障をきたすような認知機能障害が表出してきた場合に認知症と診断される。脳血管障害の場合、画像診断で微小病変が見つかっているような場合でも、これらが認知症状の原因になっているかどうかの判別は難しく、これまでは脳血管性認知症と診断されてきたが、実際はむしろアルツハイマー病が認知症の原因となっている、所謂、「脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症」である場合が少なくない。

以下は原因疾患による認知症のおおよその分類

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■血管性認知症 :Vascular dementia (VaD)
●多発梗塞性認知症広範虚血型(Binswanger型白質脳症を含む)
●多発脳梗塞型
●限局性脳梗塞型
●遺伝性血管性認知症:CADASILなど

多発梗塞性認知症は、文字どおり脳梗塞が多発することにより持続性の神経症状と認知機能障害がみられるようになるものです。
大脳白質、基底核、視床、橋など脳深部の広範な領域が多発性の小梗塞により傷害されることにより仮性球麻痺、片麻痺、歩行障害などの神経症状がみられるようになり、軽快、再発を繰り返しているうちに認知症状が明らかになってきます。
また、神経症状がみられず、物忘れや脳ドック等で念のため検査した頭部CTやMRIで多発性の小梗塞が発見されることもあります。
Binswanger型白質脳症では、高血圧や脳動脈硬化を背景にした、脳血流障害のため、大脳白質が広範に傷害されることにより認知症が生じます。
卒中発作をきっかけに急性に発症することもありますが、卒中発作や局所神経症状が明らかではなく、アルツハイマー型認知症のように緩徐進行の経過をとることもしばしばありますので、注意が必要です。
認知症状の内容としては、記銘力障害の他、意欲の低下、自発性欠如、うつ状態など、前頭葉性認知症の症状を示すことが特徴とされます。
神経症状としては、仮性球麻痺、筋固縮、動作緩慢、小刻み歩行などがみられます。
頭部CTでは側脳室周囲に対称性広範あるいは斑状の境界不鮮明な低吸収域がみられるのが特徴です。

※CADASIL … Cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy
皮質下性の脳卒中を繰り返す常染色体性優性遺伝性脳動脈病。
第19染色体長腕のnotch3の遺伝子変異により生じる場合が多いと考えられている。
成人発症:25歳前後に片頭痛(CSDが原因?)、30~50歳で脳卒中発作(多くはTIAと脳梗塞だが、出血を来すこともある)が一般的。
情動異常:20%に気分障害やapathyを認めて、欝症状を伴います。
皮質下性痴呆:前頭葉徴候、記憶障害、遂行機能障害など。

※CSD … cortical spreading depression 脳内の電気的活性の異常。

※TIA … transient ischemic attack 脳血管障害の1つ。
     脳の一部への血流が障害された結果起きる一時的な脳機能障害。

※apathy … 感情鈍麻、無関心、無感動。

■変性性認知症
●アルツハイマー型認知症 :Alzheimer's disease (AD)
短期記憶障害をはじめとする認知機能障害により日常生活や社会生活に支障をきたし、緩徐な進行と、局所神経症候を伴わない事が病態の基本となる。

※アルツハイマー病 … βアミロイド蛋白と呼ばれる異常な蛋白質が脳全般に蓄積するために、脳の神経細胞が変性・脱落する病気。
脳の萎縮が進行し、痴呆を示すと考えられる。
CT、MRIといった画像診断では、比較的早期から側頭葉内側部(海馬領域)の萎縮が目立ってくる。
進行すると脳全体の萎縮が顕著に。

●(びまん性)レビー小体病 :Dementia of Lewy bodies (DLB)
幻視・認知機能の急激な変動などが特徴的な認知症。
パーキンソン病で見られるレビー小体が脳内に認められ、パーキンソン病の症状も見られる。
認知症を合併したパーキンソン病との境界はあいまいである。

※レビー小体 … 神経細胞の内部に見られる異常な円形状の構造物(封入体)。
主にα-シヌクレインでできており、一部のパーキンソン病などとの関連も指摘されている。
パーキンソン病では、中脳黒質のドーパミン神経が変性脱落したところにレビー小体ができる。

※α-シヌクレイン … 蛋白質の一種、詳細は不明。
レビー小体中のαシヌクレインは129セリンでリン酸化修飾を受けている事からパーキンソン病の鍵分子とされている。
参考pdf ← 山形大学の研究成果報告書。

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●パーキンソン病 :Parkinson's disease (PD) with dementia
脳内のドーパミン不足とアセチルコリンの相対的増加とを病態とし、錐体外路系徴候(錐体外路症状)を示す疾患である。神経変性疾患の一つである。
黒質線条体のドーパミン神経が減少し筋固縮、振戦、無動などの運動症状が起こる。
パーキンソン病患者が認知症を発症するリスクは、健常者の約5-6倍と見積もられている。 

※ドーパミン/アセチルコリン … 神経伝達物質、詳細は割愛。

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●前頭側頭型認知症:frontotemporal dementia (FTD)
かつてピック病と呼ばれていた若年性で初期から性格変化をきたす認知症は現在はFTDと呼ばれている。また広義の概念として前頭側頭葉変性症FTLD:Frontotemporal Lobar Degenerationがあり、意味性認知症 Semantic Dementia (SD)や進行性非流暢性失語 Progressive nonfluent aphasia (PNFA) (特発性進行性失語 Primary progressive aphasia (PPA) と近縁)、進行性核上性麻痺:Progressive supranuclear parsy (PSP) なども含まれる。

※前頭側頭型認知症全般の特徴 … 性格の変化、社交性の欠如、自発性の喪失。

※意味性認知症 … 言葉や物の意味語議がわからない意味記憶障害。
話していることがちぐはぐになり会話が上手く出来ない。

※流暢性失語 … 運動言語野は障害されておらず流暢に話そうとするが、口から出る言葉は意味不明。
センテンスも長く、話す速度も正常でリズムや抑揚にも乱れはないが、タバコを連想しタバコと言いたくとも必要な単語に似ている単語(タバタやハバコ)になる。 → 「字性錯語」
タバコと言おうとしてまったく別の意味の単語を言う。 → 「語性錯語」
錯語がひどくなると全く意味の解らない言葉を発し、ジャルゴン失語と呼ばれる。
簡単な単語が出てこない、本が読めない。
相手の話やテレビで放映している内容は正しく理解できているようでも、返事が言葉や文章になっておらず自分の意思表示が会話として成立しない。

※進行性核上性麻痺 … 脳の特定の部位 (基底核、脳幹、小脳) の神経細胞が減少。
転びやすい、下の方が見にくい、飲み込みにくい。

●ハンチントン病 : Huntington disease (HD)
大脳中心部にある線条体尾状核の神経細胞が変性・脱落することにより進行性の不随意運動(舞踏様運動、chorea(ギリシャ語で踊りの意))、認識力低下、情動障害等の症状が現れる常染色体優性遺伝病。

※尾状核 … 脳の大脳基底核に位置する神経核である。
尾状核は元々自発運動のコントロールに主に関わっていると考えられていたが、現在では脳の学習と記憶システムの重要な部分を占めていると考えられている。

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■感染
●クロイツフェルト・ヤコブ病
全身の不随意運動と急速に進行する認知症を主徴とする中枢神経の変性疾患。
異常プリオンが脳内に侵入し、脳組織に海綿状の空腔をつくって脳機能障害を引き起こすもので、進行が早く、ほとんどが1 - 2年で死に至る。
一般的には初老期に発病し、発病初期から歩行障害や軽い認知症、視力障害などが現れる。
変異型として狂牛病(牛海綿状脳症)のヒトへの感染が知られている。

●HIV関連認知症
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染末期、すなわち最終段階で発症する脳症。
大脳白質、深部灰白質に病変があり、血管の周囲を中心に炎症細胞の浸潤がみられるHIV脳炎と、髄鞘、軸索の脱落があるHIV白質脳症が主にみられます

■治療可能なもの(いわゆる`treatable dementia')※各症例に関するリンク参照願います。
慢性硬膜下血腫
正常圧水頭症
甲状腺機能低下症

■中核症状
程度や発生順序の差はあれ、全ての認知症患者に普遍的に観察される症状を「中核症状」と表現する。 記憶障害と見当識障害(時間・場所・人物の失見当)、認知機能障害(計算能力の低下・判断力低下失語・失認・失行・実行機能障害)などから成る。
これらは神経細胞の脱落によって発生する症状であり、患者全員に見られる。病気の進行とともに徐々に進行する。

■周辺症状(BPSD)
全ての患者に普遍的に表れる中核症状に対し、患者によって出たり出なかったり、発現する種類に差が生じる症状を「周辺症状」、近年では特に症状の発生の要因に注目した表現として「BPSD(Behavioral and Psychorogical Symptoms of Dementia:行動・心理障害)」と呼ぶ。

主な症状としては幻覚・妄想、徘徊、異常な食行動(異食症)、睡眠障害、抑うつ、不安・焦燥、暴言・暴力(噛み付く)、性的羞恥心の低下(異性に対する卑猥な発言の頻出などなどがある。

発生の原因としては中核症状の進行にともなって低下する記憶力・見当識・判断力の中で、不安な状況の打開を図るために第三者からは異常と思える行動に及び、それが周囲との軋轢を生むことで不安状態が進行し、更に症状のエスカレートが発生することが挙げられる。前述の通り、中核症状と違い一定の割合の患者に見られ、必ずしも全ての患者に同一の症状が見られるとも限らない。またその症状は上記のもの以外にも非常に多岐にわたり、多数の周辺症状が同時に見られることも珍しくない。中核症状が認知症の初期・軽度・中等度・重度と段階を踏んで進行していくのに対し、周辺症状は初期と中等度では症状が急変することも大きな特徴である。初期では不安や気分の沈みといった精神症状が多く、中等度になると幻覚や妄想などが発現する。

かつては中等度になると激しい症状が現れ、患者は日常生活を行う能力を急速に喪失してゆき、周辺症状の発現と深刻化によって家族などの介護負担は増大の一途を辿る為、「周辺症状=中等度」との固定観念が存在したが、現在では軽度でも一定の症状が発生することが分かってきたため、その固定観念の払拭と、より原因に着目した表現としてBPSDが用いられるようになった。

激しすぎる周辺症状が発生した場合に向精神薬等を用いて鎮静化させることもあるが、前述の通り不安状態、及び認知能力が低下した状態での不安の打開方法としての行動が原因であるため、まずその不安の原因となっている要素を取り除くことが対処の基本となる。

中核症状の進行を阻止する有効な方法は確立されていないが、適切な介護・ケア方法によって周辺症状の発生を抑え、明確な症状が見られないまま週末期を迎えることも可能である。初期の状態での適切なケアが重要となる。